投稿日 : 2020.10.21
【gato インタビュー】注目のエレクトロ・バンドが放つ1stアルバム — コンセプトは「ベスト盤」
文/池上尚志
VJ(ビジュアル・ジョッキー)をメンバーに交え、視覚的にリスナーを巻き込んでいく新世代バンドgato(ガト)。革新性と大衆性を兼ね備えた彼らのサウンドは、新しい世代を代表する存在になっていくことを期待させるもの。初のフル・アルバム『BAECUL』には、そんな彼らの現在地が刻み込まれている。インタビューには、バンドの中心人物でボーカルとサンプラー担当のage、ドラムとアートワーク担当のhiroki、VJ担当の女性メンバーsadakataが同席した。
バンドを通して自分たちを表現していく「アート集団」
──ベースレスで、マニピュレーターとVJがいるという面白い編成ですが、どのように結成されたのでしょう?
age まずは僕が共通の友達を介してhirokiと知り合って、お互いのバンドをサポートするようになったんです。その時自分はベースで、あとボーカルの女の子がいました。もうすこしサウンドに厚みが欲しいと思って、加入してもらったのがkaiとtakahiroです。その後にボーカルの子が仕事が忙しくなって抜けて、その時にgatoと改名しました。それが2年くらい前。その時はポスト・ロック〜ポスト・ハードコアな音楽性でした。
10月14日にリリースした1stアルバム『BAECUL』より、リードトラックの「miss u」
──そこから今の音楽性に変わった経緯は?
age 職場が遠くなったこともあって、だんだん当時の友達と会えなくなったんです。それでPCで音楽を作り始めて、作った曲をgatoでもやってみようと提案してみました。
hiroki gatoになった時点でまったく新しいものをやってみたくて、ageからそういう提案があったときに「いいじゃん、やろうよ!」って。それまで僕はエレクトロ的な音楽は聴いていなかったんですけど、ageがプレイリストを共有してくれて徐々に吸収していきました。
──ageさんは今はベースを弾いてないんですよね。
age ええ、自分よりヘタな奴に弾いて欲しくないから、バンドにベースがいないんです(笑)。gatoはダンス・ミュージックを基調にしているので、生楽器では出せないエレクトロ・ベースの良さを感じてからはずっとですね。あと、エレクトロの人って割とスタイリッシュで、ライブもサラっとこなす人が多いんですけど、僕らはもっとパフォーマンスを重要視していて。自分がベースを弾かないのはパフォーマンスに振りたいこともあるんです。ライブってエンタテインメントだから、まずはお客さんに楽しんでほしい。
──sadakataさんがVJとして加入したのは、どういう経緯があったんですか。
sadakata 六本木にVARITっていうライブハウスがあって、そこでやっている”VARI×VARI”っていうイベントにgatoに出演してもらいたくて声をかけました。その時のパフォーマンスがメチャメチャかっこよくて、フロアもすごく熱狂したんですよ。以前から音は聴いていたけれど、音源の良さとは別にライブの良さがあるなぁと思いました。それからVJとしてよくご一緒するようになったんですけど、仕事以上に頑張りたいと思ってageくんに加入の意思を伝えたんです。
age VJを入れようと思ったのは、空間をちゃんと使いたかったから。視覚的な情報ってやっぱりインパクトが強いし、それも込みでgatoっていいなって思ってもらえたら嬉しい。あと自分が曲を作っていく時に、映像をイメージしてからそれを曲に変換していくっていう作業が多いんで、VJに入ってもらうのは必然だったのかなって感じてます。
左からhiroki(ds)、kai(manipulator)、takahiro(g,sampler)、age(vo,sampler)、sadakata(VJ)
──たしかに、gatoの音を聴いていると、歌詞がイメージをマッシュアップしたように聴こえます。
age 歌詞は楽曲の補助として使ってる感じかな。抽象的なものが多いし、聞いてる人の環境や心境によってイメージは変わると思うので、こちらが意味を提示するよりも、受け取り手が自由に消化してもらえればいいなと思ってます。
