投稿日 : 2020.12.26 更新日 : 2023.04.05

【Matt Cab インタビュー】『関ジャム』で話題の“PLAYSOUND”プロデューサーに聞く「現代の新しい見せ方」

写真/平野明

Matt Cabの写真

Matt Cab(マット・キャブ)は、米サンフランシスコ出身の音楽プロデューサー。2020年10月放送のテレビ朝日系の音楽番組『関ジャム 完全燃SHOW』に出演し、さまざまな〈音〉を〈音楽〉に変えるプロジェクト「PLAYSOUND(プレイサウンド)」を披露し大きな反響を呼んだ。

もともとシンガーソングライターとしてメジャーデビューしたMatt Cab。J-POPを英語カバーしたアルバム『ONGAKU』(2013年)は話題を呼び、自身の代表曲「LOVE STORY」(2012年)は、今でも人気のブライダルソングとして毎年チャートインしている。

また、BTS や JP THE WAVY、CRAZYBOY、YOSHI、Crystal Kay feat. 安室奈美恵など、多くの著名アーティストたちに楽曲を提供し、音楽プロデューサーとしての手腕も発揮している。

そんな華々しいキャリアを持つ Matt Cab が取り組む新たな企画「PLAYSOUND」とは、一体どんなプロジェクトなのか。

Matt Cabの写真3

息子が生まれて世界の見え方が変わった

ーーまず「PLAYSOUND」とは、どんなプロジェクトなのか聞かせてください。

はい。名前の通りなんですけど、「Play Sound=音で遊ぶ)というイメージですね。結構自由にやってます。音楽は昔からずっと遊ぶような感覚でやっていたので、(僕にとっては)自然な流れなんですよ。

始めたきっかけは、息子が生まれて、僕の世界の見え方が変わったことなんです。

息子が1、2歳のとき、すべてに対して「すごい!」と驚く様子を見て、僕も感化されたというか。些細なことにもインスピレーションを受けるようなマインドになったんです。

ーー子供の目線に立ってみて、モノゴトの見え方が変わったと。

息子がアンパンマンの車のおもちゃで遊んでて、クラクションの音に驚いてる。それを見て、僕も「たしかに、この音おもしろいかも!」「これでビートを作ったら?」と思ったんです。

それをSNSにアップしたら、みんな共感してくれたんですよ。その後、仲間のMIYACHI(注1)がラップを入れたものもアップしたんですけど、それでさらに広がりましたね。

あと、新しいiPhoneをゲットしたときに iPhone の音だけでビートを作ったりもしました。

注1:MIYACHI=米NY出身の日系アメリカ人ラッパー。日本語と英語を織り交ぜたラップで国内外から支持を得ている。

ーー本当に何でも音楽になるんですね! サンプリング素材(注2)を選ぶときは、何か基準を設けてるんですか?

心に響いたものなら何でもOKです。よくやるのは撮影した映像から音を抜き出すこと。レコーダーとか iPhone とか、今のテクノロジーなら、その辺にあるものを録って音楽が作れるので便利ですよね。

注2:サンプリング=ビートやメロディの素材としてさまざまな音を録音する手法。

ーー中には音楽にしやすい音、しにくい音もあるのでは?

アンパンマンのテーマソングとか、もともとメロディがあるものは、コードも付けやすくてやりやすいですね。一度、セミの鳴き声を音にしようとしたんですが、それは難しかったです笑)。

ーーSNSでファミリーマートやJAL、トヨタのハイエースをネタにした曲などもアップしてましたね。

そうですね。会社のみんなと「スケールのデカいことやりたいね」と話し合って。(PLAYSOUND は)ラフなプロジェクトだから、ちゃんとした企業と一緒にやったらギャップがあって面白いかな?っと思って。

ファミマの曲は、MIYACHI と遊びで作ったんですけど、フルバージョンを出したいなと思っています。あと、JRの曲を作ったんですが、その映像がバズって、JRからオファーが来たんですよ。

誰でも触れられる PLAYSOUND のワークショップをしたい

ーー先日『関ジャム 完全燃SHOW』に出演されたときは、どんなものをサンプリングしたんですか? 

