1994年『アメリカの夜』で第37回群像新人文学賞を受賞しデビュー。その後も数多くの賞を獲得し、『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞、『ピストルズ』で第46回谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『□』(しかく)『Deluxe Edition』、『キャプテンサンダーボルト』(伊坂幸太郎氏との共著)がある。
基本的には今年も再発ものと少々の流行りものしか聴いていないので心苦しい気持ちがぬぐえませんが、そんな貧しい音楽体験のなかで気に入った新作を3枚選びました。今年いちばん多く聴いていたのは、D’Angelo and The Vanguardの『Black Messiah』なのですが、あれは2014年の作品なので除外しました。音楽シーン全体についてはよくわかりませんが、どの業界でも皆それぞれのタイムマシーンの性能にいっそう磨きをかけているなあといったところでしょうか。
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- Jessica Pratt
- On Your Own Love Again
ローラ・マーリングの『Short Movie』もたしかにとてもよかったのですが、個人的にはこちらがもっとずっと気に入りました。それはきっと、ほとんど抑鬱状態と何もちがいがないような夢心地にいざなってくれる、ジェシカ・プラットの時代錯誤感はなはだしい歌声に強く惹かれたからではないかと思います。
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- Hiatus Kaiyote
- Choose Your Weapon
ジ・インターネットの『Ego Death』もたしかにとてもよかったのですが、個人的にはこちらがもっとずっと気に入りました。それはきっと、アルバム中盤から非常に多彩な音の広がりを示してゆく、作品全体の構成の妙にとくに強く惹かれたからではないかと思います。
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- Miguel
- Wildheart
ビラルの『In Another Life』もたしかにとてもよかったのですが、しかし彼の作品は、毎回なんとなくアカデミックな堅苦しさの印象があって最後までのめり込めないところがあることを、僭越ながら申し上げておきます。その点、ミゲルの今作は生身の身体性を錯覚させる率直さがあって、終盤のベタな感動的展開には自然と気持ちを揺さぶられました。