sadakata 私はageくんの楽曲を聴いて、自分なりに感じたものを映像にしています。例えば、音に反応して動くグラフィックを組んで、ageくんの声に反応して動くとか、こういう音が鳴ったら色が変わるとか、プログラムを組んで作って、それをさらにリアルタイムで加工する。私はそれをステージの上でやるんです。ステージ上で感じる熱気や盛りあがりは、裏方としてやるのとはぜんぜん違うものだし、グルーヴって音だけじゃなくて映像にもあるんだと実感します。
hiroki ジャケットやデザインは、最初はageから言葉とか映像、画像とかいろんなリファレンスをもらった上で自由に作っています。メンバーとミーティングなどは特にしないので、個の作業っていう部分も大きいです。ageが曲を作って、それをみんなでやったらgato。僕がデザインを作って、それもまたgato。このバンドは、そうやっていろいろなものが合流していく感じです。
age 「これはこんな曲だ」って説明すると、そこになんらかの因果関係ができてしまうのはリスナーもメンバーも一緒。それでは、思ったままのイメージをアウトプットできないでしょう。
sadakata gatoというものを通して自分を表現していくアート集団みたいなものかな? 音楽だけじゃないプロジェクトがgatoなんだろうなって思うんです。
新作「BAECUL」のトレーラー。この映像もsadakataがディレクションを手掛けた。
──楽曲単位の配信ではなく、今回、初めてアルバムとしてまとまった作品にすることをどう思いましたか?
age シンプルに言えば「ベスト盤」。今までの集大成っていうか、今自分たちが持ってるすべてのものと新しく作ったエッセンシャルを全部混ぜて、ベスト盤みたいなニュアンスで出したいなと思って作りました。だから結構古い曲も再構築して収録しています。
sadakata このアルバムは最初から最後まで曲順通りに聴いてほしいんです。アルバムとしての流れはもちろん、ライブのニュアンスも意識しながら曲順を考えてるんだよね。
age そう、自分たちのライブは、DJライクに全曲をつないで、ぶっ通しでやるんですよ。マニピュレーターのkaiが、つなぎの部分にエフェクトをかけたりしながらね。このアルバムでもライブのように曲を繋げてみたいと思って、インタールードを入れたり、細部を調整してみました。
──サウンドは実験的なのに、すっと馴染むような感覚が聴いていて不思議です。
age 曲を作るときは好きな作曲家をイメージして作ることが多くて、久石譲さんや菅野よう子さんのメロ感とか空気感を自分なりに消化しているつもりです。「馴染む」感覚は、そこからきているんじゃないかな。アジア人としてのアイデンティティでもあるオリエンタルな音を意識して、そこにテクノをかけ合わせたり……いろいろ試行錯誤しています。
──海外でも流行るように感じました。
age 実は、海外は意識してます。こういう活動が認められたら、いずれは海外に住んで活動したいくらいです。
2018年、突如インディーシーンに現れたエレクトロバンド。ポスト・ダブステップ、フューチャー・ベース、ヒップホップといったグローバル・トレンドを抑えつつ、日本人の琴線に触れるサウンドが特徴。ボーカリストageによる唯一無二の歌唱、曲を繋いで展開していくDJライクなパフォーマンス、映像と楽曲がシンクロするライブには定評がある。2019年には、東京・恵比寿LIQUID ROOMの年越しイベントにてトリを飾った。2020年10月に初のフル・アルバム『BAECUL』をリリース。11月27日に東京・渋谷WWWにてリリース・パーティーを開催予定。
https://gato-official.com/
https://twitter.com/gato_official_
https://www.instagram.com/gato_band/
【リリース情報】
gato『BAECUL』
■発売:10月14日(水)
■価格:2,530円
ビクターミュージックアーツ
GATO-001
【ライブ・インフォメーション】
gato 1st Album “BAECUL” Release Party
2020年11月27日(金) 渋谷WWW
open 18:30 / start 19:30
adv ¥2,800 / door ¥3,300 (1ドリンク別)
ticket:イープラス
[guset act] No Buses
[act] gato