投稿日 : 2020.10.01

【Ghost like girlfriend インタビュー】個人競技から団体競技へ──コロナを経て気づいた気持ちの変化

取材:金子厚武 撮影:藤川一輝、平野明

Ghost like girlfriendは、2017年にスタートした岡林健勝のソロ・プロジェクト。ソウル、ファンク、R&Bを基調とした煌びやかなメロディとサウンド、内省的な歌詞世界が共感を呼び、代表曲「fallin’」はストリーミングやYouTubeを通じて大ヒット。2019年にはアルバム『Version』でメジャー・デビューも果たしている。この11月に新作『2020の窓辺から』を発表する岡林に、現在の心境を聞いた。

コロナがなかったら、いま以上にどん底になっていた

──まずは「Ghost like girlfriend」という名前の由来を教えてください。

「Ghost」は幽霊なので目には映らない存在。「girlfriend」は彼女なので、信頼したいし、されたい、みたいな存在。なので、「幽霊的な彼女」というのは、ずっとそこはかとなくそばにいて、信頼できたりする存在っていうか。それが自分にとっての音楽だったし、これからやっていきたい音楽像の象徴としてもぴったりだと思ってこの名前にしました。

──最初(2017年)に発表した「fallin’」が大きな話題を呼びましたが、今の岡林さんにとってどのような意味のある一曲だと言えますか?

あれを出したのは大学4年の終盤で、変な話、自分の才能に諦めがつきかけてたというか。名前を変えて、最初の作品を出すタイミングではあったけれど、とはいえ「これが最初で最後」くらいの気持ちでした。だから「ここで俺の音楽は終わるかもしれないけど、それでも人生は続く」みたいなことを書いたんだけど、結果的に音楽人生の寿命を延ばしてくれた一曲になった。リリースから3年経ちますが、希望の曲になってくれたんだと改めて実感しています。

──昨年メジャー・デビューをして、「これから」というタイミングで今年コロナ禍が起きてしまったことに対しては、どのような心持ちでいますか?

2019年に起きたことを、自分の中でまだ整理できていなかったんです。メジャー・デビューもそうだし、そもそもライブ活動を始めて、メディアに出るっていうのも去年が初めてのことでした。「音楽業界の中で、自分はどういう立ち位置で生きていったらいいんだろう?」とか「この先曲が書けるのかな?」とか、不安要素の爆弾をずっと抱えながら2020年に突入したので、もし今年コロナがなくて、爆弾を抱えたまま走り続けていたら、今以上にどん底になっていた気がしていて。なので、気持ちの整理をつけられるタイミングになったという意味では、良いきっかけになってくれたとも言えます。

──今年の1月に発表した「光線」はどんな気持ちで作ったのでしょう?

キャンペーン中に寝られなかったり、ライブが上手くいかなかったり、事務所を離れたり……2019年のドキュメント的な歌詞にしつつ、「それでも続けます」っていうことを宣言して、区切りをつけようとした曲です。そういう意味では、2回目のデビュー曲というか。

──5月に発表した「BAKE NO KAWA」はいつ頃作ったのですか?

時系列的には逆転するんですけど、「BAKE NO KAWA」は「光線」のレコーディング直前まで付き合っていた人の曲です。「光線」が2020年の始まりだとしたら、「BAKE NO KAWA」はちょっと遅れてやってきた2019年の、黒い塊みたいな曲っていうか(笑)。人に伝えるというより、ただただ自分への当てつけのような書き方をやり切ったことで、今度は人に聴いてもらうための曲を作ろうと思えるようになった。それが「光線」以降の曲たちです。

──今は音楽的な興味がどんな方向に向いてるんですか?

