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投稿日 : 2016.11.28 更新日 : 2020.11.25
取材・文/富山英三郎 写真/JAMANDFIX(REALROCKDESIGN)
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平日と週末では異なった表情を見せる、恵比寿ガーデンプレイス。平日はオフィス街としてのイメージが強く、身なりの整ったビジネスパーソンが行き交う。一方、週末になるとデートスポットへと変身。冬になれば毎年バカラの大きなシャンデリアが中庭に飾られ、美しいイルミネーションとともにロマンティックな雰囲気が漂う。
今回はそんな恵比寿ガーデンプレイスに出現した新しい横丁『BRICK END』内にある、MUSIC BAR berkanaにお邪魔した。通りには、グルメバーガー、印欧風カレー、日本料理、スナックと個性豊かなお店が横並びに続いている。
『MUSIC BAR berkana』の外観は薄いスモークの入ったガラスで覆われており、店内の様子を通りから窺うことができる。この気軽に立ち寄れる雰囲気もいい感じだ。
「いまの時代、30代くらいの方がバーにふらっと飲みに行く機会が減っていますよね。でも、僕はバーって本来はカジュアルなものだと思っていて。この店は一見オーセンティックにも見えますけど、クラフトビールが飲めて、音楽もレコードでかけるなど、より気軽に立ち寄れる空間にしたかったんです」と、エグゼクティブマネージャーの森山裕之さんは語る。
店内に入ると、まず目に飛び込むのは一枚板で作られたカウンター。11mというその長さに驚く。そのまま中央が優しいパープルカラーをしたカウンターに腰を下ろすと、崖下には電車が走っている。
「インテリアは、廃工場の跡地を買い取ってバーにしたようなイメージ。アーチ状の鉄骨とコンクリをあえてそのまま残して、荒々しい感じに仕上げています」
まだ新しいお店ながら、昔からあったような居心地の良さは、この無機質さと温かみの融合にあるのかもしれない。ゆえに、軽く一杯飲んでさっと帰っても後ろめたさがない。自分が遊び慣れた大人になったような気分にさせてくれるお店なのだ。
森山さんはこれまでさまざまなジャンルの系列店で経験を積んだのち、この店のプロデュースを任された。それだけに、長年やりたかったことをすべて詰め込んでいる。
「自分が好きな音響機器を集めて、レコードで音楽をかけながらお酒を出す。それがやりたくてこの業界に入りましたから(笑)」
子どもの頃、テレビを見せてもらえない家庭で育った森山さんはラジオばかり聴いていたという。趣味はFMのヒットチャート番組のエアチェック。同時に、家電屋さんでコンポのカタログをもらってきては熱心に読み込むような子どもだったという。その後、社会人になって少し余裕ができた頃から、当時憧れだった機器を中古で安く購入するようになり、いつかは大きな音で鳴らせる場所を作りたいと思うようになった。
「予算もあるので、このお店で使う音響機器はすぐに決まりました。マッキントッシュの魅力は、6~7年前に中古で初めて手に入れたときに知ったんです。音の温かみと中音域の抜け感には感動したんですよね。最近のアンプはきれいに音が鳴りすぎる。ストレートにソースの音を出してくれる古いモデルのほうが断然好きです」
お客さんに「音がいいね」と言われるのが一番嬉しいと語る森山さん。それを低予算で揃えるのもこだわりのひとつだ。
レコードのストックはまだ少ないものの、ビル・エヴァンス、チェット・ベイカー、マイルス・デイヴィス、コルトレーンなど、ブルーノート系が多く揃う。しかし、目を引くのはシティポップの充実だ。
「お客さんに一番ウケがいいのが荒井由実なんですよ。”まさかこんなところで荒井由実を聴くとは”ってみんな喜んでくれるんです」
今後買い揃えたいのは、邦楽の幅広いジャンルと、50年代のモダンジャズだとか。
ガーデンプレイス内にあるため、お客さんの多くはそこで働く人たちと思いきや、意外にも三田方面の地元民が多いとか。まだオープンして1ヶ月ながら、すでに常連も多く30~50代の男女で賑わっている。というのも、このエリアには遅くまでやっている飲食店が少なく、タバコもシガーもOKということで帰り道にお酒を楽しんでいく人が多いのだ。後日、遊びに行ったときも、ひとりマティーニに酔いしれるおしゃれな女性など、スマートな人たちを多く見かけた。
「つきあう前のカップルが、ちょっと背伸びして来るような。そして、大人にとってはカジュアルに楽しめるカッコイイ空間。そんな場所でありたいんですよね。バーって、何かが起こるんじゃないかという期待感も大事だと思うんです、なんかそわそわするような、いい意味でのエロさがあるお店にしていきたいですね」
夜が更けると、カウンターにはメニューがやっと読めるような小さなライトが置かれる。店内はわずかな柔らかい光のみで、カップルが寄り添えば何か秘密を共有したくなる気分に…。そう、『MUSIC BAR berkana』にはすでにスマートなエロさが備わっている。流行ってしまう前に、軽く一杯飲みに行くことをおすすめしたい。
投稿日 : 2015.07.01 更新日 : 2020.11.25
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