投稿日 : 2020.10.08 更新日 : 2022.01.05
【THREE1989インタビュー】苦境を乗り越えポジティブな活動を続ける3人が目指す「今の時代だからこそ背負えるもの、伝えられるもの」
文/金子厚武 撮影/藤川一輝、平野 明
ボーカルのShohey、DJのDatch、キーボードのShimoによるTHREE1989(スリー)。1980年代のブラック・コンテンポラリーをアップデートしたような楽曲が話題を呼び、国内はもちろん、すでにストリーミングを通じて世界中から支持を得ている1989年生まれの3人組だ。未曾有のコロナ禍となった2020年も、持ち前のインディペンデント精神でアイディアに富んだ活動を続けてきた3人に、バンドの成り立ちとここまでの手応えを聞いた。
ライブが良ければ、言語は関係なくオーディエンスは盛り上がってくれる
──3人はもともと同じ専門学校の出身。最初は別の名前で活動していたそうですが、2016年に改名して今の音楽性になったそうですね。
Datch もともとは各々好きなジャンルが違ったんですけど、3人それぞれの好きなこと、やりたいことがちょうど重なった部分が今のTHREE1989の音楽性になってます。具体的には、1970~80年代のR&B、ソウル、ファンク、ロックとかで、シンプルなビートは80年代風だけど、音色は最新のデジタルを取り入れていて。最初に出したアルバム『Time Line』の収録曲は今でもライブでよくやっていて、僕ららしさが出てると思います。
Shohey 僕は地元が熊本なんですけど、2016年に震災があって、当時ボランティアで東京と熊本を行ったり来たりしていました。そういう中で、いつどこでこういうことが起きるかわからないと思って、だったら、自分たちがホントにやりたいことをもう一度話し合い、再始動しようとなって、それでTHREE1989になったんです。当時の僕はプライベートでも恋人と離れたり、つらい経験が多かったんですけど、それでも残ってくれる人たちがいて、ホントに好きな人たちと好きなことをやっていこうと思うタイミングでした。
Shimo 前はもっとダンスミュージック寄りというか、クラブ寄りだったんですけど、「踊れる音楽」っていう精神的なところは変わってないかもしれないですね。
──THREE1989はこれまで事務所に所属せず、インディペンデントで活動してきました。
Shohey 「うちに入りませんか?」っていう声もいただいたんですけど、各々が地元で築いた人脈もあったので、「自分たちで一回やってみるのも面白いかもね」って感じで。最終的には、声をかけてもらってた某社と自分たちでやるかの二択になって、Datchが「コイントスで決めよう」って。結果、自分たちでやることになりました。まあ結局心は決まっていて、どっちが出でも自分たちでやってただろうなって後々話はしてるんですけどね。
──デジタルのツールを使えば組織に所属しなくてもできることは多いですからね。実際、今のTHREE1989はストリーミングを通じて世界中にリスナーがいるわけですが、自分たちの音楽をいかに世界に届けるかという意味では、どんなことを意識していますか?
