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近年、世界から注目されるアジア/東南アジア圏の音楽。人気を博す韓国をはじめ、中国、タイ、インドネシア、フィリピンなど、ネットの発展とともに各国から次々と新たな才能が発見されている。
台湾もそんな才能の宝庫。中でも、すべての歌詞を日本語で歌うロックバンド「ゲシュタルト乙女」は特異な存在だ。
メンバーは左から、Mikan(g/vo)、Kaiaki(g)。
今年3月にリリースされた 2ndミニ・アルバム『生まれ変わったら。』は、Spotifyの「バイラルTOP50」で初登場7位を獲得し、世界の新鋭アーティストを紹介する Spotify の「Early Noise 2020」にも選出された。
そんな彼らの最新EP『Nice to 密 you.』が11月11日にリリースされた。幻想的で独特の浮遊感が漂うサウンド。「日本のバンドじゃないの?」と錯覚するほど自然と耳に馴染む歌詞。ゲシュタルト乙女とは一体、どんなバンドなのだろうか…。
日本語の方が心境や考えを表せる
ーーまずはメンバー構成と結成の経緯を教えてください。
Mikan:最初、Kaiaki は軽音部の顧問の先生だったんです。それがきっかけで知り合って、私が大学生になってから仲良くなりました。好きな音楽ジャンルや系統が似ていたことから、一緒にバンドを組もうとなって。3人、4人で活動していた時期もありましたが、現在は、Kaiaki、 Mikanのふたりで活動しています。
ーー率直に聞きますが、歌詞を日本語にしているはなぜ?
Mikan:高校生のときに日本語の勉強と歌詞を書くことを始めまして。最初は、「(台湾語で書いた)歌詞の意味を友達に知られるのがすごく恥ずかしい」と思っていて、日本語で書く事にしたんです。
大人になるにつれて、「日本語で書いた方が自分の心境や考えを表すことできる」ということに気づきまして。それからずっと日本語で作詞しています。
ーーなるほど、ちなみに台湾でのライブも日本語で? 日本語の歌詞にオーディエンスはどんな反応をしていますか?
Mikan:台湾のみんなは歌詞の意味(日本語)が分からないし、最初は「どうやって盛り上げていくか」をすごく悩みましたね。でもやっぱり、「自分がやりたい音楽を思うままにやり尽くしたいな」と思って、台湾華語で歌詞を書かずにやってきました。
フェスでのみんなの反応は意外と良かったりして、自然にリズムに乗って踊ってくれる子もいて。「音楽は言語を越えて伝わるものだな」と思いました。
MCは台湾華語と日本語、両方とも喋りますが、それに対してお客さんが一度「飛行機に乗らずに、台湾で日本のライブハウスにいるようだ!」と言ってくれまして。すごくうれしかったです!
日本の音楽は多様で繊細/台湾の音楽は純粋で直球
ーー影響を受けた日本人アーティスト/好きな日本人アーティストっていますか?
Mikan:憧れのバンドは、ペトロルーズ、相対性理論、東京事変、赤い公園です。最近気になってるアーティストは、んoon、chouchou、kiki vivi lilyです。
Kaiaki:サカナクション、鈴木雅之、小田和正、椎名林擒、長岡亮介、JINO、FUYU、spangle call lilli line、COCCO、CHARA、天野月が好きです! あと、最近 TAMTAM というバンドをめっちゃ聴いてます。とても素晴らしいバンドだと思ってます!
ーー台湾と日本では、音楽の系統も色々違うと思います。台湾と日本の音楽にはどんな違いがあると思いますか?
Kaiaki:一番大きな違いは、楽器の配置じゃないかなと思ってます。日本の音楽はアレンジが豊かで多様性があり、楽器配置内の低音の処理やメロディラインの美しさを保ちつつ、繊細だと思ってます。
一方、台湾の音楽はボーカルのメイン・メロディを中心にして作ったものが多く、既存のジャンルや曲の上でアレンジしたりしてますね。(台湾の音楽は)より純粋で直球な表現だと思ってます。
ーーゲシュタルト乙女の音楽に含まれる“台湾らしさ”はどんなところに現れている?
