投稿日 : 2016.07.22 更新日 : 2018.12.28

牧山純子(ヴァイオリニスト)| 「夏の音楽」と私

牧山純子(ヴァイオリニスト)

1974年東京生まれ。3歳からピアノ、4歳よりヴァイオリンを始める。 武蔵野音楽大学卒。フランスで研鑽を積み、2002年バークリー音楽大学に入学しジャズヴァイオリンを専攻する。2008年ポニーキャニオンより自身のアルバム『ミストラル』でメジャーデビュー。“朝から聴けるジャズ”として評判に。現在は、ジャズ、ポップス、クラシックとジャンルを問わず精力的に活動する。音楽活動だけでなく、情報番組のコメンテーターや作家としても活躍。2016年2月に初の著作『ジャズとエロス ~ヴァイオリニストの音楽レシピ~』(PHP新書)を出版。
http://www.junkomakiyama.com/


夏に極上のひとときをくれる音楽

夏。人の心を開放的にさせる季節。燦々と降りそそぐ太陽のせいか、身にまとう薄布の故か。BBQ、海水浴、花火大会など屋外に集う夏のイベントの数々。音楽シーンにおける野外フェスティバルも毎年かなりの盛り上がりをみせています。野外での演奏は、陽の光、風、月明かりなど日ごろと異なるシチュエーションからインスパイアされ、自分でも驚くぐらい普段と違うフレーズが生まれます。夏の空気が五感を刺激、癒やし、夏だからこそ聴きたい作品が極上のひとときをくれます。

 

  • YO-YO MA
    Obrigado Brazil

    今年の夏、ブラジル・リオデジャネイロでオリンピックが開催されます。音楽同様、スポーツからも理屈なしの感動をもらえるので個人的に楽しみで仕方ありません。ブラジルといえばサンバ、ショーロ、ボサノヴァなど素晴らしい音楽を生みだした国。このアルバムはチェリストのヨーヨー・マがブラジル音楽の至宝ホーザ・パッソス、エグベルト・ジスモンチ、パキート・デリヴェラ、カストロ・ネヴェス、セーザル・カマルゴ・マリアーノ、アサド兄弟など、グラミー賞をも受賞するブラジル人アーティストたちと共演しました。彼の優しくも時に激しいチェロの音が心を癒やし、ブラジル音楽の新しい世界へと導いてくれます。そしてこれを聴く度にたくさんの人を幸せにさせる演奏時のヨーヨー・マの表情が目に浮かびます。

     

  • European Jazz Trio
    ジャパネスク 日本の詩情

    日本の祖先の霊を祀る一連の行事といえばお盆。東京生まれ、東京育ちの私にとってお盆は毎年街全体が静かになり、ふと自分自身を見つめ返したり、亡き父のことなど大切な人への思いを巡らすとき。そんなときに聴きたいのはヨーロピアン・ジャズ・トリオのデビュー20周年記念盤。世代を越えて歌い継がれる日本の名曲を日本人が選び、メンバーが現代感覚で演奏し収録した作品。原曲のメロディを大切にしているため、アレンジに物足りなさを覚える人もいるかもですが、私としては日本を大切にしている感がありとても好きです。以前からヨーロッパの大衆歌曲や民族音楽から滲み出す哀愁に、日本の音楽の持っている情の風景を重ねていました。原曲へのリスペクトを魅せる彼らの感性は私の心に静かに染み込みます。

     

  • 小曽根真
    ジャングル

    やはり夏といえばラテン! たくさんあるラテンの名盤から今回は人気ピアニスト小曽根真さん率いるスーパー・ビッグ・バンド、No Name Horsesの第3弾をチョイス! 斬新な音使い、難解かと思えば時にリリカルなメロディがなんとも新鮮で今までに出会ったことのない独自のラテンワールドを展開させた作品。タイトル通りジャングルというワードから思い浮かぶ野性味あふれる躍動的な曲から、心に安らぎを与えるオアシスまでが収録されています。作品を通して聴いても、1曲づつ聴いても次々ストーリーが容易に想像でき、なんとも色彩豊かな楽曲たち。スペシャルメンバーの持つパワーの素晴らしさ、サウンドが持つ漲るエネルギー、神秘の癒しを心体で感じます。