今年も色々な音楽に触れましたが、印象に残った作品の多くは旧来的なジャンル分けが難しいようなものでした。洋楽では、クァンティックのジャズ・プロジェクトやモッキー、シャソル、アンドラス・フォックス、フローティング・ポインツあたりのクロスオーバー感とメロウネスのあるアルバム、ヘニング・シュミートなどのコンテンポラリー・クラシカル(変な言い回しですが)はよく聴きましたし、DJセットにも組み込むことが多かったです。日本産の音楽だと、前述のコンテンポラリー・クラシカル文脈で中島ノブユキ、Rayons、DJまほうつかい(ピアノ作品)。幽玄かつドリーミィなNoahのアルバムもよかったです。
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- Mocky
- Key Change
約6年ぶりのアルバムリリースとなったMockyの『Key Change』。前作『Saskamodie』もお気に入りでしたが、本作はその延長線上とでもいうべき「演奏感」がしっかりとありつつも、もう少しキラリとした音の輝きが感じられました(アメリカ録音のせいもあるかもしれません)。親しみやすさがありながら、聴き込むと味わいが深まってゆく、消費されない音楽としての強度が相変わらず素晴らしいです。日本盤デラックスエディションのボーナスディスクもよかった。
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- Chassol
- Big Sun
マルティニーク島出身のChassol。人や動物の声、物音などを素材としたミュージック・コンクレートの手法を用い、ポピュラー・ミュージックに仕立ててゆく彼の最新アルバム『Big Sun』は、マルティニークのさまざまな「音」と自身の演奏を重ねた作品。素材がマルティニークだけに、どこか暖かな空気が流れてくるような一枚です。ミニマルでアバンギャルドだけれどユーモラス。そんな音楽はなかなかないのではないでしょうか。購入者がダウンロードすることができる映像も必見。
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- 中島ノブユキ
- 散りゆく花
ピアニスト/作曲家、中島ノブユキが自身のレーベルを立ち上げ、リリースした室内楽編成の作品。音の重なり合い方、響き方に細心の注意が払われつつも、演奏のダイナミズム、躍動感がひしひしと伝わってきます。このアルバムが出たとき、改めて彼の音楽が持つ、不思議と童謡を想起させる旋律の親密さとそれを支えるシビアな響きの選択との組み合わせの美しさに撃たれたものです。自身の曲のほか、パット・メセニー「Last Train Home」などのカバー曲も収録。より多くの人に聴いてもらいたい作品です。