2020年6月25日、ワシントンD.C.の米国議会議事堂東側正面で、警察改革に関するイベントに参加する米国下院民主党員。
米ミネソタ州で 5月25日に起きた、白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドの暴行死事件から1か月。全米で続く抗議デモでは「警察改革」を求める声が高まり、リアーナやビリー・アイリッシュなど新旧アーティストら450人以上、大手レコード会社など300以上の組織・企業が連名で、野党民主党が提出した警察改革法案に署名するよう呼び掛ける公開書簡を発表した。
警察改革、銃規制、移民、LGBT…
同法案は「The Justice in Policing Act of 2020」。警察の暴力とともに、米社会における「構造的な人種差別」を指摘し、事件で問題視された拘束時の「首絞め」を禁じ、警官らの免責見直しなど、包括的な警察組織の改革に言及。民主党が多数派を占める米下院本会議では 6月25日に投票が行われて可決したが、与党共和党が多数を占める上院では可決しない見通しとなっている。
与党共和党も独自の警察改革法案を提出したが、「首絞め」を明確には禁じず、民主党との違いが鮮明に。トランプ大統領も、警察改革に関する大統領令に署名したが、人種差別問題には触れず、デモ参加者らが訴える警察の予算削減も拒否した。
警察改革は、11月の米大統領選に向け今後ヒートアップする選挙戦で、銃規制、移民、LGBTなどの性的少数者の権利などに加え、大きな争点の一つとなるのは確実で、エンターテイメント界を巻き込んだ流れがさらに強まりそうだ。
スティーヴィー・ワンダーがメッセージ
スティーヴィー・ワンダーは 6月23日、ソーシャル・メディアで、警察の暴力や構造的な人種差別を非難する動画メッセージを投稿し、社会変化を実現するために大統領選に向けて積極的な参加を訴えた。
ワンダーは「生命に終わりがあるのであれば、全ての事柄に終わりはある。構造的な人種差別にも、警察の暴力にも終わりはある」と指摘。抗議デモのスローガンの一つである「Black Lives Matter」を念頭に「黒人の命こそ大事だ。オンラインのトレンドや、ハッシュタグではなく、文字通り私たちの命だ。もちろん全ての命は大事。だがそれは黒人の命も大事にされてからだ」と主張した。
The Universe is Watching Us.
Stevie Wonder @ 2 am. pic.twitter.com/Fmf0kjId4V— Stevie Wonder (@StevieWonder) June 23, 2020
さらに、トランプ大統領の名前を避けながらも「(現状に)関心がある人は、口ではなく、行動を起こしてほしい。投票所に行って投票してほしい。未来はあなたたちの手の中にある。私たちには投票するという力がある。変化を起こすことができる」と話し、11月の大統領選への参加を促した。
ワンダーは1950〜60年代に黒人の地位向上を訴えた公民権運動の中心的人物だった故マーチン・ルーサー・キング牧師の誕生日(1月15日)にちなみ、キング牧師記念日の制定を訴え、キング牧師を称える「ハッピー・バースデイ(Happy Birthday)」を発表したり、南アフリカが行っていたアパルトヘイト(人種隔離)への抗議を行ったりした活動家でも知られる。
民主党の改正法案を求める公開書簡に名を連ねた、おもなアーティストやレコード会社は以下の通り。
リアーナ/ビリー・アイリッシュ/アリアナ・グランデ/マライヤ・キャリー/ジャスティン・ビーバー/リオン・ブリッジズ/リゾ(Lizzo)/メアリー・J・ブライジ/ブロンディ/バーニー・トーピン/ジャック・ジョンソン/ジョー・ジャクソン/ナイル・ロジャーズ/シール/ジョナス・ブラザーズ/ポスト・マローン/ロザンヌ・キャッシュ/エディ・ヴェダー(パール・ジャム)/フィリップ・ベイリー(アース・ウインド&ファイアー)/ジャーニー/スティーブン・タイラー&ジョー・ペリー(エアロスミス)/マーク・ロンソン/リッチー・サンボラ(元ボン・ジョヴィ)/アニマル・コレクティブ/デビット・ゲッタ/ミーゴス/ASAP(エイサップ)ファーグ/ミーク・ミル/RZA/ロバート・グラスパー/ホセ・ジェイムズ/リー・リトナー/ロバート・デニーロ/ミシェル・ウィリアムズ/イーロン・マスク など450人以上
アリスタ/アトランティック/ブルーノート/キャピトル/コロンビア/エレクトラ/エピック/インタースコープ/アイランド/モータウン/ノンサッチ/RCA/サイヤー/ソニー・ミュージック/ユニバーサル・ミュージック/ワーナー・ミュージック/Spotify/米映画協会(MPA)/米レコード協会(RIAA)など、300社以上
一方、映画界では、黒人の俳優やタレントら300人以上が「HOLLYWOOD 4 BLACKLIVES」とのグループ名で、ハリウッド映画などが好意的に描いてきた警官の暴力や、「白人至上主義」的な見方を改める「意識改革」を訴える公開書簡を発表した。
名を連ねているのは、映画『ブラックパンサー』出演のチャドウィック・ボーズマンとアンジェラ・バセット、『ハリエット』に出演した歌手のシンシア・エリヴォとジャネール・モネイ、『グリーン・ブック』のマハーシャラ・アリ、『マンデラ/自由への長い道』のイドリス・エルバ、『フェンス』のヴィオラ・デイヴィス、人気コメディエンヌのティファニー・ハディッシュ、ミュージシャンのコモン、奇抜なファッションで知られるミュージカル俳優のビリー・ポーターなど。