投稿日 : 2020.01.22 更新日 : 2020.03.24
【休日の過ごし方】サウダージな夜に…上質なカシャーサをストレートで
取材・文/富山英三郎 撮影/高瀬竜弥
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休日、ゆったりとした気分で音楽を楽しみたい。そこに合わせる素敵な一杯とは? そんな音楽とお酒のマリアージュを楽しむ連載。第10回目は渋谷マークシティの裏手にある、カシャーサを中心としたブラジルのお酒と料理が楽しめる名店『Bar Blen Blen Blen(バー ブレン ブレン ブレン)』の店主、宿口豪さんにセレクトしていただきました。
丁寧に作られた、繊細なカシャーサ
カシャーサ
Canarinha(カナリーニャ)
音楽もお酒も、わいわいと賑やかに楽しむのが好きでブラジル好きになったのですが、たまには「サウダージ(懐かしさ、郷愁、憧れ)」な気分になるときもあるんです(笑)。そんな夜に飲みたいカシャーサがこの『カナリーニャ』。
これは、ブラジルの南東部に位置するミナスジェライス州の北部にある町、サリーナスで作られています。この町はカシャーサ作りで有名で、自分も何度か訪れたことがあり、とくに『カナリーニャ』の生産者とは家族ぐるみの付き合いをしています。
サトウキビを原料とするブラジル版のラム酒であるカシャーサは、砂糖やライムを入れた「カイピリーニャ」で飲むイメージがあると思います。しかし、これはストレートでちびちびと味わえる上質な一本。バルサモというブラジル独自の木の樽で熟成された味わいは、口当たりがぴりっとスパイシー。バニラのような甘い香りが広がり、その奥にはサトウキビの風合いがしっかりと感じられる。本国でのカシャーサ・ランキングで何度も上位入賞している、地元で愛されているブランドなんです。
ブラジルというと大らかというか大雑把なイメージを持っている人が多いかと思いますが、彼らは自分たちで丁寧にサトウキビを育て、小さな蒸留機で自分たちが作れる量だけを真面目に生産。こんなに繊細な仕事をしているのかと衝撃を受けたほどです。
奇抜さを封印した、ストレートなアルバム
Ney Matogrosso(ネイ・マトグロッソ)
Pescador De Pérolas(ペスカドール・デ・ペローラス)
味わい豊かなカシャーサに合わせたいのは、ネイ・マトグロッソのライブアルバム(1987年)。ブラジルのMPB界を代表するシンガーで、女装のような奇抜な衣装、くねくねと腰を動かすパフォーマンスなどでも知られ、カルトヒーロー的な人気を誇っています。
しかし、このライブアルバム(1987年)はジャケットからもわかる通り、化粧も奇抜な衣装も一切ほどこしておらず、ブラジルの名曲をしっかりと歌い上げている一枚。1曲目からサンバの代表曲であるカルトーラの「O Mundo E Um Moinho」が収録され、最後は「Aquarela Do Brasil(ブラジルの水彩画)」で締められています。
当時最高のギタリストといわれ、若くして亡くなったハファエル・ハベーロや、人気サックス奏者の故・パウロ・モーラも参加しており、彼らの演奏が聴けるのも魅力です。
普段はサンバやブラジルのヒップホップといった激しい音楽を聴いていますが、深夜にお酒と向き合いとき、しっとりと聴かせてくれるアルバムなんです。
いつもとは違う一面をマリアージュ
ストレートでじっくり味わうカシャーサが存在することを教えてくれた『カナリーニャ』。そして、いつもは奇抜なステージングで魅せるアーティストがストレートに表現したアルバム。どちらも一般的なイメージとは異なる、いい意味での意外性をマリアージュしてみました。これは、お祭り好きな自分のアナザーサイドでもあります。 『カナリーニャ』はうちのお店でしか飲めませんが、同じく上質な『SELETA(セレッタ)』や『BOAZINHA(ボアジーニャ)』というカシャーサは日本でも流通しているので、興味のある方はこちらをストレートで、自分と向き合いながら楽しんでみてください。
宿口 豪 | Go Shukuguchi
『Bar Blen Blen Blen(バー ブレン ブレン ブレン)』の店主。 ヒップホップ好きがこうじて、学生時代よりレコード店でアルバイトをスタート。その後、渋谷の『MILLIBAR』で働き、2006年に『Bar Blen Blen Blen』をオープン。ブラジル好き、音楽好き、サッカー好きが集まるお店として人気を誇っている。店内にはDJブースもある。
・店舗名/バー ブレン ブレン ブレン
・住所/東京都渋谷区道玄坂1-17-12 野々ビル2F
・営業時間/19:00~26:00
・定休日/日曜、祝日
・電話番号/03-3461-6533
・オフィシャルサイト/http://www.blenblenblen.jp/