2020年3月6日、ピアニストのマッコイ・タイナーが81歳でその生涯を終えました。近代ジャズ史の重要局面に数多く関与したマッコイ・タイナーとは、どんな演奏家だったのか。彼の音楽人生を俯瞰しつつ、さまざまな好演を集めたプレイリストを作成しました。リーダー作だけでなく、サイドマンとして参加した録音(ジョン・コルトレーン作品など)も含まれています。
【マッコイ・タイナー|バイオグラフィー】
マッコイ・タイナーは1938年12月11日、米ペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれました。16歳から地元バンドで演奏していた彼は、20歳のときに参加したアート・ファーマーとベニー・ゴルソンの6人編成グループ「ジャズテット(Jazztet)」でプロとしてのキャリアをスタートします。
その後、1960年から1965年にかけて在籍したジョン・コルトレーンのグループでの活躍は広く知られており、『My Favorite Things』や『Ballads』、『A Love Supreme(邦題:至上の愛)』などの重要作品の録音に参加します。特にジミー・ギャリソン(b)とエルビン・ジョーンズ(ds)も加わったカルテットは「黄金のカルテット」とも呼ばれていました。
同じ頃、フレディ・ハバードやジョー・ヘンダーソン、ウェイン・ショーター、ボビー・ハッチャーソンといった多くの名匠たちの録音にも客演。コルトレーンのもとを離れたあとも、「Passion Dance」、「Search For Peace」、「Blues On The Corner」といった代表曲を収めた『The Real McCoy』(1967年)をはじめ、数々のリーダー作品を発表。一時期はアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズにも在籍していました。
“ジャズの電気化” が進む時代の中でもアコースティック・ピアノにこだわり、精力的に活動。2002年にはジャズ界における栄誉あるアワード「NEA Jazz Masters」を受賞しています。アルバムとしては、2007年のサンフランシスコでのソロ公演を収めた『Solo:Live from San Francisco』(2009年)が最後の作品となりました。晩年は妻のアイシャ、息子や孫たちとともに過ごしていたそうです。