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【2020 年間ベストアルバム】ブラジル/ラテン音楽 BEST 20

2020年にリリースされた音楽アルバムの中から「ラテン系」作品に的を絞り、聞き逃せない新譜20作をセレクト。トラディショナルな中南米音楽や、ジャズに根差した作品はもちろん、世界各地から発信されるラテンの最新潮流もフォローした傑作選です。

構成・文/江利川侑介

アントニーノ・レストゥシア/Antonino Restuccia
『OTRO CAMINO』

小国ながら魅力的な音楽を多く送り出すウルグアイを代表するベーシストの最新作。同国のアフロ系伝統音楽=カンドンベに根差したリズミカルなコンポジションと、イスラエル・ジャズにも通ずる抒情性が融合。そのモダンな作風はラテンというタグを外して聴かれるべき!


オルケストラ・アフロシンフォニカ/Orquestra Afrosinfônica
『Orin, A Língua dos Anjos』

ブラジル北東部バイーア州のビッグバンド新作。アフロ系ブラジル音楽を軸にした重厚なアンサンブルと、神々しいコーラスが織りなすスケールの大きなサウンド。世界的芸術家ヴィック・ムニーズが手掛けたカバーといい、早くも名作の風格漂う一枚。


カエターノ・ヴェローゾ/Caetano Veloso
『Caetano Veloso & Ivan Sacerdote』

ブラジルを代表する巨匠と気鋭クラリネット奏者によるインティメイトなデュオ・アルバム。このクラスの音楽家ならではの妙味がたっぷりと堪能できる、互いの呼吸を合わせるかのようなリラックスしたアンサンブル。コロナ禍の心の鎮静薬に。


ガブリエル・チャカルヒ/Gabriel Chakarji
『NEW BEGINNING』

在米ベネズエラ人ジャズ・ピアニストによる最新作。ホローポなど超絶リズム音楽の宝庫である同国出身者ならではのクロスリズム。これを多用したコンポジションと、器楽的なスキャットによる透明感あふれるサウンド。踊ってよし、聴きこんでよしなラテンジャズ好作品。


ガブリエル・ブルース/Gabriel Bruce
『AFLUIR』

ブラジル・ミナス州の若きドラマーによるデビュー作。ミナスらしい独特のハーモニーにフューチャリスティックなシンセ・サウンド、ブラジル各地の多彩なリズムが調和しつつもあくまでポップに躍動する。現代ジャズ経由で生まれた新しいブラジル音楽といった趣だ。


シコ・ピニェイロ/Chico Pinheiro
『City of Dreams』

ボブ・ミンツァーのビッグバンドでも重要な役割を果たす、NYを拠点に活動するギタリストの最新作。盟友ともいえるサンパウロの気鋭ミュージシャンに加え、今回はクリス・ポッターも参加し、ハイレベルなコンテンポラリー・ジャズを聴かせる文句なしの一枚。


スピネッタ/Spinetta
『Ya No Mires Atras』

今もなお熱狂的に愛されるアルゼンチン・ロックの大家が、生前に残していたという未発表音源が今年になってリリース。充実作を連発していたキャリア後期の録音なだけあり、独特のコードワークと妖艶なメロウネスが冴えまくる全音楽ファン必聴の一枚。


チカーノ・バットマン/Chicano Batman
『INVISIBLE PEOPLE』

ラテン・ロックの2020年はこれ! チカーノ・サイケロック・バンドの3年ぶり新作。アラバマ・シェイクスでグラミーを受賞したショーン・エヴェレットがエンジニアを担当したことで、レトロでモダンな音像を獲得。力強くもとにかくメロウで心地よし。


ディアンジェロ・シルヴァ/Deangelo Silva
『HANGOUT』

ブラジル・ミナス州から登場した破格のジャズ・ピアニストが新作を発表。多彩で複雑なリズムを下地にしたブリブリの超絶アンサンブルと、トリッピーなシンセ・サウンドは終始ハイテンション。まずは 「My New Old Friends」あたりをお試しあれ!


