投稿日 : 2020.12.25
【Ba-Nana インタビュー】国籍や性別、価値観などあらゆるものを飛び越えて — 新時代のシンガーが「歌」に込める思い
取材:松永尚久、撮影:Maria Golomidova、取材協力:スティールパン・レコード
2017年に発表したカバー・アルバムが配信チャートで1位を獲得したことをきっかけに、開催するライブの多くがソールド・アウト。動画投稿メディアでは3万人以上のフォロワーを誇るなど、多方面で人気をはくすシンガー、Ba-Nana(ナナ)。2020年12月に初のフル・アルバム『777』を発表した彼女だが、そのパーソナリティはあまり知られていない。ライブでも、インタビューでも、変わることなくポジティブなエネルギーで満ちあふれる彼女のキャラクターに迫った。
TikTokの動画がバズって
──ネットを検索しても、Ba-Nanaさんの情報はあまり出てきませんでした。
そうなんですよ。自分のプロフィールを外に出すのが、どうも苦手で……。
──ではまず、そこからお聞きします。そもそもなぜ、“Ba-Nana”(ナナ)というアーティスト名で活動するようになったのですか?
本名がナナというんですけど、そのままよりも”Ba”を付けて”Ba-Nana”という表記にした方が、世界中の方々に親しみを持ってもらえるかなと思って(笑)。他に名乗っている人もいなかったので、個性が出ますしね。
──全国各地にファンが増えたのはTikTokの影響が大きいとうかがいました。
友人と温泉地に行って、ジェイソン・ムラーズさんの「アイム・ユアーズ」のカバー動画を投稿したら、TikTokのおすすめ動画にピックアップされてバズったことがあって。
@banana0708I’m yours はじゃったー##始まった##秋の歌うま ##fyp##ほったらかし温泉♬ オリジナル楽曲 – BANANA
TikTokで11万を超えるLIKEがついたショートムービー。ここから多くのリクエストに応え、フォロワーを増やしていった。
それ以降、メッセージで「この曲をカバーして!」というメッセージが届くようになりました。リクエストひとつひとつに応えるうちにフォロワーの方々が増えて、今では3万人以上の方にチェックしていただいています。
──良いプロモーションになりましたね。
本当に(笑)。それに、イメージを作って戦略的にアピールするよりも、自然体でいる方が自分にフィットしていると思います。
スタジオで格闘した初レコーディング
──音楽を始めたきっかけは?
両親が音楽好きで、父親はロック・バンドを結成していたくらい。だから私も音楽があふれる場所にいることが多く、物心ついた頃からオールディーズ、ソウル、ポップスなどさまざまな音楽を耳にしていました。
そして、私が高校の頃から両親がライブハウスを経営し始めたんです。私も入り浸るうちに自然と歌うようになりました。そこから歌うことの楽しさを覚え、デビューのチャンスを探していたところ、ベーシストであり、スティールパン・レコードを主宰する塩田哲嗣さんと繋がることができたんです。
──ジャズを歌うことに抵抗はありませんでしたか?
いえいえ、私はルーツがジャズだとは思っていませんし、今もその世界にいるとは思っていません。好きなように好きなことをやっていた結果、たまたま出会った方々の中にジャズ系の方々が多かっただけ。塩田さんもそのひとりです。
──なるほど。17年にはカバー・アルバム『Jazzin’ R&B -Diva Hits Selection-』に参加されています。
それまでは老人ホームの慰問などで歌うくらいのキャリアしかなかったので、レコーディングと聞いてもあまり自信がありませんでした。当初、塩田さんからも「出来が良ければリリースするけど、そうじゃなかったら……」というような話をいただいていて。結果、24時間以上スタジオで格闘して、ようやく世の中に残せるものが完成しました。
──この作品はiTunesのジャズ・チャートで1位を獲得するなど、大きな注目を集めました。
リリース当初は周囲に宣伝しまくりました。やがて自然に音楽が広がっていき、結果1位を獲得できたんです。その功績としてJZ Bratでのライヴも実現。この作品のヒットは、私に大きな自信を与えてくれました。
──今やどの公演もソールドアウトするほどの人気ぶりです。
最初はお客さんを集めることに必死でしたよ。根性見せないと時代にも、塩田さんにも置いていかれると思ったから!
