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Look Back at 2016
かつての公民権運動または反人種差別運動時に生まれた歴史的な名盤達がそうであるように、アメリカの大好きな黒人音楽は、当然政治と無関係でないことを改めて感じた。つまりそれは驚きの結果に終わった合衆国大統領選挙戦の渦中で制作/リリースされたものが、2016年のシーンを代表する“作品群”になったということだ。また、昨年配信のみでリリースされていたエリカ・バドゥのアルバム『But You Caint Use My Phone』が、一年越しでつい先日ヴァイナル化されたことも嬉しいトピックだった。今年も素晴らしい作品に溢れていた。創造的な音楽家と、その音を届けることに尽力したすべての人々に感謝する。12インチ・シングルでは、ザ・インヴィジブル「Life’s Dancers」のフローティング・ポインツによるリミックスをよくプレイした。
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- Frank Ocean
- Blonde
圧倒的な熱量をあえて内なるものに向けたような、決定的なアート。2016年のUSブラック・ミュージックは、昨年のケンドリック・ラマーの勢いを引き継いだアンダーソン・パーク、復活のデ・ラ・ソウルにまさかのサプライズだったATCQ、コモンやジョン・レジェンドといったべテランにブラッド・オレンジ、ソロセカンドでもその才能を見事に示したデリック・ホッジ、透明感が心地よかったキングと枚挙にいとまがないが、最も衝撃を受けたのがフランク・オーシャンの新作だった。公式のフィジカル・リリースはブラックフライデーの11月25日、24時間限定というのもカッコ良すぎだ。
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- Bibio
- A Mineral Love
マッシュ・レーベルからのリリースであった活動初期はノスタルジックな世界観でインストゥルメンタル・フォーク~エレクトロニカ・シーンで独自の輝きを放ったビビオだが、ワープ移籍後はボーカルを全面にフィーチャーしポップ~オルタナとより振り幅の広いスタイルを確立。ここへ来てさらにソングライティング力に磨きがかかっている。とくにアナログLP盤のサイドAは、Bar Musicで2016年に最もプレイした面のひとつとなった。アルバムに追記するようなタイミングでリリースされた『The Serious EP』の「Night Falls」も含め、「最高のメロディーが書けている」と、つい嬉しくなってしまう。
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- Lourenco Rebetez
- O Corpo De Dentro
ブラジルやアルゼンチンの新世代は洗練を極めることで、アカデミックな音楽性がいよいよその定位となりつつあるが、そんななかで新鮮な刺激を感じたのがこのロウレンソ・ヘベテスだ。バークリーでジャズを学んだというギタリストの作品は、例えばブラジル音楽界の巨星モアシール・サントスのアンサンブルと、ロバート・グラスパー・エクスペリメントのリズム・セクションが出会ったかのよう。ホーン隊の厚みにアフロ・ブラジリアンのグルーヴがうねる「Ima」などは、震えるようなクールネスを湛えている。プロデュースがアート・リンゼイというのにも膝を打つ。