関ジャニのメンバーの声とか、テレビ朝日のスタジオ周りのものの音を拾って、即興でビートを作ったんです。

ーーそれは面白いビートになりそう! 出演後の反響も大きかったとか?

そうですね。ミュージシャン以外の人たちからのフォローが増えた気がします。もともと、ヒップホップとかサンプリングに詳しい人からのフォローが多かったんですけど、『関ジャム』の放送を観て、サンプリングとかプロデュース作業を「もっと知りたい!」という人が増えましたね。

ーーもしPLAYSOUNDでライブをするなら、『関ジャム』で披露したような即興になるんですか?

ライブをするならストリーミング・ライブとか、リアルタイムで作業を見せるっていう感じですね。

PLAYSOUNDでは、ライブより、むしろワークショップとかインタラクティブ(双方向)なことがやりたいんですよ。経験者はもちろん、音楽に詳しくない子供たちとか主婦とか。誰でも触れられるワークショップを作っていきたいんです。

ーーなるほど。先日「Uber Beatsコンテスト(注3)」を開催されてましたが、あれも「色んな人を巻き込みたい」という意図ですか?

そうですね。僕の意見なんですけど、音楽は誰でもできるものだと思っていて。特に現代のテクノロジーを使えば、知識のない人でも自分の表現は絶対できると思うんです。

そういう意味で(Uber Beatsという)サンプルのパッケージを作ったんですよ。それを使って「自分の表現をしてみて!」って感じなんです。まあ、勝手にやってるので、Uber Eatsとは関係ないんですけどね笑)。

注3:Uber Beatsコンテスト=Matt CabがSNS上で企画/開催したコンテストで2020年11月末まで音源を募集していた。

TikTokとか、今の時代は長いと観てもらえない

ーー1127日には PLAYSOUND での初音源「LOVE LIKE ANIMALS(注4)」もリリースされました。リリースは今後も定期的に?

注4:「LOVE LIKE ANIMALS」=11/27にリリースされた動物の鳴き声で作られた楽曲。売上の一部は野生動物の保護や支援のために「WWF Japan」に寄付される。

まだ決まってないんですけど、全部インスタにアップしてるので、ある意味リリースしてるみたいなものですね(笑)

今のカルチャーって、昔みたいに「発売しないとオフィシャル(正式)じゃない」ってイメージが、どんどん変わってきてると思うんです。世界的なアーティストも、いきなりウェブ上で新曲を発表したりもするし。

PLAYSOUND のコンテンツは尺が短いですが、これは今の文化に合わせて考えた形だからなんです。やっぱり、2分、3分とかにすると、人のアテンション(注意)は保てないと思って。 

自分の中で PLAYSOUND の見せ方は、新しいCMなんです。

ーー確かに、インスタやTikTokなど、今は短い映像が主流ですもんね。

そうそう、長いと今は誰も見ないし、短い方がインパクトがあると思います。

TikTokとか、ディープなとこまで行くと、みんな自分や自分のブランドのCMを作ってるんですね。これからは、どんどんそう言う見せ方になってくると思うんです。

なので、そこは大変ですよ笑)。インスタ用や TikTok 用の長さの音源を作ったり、ストーリーズ用も作らないといけない。YouTube用も作らないと(笑)

ーーやることもどんどん増えていくんですね…。これから PLAYSOUND のような音作りに挑戦したい人に何かアドバイスがあればお願いします。

まずは皆さんの中のクリエイティブな部分を発見して欲しいですね。発見できれば色々可能性が広がると思うので。

自分の中から自然に出てくるもの、遊びの延長のようなものにはパッションがあると思うのでが、一番やりやすいと思います。なので、本当に子供のような無邪気な目線が大事だと思います

Matt Cabの写真2


【リリース情報】
Matt Cab『LOVE LIKE ANIMALS』
■11月27日(金)リリース
SpotifyApple Music

■Matt Cab Twitter:https://twitter.com/MattCab
■Matt Cab TikTok:https://www.tiktok.com/@mattcab
■「PLAYSOUND」インスタグラム
https://www.instagram.com/playsoundproject/