もっとシンガー・ソングライター的と言うか……新作を作るにあたっては、槇原敬之さんとかユーミンさんをずっと聴いていて。槇原さんって、これまではずっと詞や曲に目がいっていたんだけど、例えば「もう恋なんてしない」のスネアって、あの頃のR&Bをよく反映していて。アレンジにフォーカスがいかないくらい詞曲がいいけど、通な人が聴いたら「この音ヤバい」みたいな。自分もそういうモノを作りたいなって思うんです。『Version』までの作り方は、歌詞100点、曲100点、アレンジ100点、トータル300点なら勝てるって考え方だったけど、今は歌詞、曲、アレンジ、トータルで100点を目指してるというか。個人競技として捉えていたものを団体競技として捉え直して、バランスを意識して作るようになりました。

Gohst like girlfriendは、9月22日に開催された配信ライブ”Music Gate”Vol.3に出演。打ち込み+ギターをバックに、圧倒的なステージを披露した。

──11月にリリースされる『2020の窓辺から』は、そこを意識した作品になっていると。

なっていますね。「fallin’」が入った最初のミニ・アルバムを作ったときと同じように、また「これが最後かも」みたいな気持ちで作っています。書き下ろしの曲もありながら、4年くらい前から詞曲がある曲をリアレンジしたりして。

──たくさんの楽曲があると思いますが、選曲の基準は?

どれだけ歌が良いか。それに尽きます。『Version』までは書き下ろさないとダメだって思っていたけれど、聴いてくれる人にとって作った日付はあまり関係ないんですよね。それよりも、良い曲を聴ける方が嬉しいだろうし、俺もその方が嬉しい。「とにかく良い曲が詰まった作品」であることを最優先に作りました。

──通常のライブがなかなかできない現状に対しては、どのような気持ちですか?

2019年の3月に初のワンマンをやったんですけど、それまで夢に描いていた光景が具現化され過ぎて実感が伴わなかった。数字とか現象としては表われているものの、「自分のリスナーって本当にいるのかな?」という気持ちがまだあったんです。そういう疑念も続けるうちに晴れてきましたが……そうこうするうちにコロナでライブができなくなってしまった。でも今はリスナーが「いる」という実感を得た上で活動できてるので、配信ライブでも心持ちは変わらず、安心して臨める感じがあります。自分主催のライブよりもむしろ実感を得られるっていうのは不思議ですけど(笑) 「いるな!」っていう感覚は昔よりも断然あるので、その思いを受け取ってほしいです。

──「fallin’」の歌詞に【見つめる気さえあれば変わる こんな世界を愛せるかい】という一節がありますが、大事なのはやはり気の持ちようなのかもしれませんね。

そうですね。「いる」と思えばいるし、「いない」と思えばいない。それは自分の名前の由来通りでもあるというか。どちらかを選ぶ必要があるのなら、いる方を選ぼうっていう。それが今年からのマインドですね。

Gohst like girlfriend
1994年生まれのシンガー・ソングライター=岡林健勝によるソロ・プロジェクト。高校2年頃より楽曲制作を開始。2013年に大学進学のため上京し、ほぼ同時期に“岡林健勝”名義でライヴ活動をスタート。2017年には、自分の曲の魅力が先入観無しに伝わるようにと、名義を『Ghost like girlfriend』に変更。アーティスト写真も公開せずに「fallin’」を発信すると、またたく間にSNSやYouTubeで話題となった。2019年にはking gnuの常田大希とのコラボレーションでも話題を呼び、ミニアルバム『Version』でユニバーサルミュージックよりメジャー・デビュー。2020年には映画「サヨナラまでの30分」に楽曲(「stand by me」)を提供するなど、多方面から注目が集まっている。

ライブ配信イベント『MUSIC GATE』


2020年8月にスタートした、ライブ配信イベント「MUSIC GATE」。さまざまなジャンルの “注目ミュージシャン”たちがライブパフォーマンスを生配信(ライブ後1週間はアーカイブ動画の聴取も可能)。さらにアーティストのインタビュートークなども披露される。次回開催は10月を予定。出演者など詳細はオフィシャルサイトでチェック。

https://live-gate.jp/

 

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