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小川 充(音楽ライター/選曲家)| 2016 The Best Albums あの人が選ぶ今年の3枚

ジャズとクラブ・ミュージック系ライターとして、雑誌やWEBのインタビュー、ディスクレビュー、コラム、CDのライナーノート執筆ほか、USEN『I-35 CLUB JAZZ』の選曲、コンピレーションの監修を手掛ける。主著は『JAZZ NEXT STANDARD』シリーズほか、近著に『Club Jazz Definitive 1984-2015』と『Jazz Meets Europe』がある。


Look Back at 2016

大物の訃報が相次いだ2016年だが、一方でフレッシュなアーティストも多く台頭した。アンダーソン・パークや彼のユニットのノー・ウォーリーズ、待望のアルバムを発表したキングなど近年のUS西海岸勢の勢いは相変わらず。パークのアルバムにも参加したケイトラナダや、彼とコラボするバッドバッドナットグッドなどカナダ勢も負けていない。UKでもシャバカ・ハッチングスや彼の参加するザ・コメット・イズ・カミングなどから、スナーキー・パピーにも客演したジェイコブ・コリアー、オーストラリアから移住したジョーダン・ラカイなどロンドンの新鋭の活躍が目立ったが、そうした中で一番の収穫はユセフ・カマールだろう。

 

  • Anderson .Paak
    Malibu

    ドクター・ドレーの『Compton』への参加で注目を集めたUS西海岸のシンガー・ソングライター/ラッパー/ドラマー/プロデューサーによる、2014年の『Venice』に続くセカンド・アルバム。マッドリブ、タリブ・クウェリ、ロバート・グラスパーら多彩なゲストを招き、R&Bやヒップホップだけでなくハウス調のパーティー・トラックも披露するなど、全方向にアピールするメジャー感溢れる作品。ヴィンテージ感溢れるソウル/ファンク・ナンバーは、ミュージシャンシップに満ちたシンガーとしての魅力も映し出している。

     

  • Nicolas Jaar
    Sirens

    2011年の『Space Is Only Noise』でジェイムス・ブレイクのミニマル・テクノ版とも評された、ニューヨークの奇才のセカンド・アルバム。テクノやハウスなどの枠に収まらない幅広いリズムを持つエレクトロニック・ミュージックに、映画音楽、民族音楽、ブルース、ジャズなど様々な要素をコラージュするスタイルをさらに進化させ、本作ではポスト・パンク、ロカビリー、ドゥーワップ、フォルクローレなどまで融合。ダークで繊細、破壊的でありつつ詩情とユーモアに満ちた独特の世界。

     

  • Yussef Kamaal
    Black Focus

    ロンドンから久々に登場したスピリチュアルなジャズ・ファンク系ユニット。1970年代のハービー・ハンコック、ロニー・リストン・スミス、ロイ・エアーズなどから、ガリアーノ~トゥ・バンクス・オブ・フォーなどクラブ・ジャズ、ディーゴやIGカルチャーらブロークンビーツなどのエッセンスや精神性を受け継ぐ存在。サウンドの黒いフィーリングはセオ・パリッシュ、ディープさはフローティング・ポインツに匹敵する。改めてクラブ・サウンドとしてのジャズのカッコよさを体感させてくれる。

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