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才恵加 ─「サックス=ジャズ・フュージョン」のイメージを覆したい【Women In JAZZ/#21】

2017年のメジャー・デビュー以来、ソロ・アーティストとして活躍する一方、J-POPから演歌まで、幅広いアーティストのサポートも務めてきたサックス奏者の才恵加(さえか)。彼女のセカンド・フル・アルバム『pastel』がリリースされた。ポップで親しみやすいメロディを、テナー・サックスで表現力豊かに歌い、彼女の音楽性がストレートに表現された作品になっている。

テナー・サックスを吹いた瞬間「これだ!」

──サックスはいつ頃から始めたのですか?

高校生のときにアルト・サックスを始めて、同時にフルートの練習も始めました。その前は、小学校4年生からクラリネットを吹いていました。

──クラリネットを始めたきっかけは?

私は宮城県出身で、地元のブラス・バンドに入ったんです。そこでフルートをやりたかったんですけど、フルートの人員を募集していなくて、クラリネットになっちゃったんです。

──サックスに転向したきっかけは?

地元ではジャズが盛んで、ソロイストとして音楽をやってみたいという気持ちもあって。だんだんサックスに惹かれていきました。

──いまはテナー・サックスをメインで吹いていますが、最初からテナーだったんですか?

最初はアルトです。上京して音楽の専門学校に入って、2年生のときにテナー・サックスを始めました。

──テナー・サックスに転向した理由は?

じつは自分のアルトの音色が、ずっと好きじゃなかったんです。自分の音にコンプレックスがありました。それである日なんとなくテナーを吹いてみたら、すごくしっくりきたんです。これだ! って。それで音楽学校の先生に相談して、2年生から毎日テナーの授業を受けるようになりました。

──作曲もその頃から?

そうですね。作曲の勉強もしてました。鍵盤も触っていましたし。当時はバンドもやっていて、バンドで曲を作ることも多かったですね。

J-Fusion的なアルバムにはしたくなかった

──ニュー・アルバムの『pastel』は、どんなテーマで作られたのですか?

今回は、私の経験したことや、伝えたい気持ちを込めて作曲をすることができました。その曲を、絵を描くような気持ちで演奏したいという思いを込めて『pastel』というタイトルを付けました。前作はバンド・サウンドが中心だったんですけど、今作は打ち込みのサウンドも使ったり、トランペットとの2管で演奏してたり、歌を入れたりと、自分がチャレンジしたいことをふんだんに詰め込んだアルバムになってます。

『pastel』(ポニーキャニオン)

──ポップで明るい曲もある反面、切ない、ノスタルジックな曲もありますよね。

私が作曲するものって、いい意味で “マイナーな気持ち” を取り入れています。取り入れているというか、私自身がそうなんです(笑)。ネガティブというわけじゃないんですけど、人間の弱い部分だったり、ちょっと悲しい部分とか、そういうところも伝わればいいなという気持ちもあります。

──聴いていて、キュンときます。

プロデューサーには「もっとポジティブな曲を作ったら?」って言われます(笑)。

──前作と同様、ギタリストの上條頌(注1)さんがサウンド・プロデュースを担当されていますね。

注1:上條 頌/かみじょう しょう愛知県新城市出身。20歳でロサンゼルスに渡り、ドク・パウエルに2年間学ぶ。帰国後、2007年に上京してセッション・ギタリストとしての活動を開始し、三浦大知、May J.、ゴスペラーズ、EXILE、絢香、倖田來未、清水翔太、JUJU、CHEMISTRY、加藤ミリヤなど数多くのアーティストのサポートとして活動。

頌さんのギターは大好きで、音楽センスもすごくリスペクトしています。ベスト・パートナーだなって勝手に思ってますね(笑)。今回、いい意味でバラバラな楽曲が集まっちゃったので、これを1枚にまとめることはできるんだろうか? っていう心配もあったんですけど、頌さんとも話を重ねて、うまくひとつのストーリーにまとめられました。

──「Twilight」には、ダーティー・ループスのヘンリック・リンダー(注2)が参加していますね。

注2:ヘンリック・リンダー/Henrik Linderスウェーデン出身のベーシスト。13歳からベースを始め、ソードラ・ラテン音楽学校からスウェーデン王立音楽アカデミーに進学。ソードラ・ラテン音楽学校時代の仲間たちとダーティ・ループスを結成し、YouTubeに上げた動画がプロデューサーのデヴィッド・フォスターの目にとまり、2013年に世界デビュー。弟のエリックとともに、“リンダー・ブラザーズ”としても活動し、2015年にデビュー・アルバムをリリースしている。

この曲に参加してくれているバハーン・ステパニャン(注3)さん、この方はアルメニア人なんですけど、彼がリンダーさんを紹介してくださいました。ステパニャンさんは、この曲のサウンド作りやミックスもやってくださいました。私は、できればJ-Fusionみたいな感じではなくて、海外のサウンド作りを取り入れてみたかったんです。サックス・プレイヤーはジャズ・フュージョンでしょ、みたいなイメージじゃなくて、わりとポップで、カジュアルで、歌も入っているし、気軽に聴いてもらえたら嬉しいですね。

注3:バハーン・ステパニャン/Vahagn Stepanyanアルメニア出身のキーボード奏者。幼少期からクラシックを学び、2010年に渡米してエリック・マリエンサル(sax)、ネイザン・イースト(b)などと共演。2015年に初リーダー作『Moonlight』をリリース。

──ライブなどの衣装で、特に気を遣っていることはありますか?

テナー・サックスは大きな楽器なので、衣装は、楽器を持った時のシルエットで考えますね。ヒールの高さも7〜10センチくらいを目安にしていて、いきなりステージで履くと慣れなくてフラフラしちゃうので、日常的にヒールのある靴を履くようにしていますね。

基本のコンセプトは、ナチュラル、ヘルシー、セクシーです(笑)。ナチュラルから感じるセクシーっていうのがすごく好きで、メイクとか髪も、作り込まないものを常に意識してますね。ステージでも必要以上に盛ったりせず、ナチュラルを心がけてます。あと、体型の維持には気をつけてますね。

才恵加/さえか
宮城県出身。小学校でクラリネットを始め、高校進学をきっかけにサックスを専攻。その後上京し、音楽専門学校卒業後、プロ・ミュージシャンとして活動を開始。テレビ番組へのレギュラー出演ほか、SCANDAL、ももいろクローバーZ、西野カナなど多様なミュージシャンと共演。2014年にsae名義でミニ・アルバム『+LIFE』、2017年に初フル・アルバム『pierce』をリリース。またテレビ・アニメの挿入歌の作詞なども手がけている。

【才恵加 オフィシャル・ホームページ】
https://www.saeka-sax.com/

島田奈央子/しまだ なおこ (インタビュアー)
音楽ライター / プロデューサー。音楽情報誌や日本経済新聞電子版など、ジャズを中心にコラムやインタビュー記事、レビューなどを執筆するほか、CDの解説を数多く手掛ける。自らプロデュースするジャズ・イベント「Something Jazzy」を開催しながら、新しいジャズの聴き方や楽しみ方を提案。2010年の 著書「Something Jazzy女子のための新しいジャズ・ガイド」により、“女子ジャズ”ブームの火付け役となる。その他、イベントの企画やCDの選曲・監修、プロデュース、TV、ラジオ出演など活動は多岐に渡る。
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