投稿日 : 2020.03.16 更新日 : 2021.11.12
ライブの臨場感を3Dストリーミングで楽しむ。ゼンハイザーが導く新感覚の音楽体験
スイス最大の都市チューリッヒで、1992年から営業を続けるジャズ・クラブ「Moods(ムーズ)」。ここには最新鋭の音響設備が備わり、世界中の様々なアーティストが出演している。
そんなMoodsでのコンサートを、まるで最前列で聴いているかのように疑似体験できるサービスがある。それが世界初の音響システム(注1)を使った配信サービス「Moods digital(ムーズ・デジタル)」だ。
注1:イマーシブ(没入型)オーディオ、または3Dオーディオ、立体音響とも呼ばれる規格を使った音響システム。縦・横・高さ、あらゆる方向からの音声再生が可能。
下記、Moods digitalのサイトでは、最初の10分間、同社が提供するコンテンツを無料で視聴することができる。青色のボタン「Play 3D」を押して、まずはその立体的な音響を体験していただきたい。
■Moods digitalウェブサイト
https://www.moods.digital/ja/
従来の音とは明らかに違うことがお判りいただけるだろうか。クリアな音質もさることながら、各楽器はそれぞれの位置が分かるほど明瞭に分離され、観客の声も方々から聴こえてくる。音の中に包まれているような感覚は、まったく新しい音楽体験だ。
この配信の裏には、Moodsと提携するドイツの音響機器ブランド「ゼンハイザー(Sennheiser)」が提供する音響プロジェクト「アンベオ(AMBEO)」の技術がある。Moods digitalとは、またAMBEOとは一体どんなものなのか。
ゼンハイザーの立体音響プロジェクト「AMBEO」
通常のステレオでは音声が左右から再生される。それに対しMoods digitalの音源は、前後・左右・上下と、あらゆる方向(360度/3D)から聴こえてくる。
これを可能にしているのは、立体的に音を収音することができるゼンハイザー製の特殊なマイク(注2)。このマイクで録音した音源をヘッドホンやイヤホンで聴くと、従来のステレオでは再現できない後方や下方からの音すら聴こえ、まるでコンサート会場の最前列にいるかのような臨場感を味わうことができる。
注2:「ダミーヘッド」という人間の頭部や耳の構造を模したマイク(下記の映像参照)。1992年発売のノイマン社製のダミーヘッド・マイク「KU100」などが代表的。これで録音した音源は、一般的なヘッドホンでも人間が耳で聴くのと同じサウンドイメージを再現することができる。これを「バイノーラル録音」という。
「AMBEO」 とは、こうした立体的な録音から再生に関する製品・技術・ノウハウを総合的にサポートするゼンハイザーのプロジェクトの総称。2016年のスタート以来、3Dに対応したマイクやスピーカー、ソフトウェアなどを提供し、動画・ラジオ・ゲーム、スポーツ観戦から車の音響に至るまで様々な分野に浸透している。
Moods digitalでは、このAMBEOの技術を使って収録したコンサートを毎週追加しており、今では400以上の映像コンテンツを配信。新人・中堅・ベテランまで様々なアーティストのライブを立体的な音で楽しむことができる。
AMBEOが拓く未来のオーディオ
もともと長い信頼関係を築いていたというMoodsとゼンハイザー。もしMoodsが従来のライブ・ストリーミングを採用していただけなら、さほど珍しいものにはなっていなかっただろう。AMBEOの技術が伴ったからこそ、遠い異国のコンサートをリアルな音で体験できる“世界初”のサービスとなったのだ。
今では、GoProやスマートフォンに専用カメラを取り付けるだけで、誰でも360度映像を撮影することができる。YouTubeやFacebook を使えば配信だって可能だ。そんな中、バンド練習やライブ、身近な生活音やラジオ放送、あらゆる音を、高音質かつ360度で録音できたらどうだろう。まだ見ぬ新たなアイディアが生まれるのではないだろうか。Moods digitalは、そんなAMBEOの可能性をカタチにしたひとつの好例だ。
現在、「AMEBO」の名を冠した製品がいくつか発売されており、360度マイク(VR MIC)やヘッドセット、立体音響をコントロールするソフトウェアも入手可能となっている。両社のチャレンジによって、新しい音楽体験がより身近になる日もそう遠いことではないだろう。
■AMBEO スマートヘッドセット
販売価格:35,000円前後
http://www.apogeedigital.jp/product/ambeo-smart-headset
iPhoneのためのヘッドホン。高品質マイクにより人間が自然に耳にする音と同様のサウンドを録音することが可能。動画用の360度音声を手軽に録音できる最もシンプルな機種。(下の動画は360度で録音されています)
■AMBEO VR MIC
販売価格:180,000円前後
https://ja-jp.sennheiser.com/microphone-3d-audio-ambeo-vr-mic
上記のAMBEO スマートヘッドセットと同様に360度音声を録音できる、本格的な制作に向けたマイク。これ一本で左右の音だけでなく、上下・前後の音をサラウンドで録音できる(下の映像は左右に動かすと映像と音が360度回転します)
■AMBEO Orbit
販売価格:無料
https://ja-jp.sennheiser.com/ambeo-orbit
バイノーラル・コンテンツのミキシングをスムーズにおこなえる無料のプラグイン。モノラル、ステレオの音源を3D音場の中に効果的に配置することもできる。