投稿日 : 2017.07.28 更新日 : 2020.11.25

【東京・浜松町/Jicoo The Floating Bar】東京の「いま」にこだわる、海抜0メートルのバー

取材・文/富山英三郎 写真/則常智宏

いつか常連になりたいお店 #15

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、週末の夜にだけ東京湾に出現する『Jicoo The Floating Bar(ジクー フローティングバー)』を訪問。最先端の音楽と360°パノラマの夜景が融合する未来的な空間は、“知る人ぞ知る”ではあまりにもったいない、大人の遊び場なのでした。

 

 週末の夜になると東京湾に出現する“船上バー”をご存知だろうか。JR浜松町駅(東京都港区)近くにある「日の出桟橋」と、対岸の「お台場海浜公園」区間を周遊する、Jicoo The Floating Bar(ジクー フローティングバー)がそれである。

 あくまでも“海に浮かぶバー”として営業しているというが、船内では、DJやバンド演奏、ときにはベリーダンスなど、さまざまなショウが行われている。こうしたエンタテイメントにおけるコンセプトは“東京らしい現在進行形のコンテンツ”であること。あえてレギュラーメンバーは置かず、時代の半歩先を行く東京らしいアーティストが登場するスタイル。そのラインナップは、音楽好きが唸る、通好みともいえるセレクトだ。

 

 乗船定員は150名なので、話題のアーティストをブッキングすればすぐに埋めることもできるだろうが、あえてそうしないのもまたこだわり。そこには、クラブでもライブハウスでもなく、ここは東京湾に浮かぶバーなのだという強い思いがある。テクノやハウスなどダンスミュージック系のアーティストも多く出演するが、月の半分は(大きな枠組みでの)ジャズ系のバンドやDJが登場。基本的に、木・金曜はゆったりとしたバーラウンジで、土曜はスタンディングをベースとした、もう少し賑やかなイベントスタイルとなることが多いという。

360°パノラマの美しい夜景

 『Jicoo The Floating Bar』が出現するのは、毎週木・金・土曜の3日間。日の出桟橋を20:00に出発し、30分後にお台場海浜公園を経由して戻っていくコースを3周。土曜に限っては、19:00スタートで4周する。チャージ料金は2600円または3600円(1ドリンクつき)で、どちらも船外に出ない限り最後まで乗船することができる。

 

 かまぼこ型の船内は、上部全体に窓が配置されており、パノラマの夜景を楽しむことができる。空調も完備されており、夏は涼しく冬は暖かく、東京の夜景を快適に堪能。夏場のクルージングはもちろん爽快だが、空気が乾燥する冬場は視界がクリアになり、また違う美しさがあるという。さらに「雨の東京湾も情緒があって素晴らしい」という、船内スタッフの声もあった。

 特筆すべきは景観だけではない。船首側にはDJブースが置かれているが、アナログレコード用のターンテーブルもセットされている。つまり“レコード針が飛ばない”ほど、振動が少ないこと物語っている。もちろん、潮汐や気象状況は毎日変化するので、多少の振動が生じることもあるだろうが、少なくとも、船酔いが気になる人も安心して乗船できるのではないか。

 

 さらに船内を見渡すと、両サイドには計10卓のテーブル。ドリンクバーは船尾にあり、その前には座り心地のいいソファが置かれている。なお、着席したままでのテーブルオーダーも可能だ。店内は七色に光るライティングにより、外観からのイメージを裏切らない宇宙船のような雰囲気が楽しめるのもユニークだ。

気軽な“普段使い”のバーとしても

 取材当日、船内には男女ペアの姿がちらほら。そのなかには外国人カップルも。スマホで写真を撮りあいながら、これから始まる東京の夜に思いを馳せている。
定刻となり、日の出桟橋を出発。ジャジーなDJの選曲に揺れていると、東京タワーなど煌びやかな都会の風景が広がっていく。そうこうしているうちに、湾岸エリアを象徴するレインボーブリッジが見えてくる。その真下をくぐれば、お台場のアイコンともいえる観覧車。そのままお台場海浜公園に停泊し、新たなお客さんを乗せて出発。しばらくすると、ついにライブのスタート。

 

 今日の出演アーティストは、trio de monochrome。ジャズバンドnativeのリーダーでサックス奏者の中村智由氏によるソロプロジェクトであり、サックスにウッドベースとギターを加えたトリオ編成。彼ららしい、メロディとスペースを重視した内省的な世界が東京の夜を美しく彩っていく。この日のために作ったという曲は、ロマンティックな夜景との相性も抜群。気づけばお酒も進んでいる。

 この日、バーテンダーに勧められたのは、バラのリキュールにピーチジュースとソーダを加えたオリジナルカクテル『Rose Soda』。10種類ほど用意されたオリジナルカクテルは、シーズンごとに替わるという。また、ここを訪れる客の年齢層や目的もさまざまで、デートや女子会、記念日などで利用されることが多いというが、乗船場所は駅からも近いので、普段使いのバーとしても魅力的。

遊び場の選択肢が多い東京ゆえに、すぐ近くに海があるということを忘れがちだ。しかし、都心からすぐの場所にハーバーがあり、湾内では毎週末船上パーティが行われている。そう考えると、これを利用しない手はない。屋形船よりも気軽で安価に使える『Jicoo The Floating Bar』。週末の夜、この新しい遊び方を選択肢に加えてみてはいかがだろう。

・店舗名/Jicoo The Floating Bar
・乗船場/日の出桟橋またはお台場海浜公園
・営業時間/20:00~23:00(木・金)、19:00~23:00(土)
・定休日/無休(日曜・月曜・火曜・水曜は貸切運航のみ営業)
・電話番号/0120-049-490
・オフィシャルサイト:http://www.jicoofloatingbar.com/

当コーナーでは、読者の皆さまから「音楽に深いこだわりのある飲食店」の情報を募集しています。
関東近郊のカフェ、バー、レストランなど、営業形態は問いません(クラブ、ライブハウスは除く)。 下記メールアドレスまでお問い合わせください。

info@arban-mag.com

その他の連載・特集