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Look Back at 2016
「ジャンルなんて関係ない」という今更な正論がトレンドとなる中、自分としてはむしろ強烈にジャンルを意識させられ、同時に枠を飛び越えていくものに刺激を受けた一年だった。便宜上R&Bとして括られるものだとアンダーソン・パーク『Malibu』やソランジュ『A Seat At The Table』なんかがその越境感を象徴するアルバムだったと思う。が、せっかくジャズを中心としたメディアでのベスト・ディスク選出ということもあり、普通に選んだらガラントやキース・スウェットのようなヴォーカル・オリエンテッドなR&Bだらけになってしまうところを、ここでは特にインストゥルメントの部分に惹かれた、ジャジーで折衷感のある作品を挙げてみた。自分の快感原則に従って選んだ3枚。
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- RC & The Gritz
- The Feel
エリカ・バドゥのプロデューサーとして知られるRC・ウィリアムズ率いるダラスのヒップホップ・ジャズ・ファンクなバンドには、スヌープ・ドッグやラヒーム・デヴォーンとの共演を含むデビュー作『Pay Your Tab』が出た時点で虜になった。それから約3年、ケンドリック・ラマー~アンダーソン・パーク以降の感覚で、もう少しジャズに寄ってしなやかなグルーヴを紡いだ本作にさらに惚れ込むことに。懐かしいという意味ではなく、時代のエッジを取り込んで文字通りフュージョンしていく様は、80年前後のNYクイーンズ・ジャマイカ勢に通じるものがある。
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- King
- We Are King
待ちに待ったフル・アルバム。「Red Eye」で“Tokyo Sunrise”と歌っていたとはいえ1年に三度も来日するほどの人気になるとは予想外だったが、「In The Meantime」のオリエンタルなメロディなどが自分を含む日本人リスナーの琴線に触れたのかも。今年はストローザー姉妹が関わったコリーヌ・ベイリー・レイの「Green Aphrodisiac」も愛聴していたが、ドリーミーなムードを醸成する繊細で美しいハーモニーもさることながら、佐藤博かウォーリー・バダロウかと思うようなパリスの人肌感溢れるシンセ・ワークに感服。もはやR&B界のブランドですね。
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- SouthWesTerminal
- SouthWesTerminal
“アトランタ版スナーキー・パピー”という喩えが適切なのかどうかはさておき、今年ミュージック・ソウルチャイルドの来日公演にギタリストとして同行もしたロッド・ハリスJr.率いるバンドのデビュー盤はダークホース的な1枚として忘れ難い。ジャズ、フュージョン、ファンクをサウス・ヒップホップのマナーとも合体させて奏でた内容は、かつてのアースシード一派によるオーガニックなアトランタR&Bをアップデートしたかのようでもある。ミュージック・ソウルチャイルドを招いてのフューチャー・ソウル「How It Feels」は両者の今後も楽しみにさせる逸品だった。