Datch 僕の感覚では、日本語の曲でも好きな人は国籍関係なく聴いてくれてる印象で、僕たちが洋楽を聴く感覚で、向こうの人たちも日本語がスッと入る時代になってきてるのかなって。全然僕らのことを知らないだろうと思って行ったスペインでも、ライブが良ければ日本語かどうかは関係なく、オーディエンスは盛り上がってくれて、言葉の壁はそこまでないなって、実際に現地に行ってみて感じました。
──今年はコロナ禍による影響もあったかと思いますが、THREE1989は様々なアイディアで活動を続けてきましたね。
Datch 3月に予定していた恵比寿・リキッドルームでの自主企画が中止になってしまい、最初はワーってなりました(笑)。当時は補助金とか給付金の制度もなかったから、どうしようかと思いましたけど、結局その日は配信ライブに切り替えて……でも、正直こんなに長引くとは思ってなかったですね。
Shohey 自分たちで会社をやってるから、どうにかやっていくしかなくて。これまではライブで生計を立ててたけど、それができないならリリースをするしかない。で、2019年に10週連続でシングルを発表する「Every Week is a Party in the Home」という企画に挑戦したことがあったので、これをもう一回やってみようということになりました。4週連続で配信したら、いい感じに反応もあったので、最初はコロナが終わるまで毎週リリースを続けてギネスを目指す話もあったけど……。
Datch 調べたら、250週連続でリリースしてる人がいて、「無理無理」って(笑)。
Shohey なので、もっと長い目で見て、みんなで楽しめることをしたいと思って、クラウドファンディングでEPと長編のミュージック・ビデオを作ることにしたんです。
──「Every Week is a Party in the Home」は曲を作り貯めておくのではなく、毎週1曲ずつ作っていたそうで、それもすごいことですよね。
Shohey やってみて思ったのは、一週間に一曲仕上げると、どんどんクオリティが上がっていくので、そのサイクルがすごくいいんです。それをやってる間にどこかにライブに行って、打ち上げをして、そこで沸き上がった感情から曲を書いて、その週の金曜日にリリースするとかって、僕らとしてもすごく新鮮な経験でした。
Shimo 普段はパソコンで作るんですけど、4週連続リリースのときはiPadの音楽アプリで作ったので、感覚としては遊んでるような感じで。でも、それも新鮮だったし、楽しいし、マンネリを防ぐ意味でもすごくいいなって思いました。
Shohey 特に嬉しかったのが、最後に出した「Utopia」がJ-WAVEのSONAR TRAX*に選ばれたこと。一週間で作った曲を選んでもらえるとは思ってなかったけど、自分たちだけで勝ち取った感じがしたんですよね。それで「Utopia」を軸にした夏のEPを作ろうってことになって、去年の「Every Week is a Party in the Home」で発表した「HOTELジェリーフィッシュ」と、マイダス・ハッチと作った「Part Time Summer」をリアレンジして、EPに入れたことで、この一年の流れが結果的に繋がったんです。
*J-WAVEの人気番組「SONAR MUSIC」(ナビゲーター:あっこゴリラ)が、注目するアーティスト、今後活躍が期待されるアーティストなどを毎月セレクトするもの。「Utopia」は今年5月にピックアップされた。
8月にリリースした最新EP「サンセット・フィクション」
──今回出演された”MUSIC GATE”は配信イベントでしたが、コロナで一気に浸透した配信ライブに対してどのように感じていますか?
Shohey 僕は子供のころ家でテレビを観るしか音楽に触れる機会がなくて、上京して初めてライブハウスを知ったんです。なので、僕と同じようになかなかライブに触れる機会がない中高生や地方の人にとっては、配信ライブってすごくいい機会になると思うし、音楽文化の形成という意味でも、すごくいい時期だと思っていて。そういう今の時代だからこそ背負えるもの、伝えることができるものがあると思うので、この状況をポジティブに捉えて、これからも活動を続けていきたいです。
取材・文/金子厚武
撮影/藤川一輝 平野 明
Shohey(vo)、Datch(DJ)、Shimo(kb)という3人で構成されたニュー・ノスタルジックバンド。1970~80年代のR&B、ジャズ、ロックなどに感銘を受けたメンバーが創り出す、現代的なサウンドの中に当時の懐かしさを感じる楽曲が特徴。2020年4月には「Every Week is a Party in the Home」を掲げ、4週連続で新曲をリリース。中でも「Utopia」は、J-WAVE SONAR TRAXに選出されるなど、ヒットを記録した。
https://www.three1989.tokyo/
ライブ配信イベント『MUSIC GATE』
2020年8月にスタートした、ライブ配信イベント「MUSIC GATE」。さまざまなジャンルの “注目ミュージシャン”たちがライブパフォーマンスを生配信(ライブ後1週間はアーカイブ動画の聴取も可能)。さらにアーティストのインタビュートークなども披露される。次回は10月の開催を予定。出演者などはオフィシャルサイトでチェック。
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