トニー・スカール & パブロ・ヒル & ライセス・ジャズ・オーケストラ/Tony Succar & Pablo Gil
『Raices Jazz Orchestra』

2019年作『Mas de Mi』でラテングラミー2部門を獲得し、名実ともにトップ・プロデューサーとなったトニー・スカールが手掛けるラテンジャズ作品。アメリカ大陸の多彩な文化とビッグバンドをオシャレに融合した最高のエンターテイメント作品!


ヒストリー・オブ・カラー/History of Colour
『ANTUMBRA』

南米フォルクローレをクラブ・ミュージックへと仕立て上げる、オーガニック・テクノの中心人物、バリオ・リンドとエル・ブオによるユニットの待望デビュー・アルバム。フォルクローレの霊性が多幸感あふれる夢見チル・サウンドへと変化した、南米ダンスの最前線。


ファビアーノ・ド・ナシメント/Fabiano do Nascimento
『PRELUDIO』

現在はLAで活動するブラジル出身のギタリストによる最新作。サンバやボサノヴァ、アマゾンやブラジル内陸部のフォークロアなどを、自由な精神と卓越した技術で換骨奪胎。その演奏から立ち上る妖艶なエクスペリメンタリズムはまるで祈りのよう。


フランキー・レジェス/Frankie Reyes
『ORIGINALITOS』

ヴィンテージのオーバーハイム・シンセで漫然とラテンのボレロを弾く、ただそれだけの作品。ラテンのセンティメントと風呂場のような脱力音響の世にも不思議なマリアージュ。コロナ禍で疲れ切った人々の心を癒す、名門レーベル=ストーンズ・スロウの異色作。


ブルーナ・メンデス/Bruna Mendez
『CORPO POSSIVEL』

ブラジル内陸ゴイアス州のシンガー・ソングライターによるチルでメロウ、フューチャリスティックなR&B。エレクトロニクスと生楽器の有機的なアンサンブルが、浮遊する歌声と一体化し躍動。サブスクでは2019年リリースだが、今年CDがリリースされ話題に。


メリチェイ・ネッデルマン/Meritxell Neddermann
『In The Backyard of The Castle』

シルビア・ペレス・クルースに続くスペイン・カタルーニャ出身の注目株。ピアノ弾き語りを中心にしたシンガー・ソングライターものながら、ジャズやポスト・クラシカル、ジューク/フットワークからヒップホップまで、聴こえてくる音楽は極めて多彩。


メリディアン・ブラザーズ/Meridian Brothers
『CUMBIA SIGLO XXI』

ここ数年でにわかにトレンドとなりつつある、オルタナティブでサイケなラテン音楽。その潮流を代表するバンドの最新作。コロンビアの大衆ダンス音楽=クンビアとクラウト・ロックが出会ったような内容。スペーシーな電子音、いびつな音像、気怠いリズムがクセになる!


ラウル・モンサルベ & ロス・フォラヒドス/Raul Monsalve y Los Forajidos
『Bichos』

伝統音楽からジャズ、電子音楽に至るまで多彩な音楽を有するベネズエラ。本作はそんな同国の音楽遺産を現在に蘇らせるようなアフロ・ベネズエラン・ジャズ。フューチャリスティックな音色と濃密なポリリズムに脳内トリップ必至!


ロドリゴ・カラソ/Rodrigo Carazo
『Octogono』

ひそかな盛り上がりを見せるアルゼンチン・コルドバの音楽シーン。その中心人物による新作。自然に根差したたおやかなメロディと柔らかな歌声、手触り感がありながらも完成度の高いアレンジ。多彩なゲストを迎えつつもカラソの美意識が細部にまで宿る傑作だ。


J. バルヴィン/J. Balvin
『Colores』

コロンビア出身のラテンポップ・スター最新作。「Azul」はyoutubeでの再生回数1億回超え。大衆にアピールするポップな内容ながら音楽的にも聴きごたえありで、ラテン音楽の世界的活況を象徴するような充実作。ジャケットは村上隆。


SOA
『CANCIONES GUACHAS』

ウルグアイを代表するジャズ・ギタリストによるエレクトロR&Bアルバム。ジャズ・ミュージシャンによるポップス・アルバムというのは昨今珍しくないが、本作もテクニカルでありながら超絶ポップ。影響を受けているのか、コーネリアスの楽曲もカバー!

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