夏こそ思いきりダメになれ。夏に合いそうなダメ達人たちの作品
一月仕事を休みたいと言っても大病を疑わられない。半裸で街を彷徨っても場合によっては羨ましがれたりする。それが夏。大の大人が昼間からアイスペロペロ、体はベトベト、筋肉は弛緩し目はうつろ。頭は回らずビールは旨い。それも夏。粋人は知っている。夏こそ思いきりダメになれと。というわけで、夏に合いそうなダメ達人たちの作品を選んでみました。
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- Norman Temple
- Im Just a Little Baby
オムツを穿いてステージ上でウクレレを弾き語る年老いたシンガーソングライター。印刷屋としてハリウッドで働いていたノーマンは、1979年に自身のレーベルを作ってシングルを制作。小さなクラブで精力的に活動をしつつ、1981年ついに完成させたのがこのファーストアルバムです。若い頃から曲は作っていたようで、1941年から40年かけて作曲したという曲も収録されているんですが、普通にスリーコードの単純な曲でした。老人特有のカサカサした肌触りが伝わってきそうな、情けなくも頼りない楽曲の数々。これぞ自主制作盤のあるべき姿!なぜかB面のみの収録です。
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- Martin O’Cuthbert
- For Alien Ears
リリース時、あのジョン・ライドンに「どうやったらシンセでこんな酷い音出せるんだ?」と頭を抱えさせたイギリスのDIYミュージシャンの怪作。サイケやパンク・ニューウェイブ界隈では、凡人たちの自称「俺、変な人だから」ぶりに鼻白むことも多いけど、才能のなさをここまで宇宙人のせいにしちゃえれば立派。音感なし、リズム感なし、センス悪しの3拍子すべて揃った奇跡のダメヒーロー。しかしあぐらをかいた宇宙人ってメトロン星人以来久しぶりに見ましたね。
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- Exercise
- Believercise
アメリカには合わせ鏡の向こう側のような、秘められた音楽世界がある。それがCCM(Contemporary Christian Music)。ソフトロックや幼児教育もの、AORやヘビメタまで、音楽スタイルはさまざまですが、共通しているのはジーザスを讃えること。制作されているレコードの数は、まさにもうひとつ別のアメリカが存在しているかのように膨大。かなり有名な歌手がディスコグラフィに載せないアルバムをこの分野でリリースしていたりもします。その多様性が垣間見えるのがこの1枚。なんとエクササイズとキリスト礼讃を合体させたビーリバサイズという力技のネーミング。裏ジャケには「健全な魂は健全な肉体に宿る」みたいなことが書かれていますが、強引すぎて痩せ過ぎのキリスト様も苦笑していることでしょう。