Mikan:台湾人としての世界観を持ちながら、心境を日本語で表現することが一番(私たち)独自の要素かなと思ってます。台湾で生まれ育ったので、性格、習慣、考え方など、国情によって違うこともあると思うので。
ーーたしかに、ゲシュタルト乙女の音楽には独特の世界観があります。曲を作る際に心掛けていることやテーマなどはありますか?
Mikan:いつも、人間、夢、時空を中心(テーマ)にして曲を作ることが多いですね。1st・フルアルバム『視力検査』(2019年発表)に収録されている「生まれ変わったら」っていう曲では、曲が始まる前のイントロ部分の音を逆再生させて「時空逆流」を意識して作っています。
ーー作曲は Mikan さんと Kaiaki さんのどちらが担当?
Mikan:作曲は、Kaiaki と私でやってます。今までの作品制作の流れは本当に毎回違うんです。私が作った弾き語りのデモを Kaiaki に投げて、彼がアレンジしてくれたり。Kaiakiが作ったコード進行と簡単なアレンジ音源に、私がメロディラインを書いたりして。たまに、ふたりでスタジオで一緒にメロディラインを修正したりもしますね。
『Nice to 密 you.』が誰かの支えになれたら…
ーー 最新EP『Nice to 密 you.』は、どんな作品になっていますか?
Kaiaki:今年はコロナウイルスが世の中で流行ってしまい、色々大変なことが起きた一年でした…。たくさんの人たちが苦しんでるのを見て、「自分たちは音楽で何かできるんじゃないか?」「 誰かの支えになる曲を作れたら」とか、誰かの生活の中で「少しでも楽しんでもらえる存在であれたら」とか。そんな一枚にしたいと思って作りました。
Mikan:曲順は夜、夜明け、朝に変換していくイメージで作っています。
1曲目の「Nice to 密 you.」は、以前リリースした曲「Dreamaholic」(※1stアルバム『視力検査』収録曲)が前身になっています。どっちの歌詞の中にも出てくる「午前3時」という同じ言葉(フレーズ)を使うことで、時間と空間をつないで「時空の変化を楽しめる一曲になってるんじゃないかな」と思っています。
※上の動画は、数々の若手著名ミュージシャンの曲をバックにしたダンス動画で人気を博す“yurinasia(ユリナジア)”による「Nice to 密 you.」のダンス動画。
Mikan:2曲目の「空気(Kuuki)」は、悲しんでること、辛いことがあっても表に出すことができず、自分の心の中にずっと隠している人のために作りました。
コロナとか、仕事とか、家族とか、恋愛とか、病気とか、みんなそれぞれ違う悩みを持って生きている。今年に入って、辛さに耐えきれずに自分の命を絶とうとする人たちのニュースをたくさん見て、すごく悲しい気持ちになったんです…。
「自分たちの曲で(聴いた人に)寄り添うことができたら」と思いながら書かせていただき、「どうか負けずに生きてください」という気持ちで歌っています。
ーー コロナが終息したらどんなことに挑戦したい?
Kaiaki:コロナが落ち着いたら、日本のフェスに絶対ライブしに行きたいですし、もっともっと自分たちの音楽を世界中に広めることができたらっと思っています。
ーー最後に、日本のファンに一言お願いします。
Mikan:今年はコロナで大変な状況になりましたが、前向きな気持ちで進んでいくことを願って、新しいゲシュタルト乙女から、「Nice to 密 you.(ナイス・トゥ・ミツ・ユー)」な思いを集めた3曲を、皆さまにお届けしたいと思っています。
是非チェックしてください。よろしくお願いします!
【リリース情報】
ゲシュタルト乙女
『Nice to 密 you.』
2020年11月11日(水)配信開始
https://www.universal-music.co.jp/gestalt-girl/
ゲシュタルト乙女
1st・フルアルバム『視力検査』
2019年12月4日リリース
https://www.universal-music.co.jp/gestalt-girl/news/2019-10-09/