──観ていると元気になれるステージが、多くのオーディエンスを魅了しているんだと思います。
ありがとうございます。元気だけが取り柄なので、これがないと私の個性が死んでしまいます(笑)。
音楽を通じて、いろいろな「壁」を取り払いたい
──そして2020年12月に、初となるフル・アルバム『777』をリリースされました。
最初はもっと早いタイミングでリリースする予定だったんですけど、コロナの影響もあって、なかなかレコーディングの環境が整わなくて。でもお待ちいただいたぶん、私のパワーを詰め込みまくって、納得のいく音を表現できたと思います。
──マライア・キャリーやリッキーGなどのカバーはもちろん、4曲のオリジナルも印象的でした。
たとえば「Blue」は、好きな音楽や風景に身を任せていたら暗い気持ちなんて吹き飛んでしまう──というメッセージを伝えたくて作りました。悲しい出来事が起こると、ネガティブな発言ばかり繰り返す人がいますけど、それではダメになっていくばかり。周りへの影響はもちろん、そういうことばかり考えたり、言っていると本質的な魅力を損ねてしまう。
──「If I Could」は、昨今の自粛の影響を感じさせる楽曲ですね。
コロナ自粛の影響で、会いたい人にも会えない状況が続いていますが、本当に愛おしいと思える人への想いは、どんな状況になっても消えることはないという思いを綴りました。
また、タイトル・トラックの「777」は、ライヴの時にみなさんと一緒に盛り上がれるオリジナル曲を作りたいという思いから完成させた曲。聴いていて「うわ、面倒臭い! アイツだよ!」と私の顔を思い浮かべてほしいんです(笑)。
──「手話」を取り入れたダンスも素晴らしいと思いました。
学生時代「手話部」だったんです。また耳が不自由な友人もいるので、音が響かなくても楽しんでもらえる要素があったらいいと思って取り入れました。私は自分の音楽を通じて、いろいろな「壁」を取り払いたいんです。国籍や性別、価値観などあらゆるものを飛び越えて、みんなで一体になって楽しめるものを。その思いを表現できた楽曲にもなっていると思います。
──「I Wanna Do What I Want To Do」はじっくり声の魅力に浸れる楽曲ですね。また、自分らしい生き方を追求するBa-Nanaさんの力強さが伝わってきました。
今まで300曲くらい作詞したんですけど、初めて塩田さんからオッケーをいただいたのが、この曲(笑)。私は、周囲から「ずっとそのままでいて」と言われることが多いんですけど、みんなそうあるべきだと思う。「自分はコレ!」というアイデンティティを持っていないと、人生を見失ってしまうこともあるから。明るく見える私だって、いろいろと大変なことも多いんですよ(笑)。でも大丈夫! 絶対にそれは乗り越えることができるものだから。共に好きなことに向かって前進していきましょう、という思いを込めた楽曲です。また現在、この楽曲のミュージック・ビデオを製作しています。ここでも自分の好きなことを表現しているので、完成まで楽しみに待っていてくださいね!
──カバー曲を含め、アルバムは希望に溢れていますよね。
100%私全開(笑)。それを引き出せたのは、塩田さんをはじめとする名だたるサポート・ミュージシャンの方々のおかげです。
──今後はどんな活動をしていきたいですか?
全国各地にサポートしてくださる方がいらっしゃって、みなさんたくさん素敵なメッセージをくださるんです。今後も、ひとりでも多くの人を笑顔にできるような音楽を発信できたらいいな。それが自分の役目だと思っています。
Ba-Nana(ナナ)
東京都出身。2017年にカバー・アルバム『Jazzin’ R&B -Diva Hits Selection-』で、iTunesのジャズ・チャート1位を獲得。ライブは毎回ソールド・アウトとなる注目のシンガー。2018年7月には元プロボクサー山中慎介、2019年8月には元女子レスリング金メダリスト吉田沙保里の引退セレモニーで歌唱を担当したことでも話題となった。2020年12月には待望のアルバム『777』をリリース。参加メンバーには、塩田哲嗣(b)、吉田智(g)、西山史翁(g)ら日本のポップス〜ジャズ・シーンを代表するミュージシャンが多く揃った。
https://instabio.cc/20819U5AVVA
リリース情報
Ba-Nana『777』
スティールパン・レコード(SPR-0006)
■発売日:12月2日
■価格:¥3,000 +税
https://ameblo.jp/norishio88/
https://www.facebook.com/steelpanrecords/
ライブ情報
Nori Shiota年末special!!
日程:12月30日(水)
会場:六本木alfie
出演:村田千紘(tp)、太田剣(sax)、クリヤマコト(p)、守真人(ds)、塩田哲嗣(b)、スペシャルゲスト Ba-Nana(vo)
http://alfie.tokyo/