【ましのみ＆パンのみみ インタビュー】「ギャップが似てる」 ガールズトークで生まれた２つのコラボ・ナンバー

MBS／TBS系テレビドラマ『死にたい夜にかぎって』の主題歌を務め注目の幅を広げたシンガーソングライター“ましのみ”と、ネットシーンで話題のポップ・プロジェクト“パンのみみ”が、ふたつのコラボ・シングルをリリースした。ましのみのお家芸である軽快なラップが心地よい「GirlsParty」、ゆったりしたビートにパンのみみらしい気だるさを詰め込んだ「chocolate」。いずれもガールズトークをテーマに、ふたりのカラーが絶妙なバランスで混ざり合っている。友人として、シンガーとして、思いを共有した今回のコラボレーションについて、ましのみとパンのみみのむとうみかに訊いた。

“自分”がしっかりあるところが似ていると思った

ーーふたりの出会いは2020年の夏頃。当初は「気が合いそうだからお茶してみる？」くらいのラフな関係だったそうですが、コラボの話はいつ浮上したんですか？　

むとう：最初に会ったときに私から言ったね。ましのみちゃんのことは、“ましらっぷ（※）”とか前から「面白いことやってるなあ」っと思っていて。私がちょうど「色んな人とコラボしてみたい」と思ってたときに紹介してもらえたから、「こんなに良いタイミングないな」って。

※ましらっぷ＝ましのみが短い動画で披露するラップの通称。

ましのみ：そうだっけ!? 自分で言ったつもりでいた（笑）。私も会う前からパンのみみのことは知っていて、友達に「今度むとうさんに会うんだよね。コラボとかしたいから言ってみようかな」って話してたの。

ーー相思相愛ですね。

ましのみ：私もちょうどコラボしたい時期だったから「せっかくなら」って。でもコラボしたいから会ったわけじゃなくて、普通に仲良くもしていきたかったし。あと、「なんか似てるな」と思ったんだよね。初めは話すテンポや笑うポイントが不思議だったんだけど、ちゃんとした話をしたら、所々に思いの強さを感じて、自分がしっかりあるタイプだと思ったの。私もこだわりが強いし思ってることも強いのに、ふわっとして見られるから。そういう“外見と中身のギャップが同じかもしれない”ってところに親近感が湧いたな。

むとう：「ふわっとしてる」って言われるのは共通してるかもだけど、ましのみちゃんは私よりすごくしっかりしてるよ！ でも音楽で色々悩んでることも話してくれて、同じ音楽をやってる者同士、せっかく出会えたんだから「一緒に何かできないかな」って思ったんだ。

友達と一緒だから歌えることがある

ーーましのみさんが作った「GirlsParty」、むとうさんが作った「chocolate」、２曲ともテーマは共通してガールズトークです。どちらもふたりの会話がそのまま曲になったような印象でした。

ましのみ：ふたりで喋ったことや、その中で強く思ったことが、そのまま曲としてまとまった感じだよね。

むとう：ガールズトークってテーマもガッツリ決めたわけじゃなくて、自然とこうなったしね。

ーー「GirlsParty」は軽やかな曲調で、ましのみらしい言葉遊びも活き活きしています。「あーだこーだ語らったなんも／産まないパリナイ／これが楽しいね」とか、全女子が共感しそうな歌詞がさすがだなと。

むとう：「ちょっとぷにっとしたお腹つまんで」って入りもグッとくるよね！

ましのみ：本当にそうだったんだよ。そういう時期ってあるじゃん。

むとう：分かる分かる分かる！

ましのみ：前は人と会わずに曲を作ってたんだけど、ここ数年、むとうさんとか色んな人とごはんを食べたりするようになって。私が考えてることって、「ほかの女の子も結構同じように思ってるんだな」って感じたの。むとうさんとも、”毒”も含めて色んなことが共通したから、そういうのは絶対入れたいなと思って。

ーー毒といえば、ましのみさんは「カッコ悪いやつだけにゃなりたくないよね」というフレーズを「むとうさんと一緒に歌えて良かった」と言っていましたよね。

ましのみ：初めて会ったときに色んな話をしたんです。好きな音楽の話とか過去に関わった人の話、その中で裏切られた話。人間関係とか音楽との関わり方とか、本当に色んな話をした上で、最終的に「私は“カッコ悪いやつだけにはなりたくないな”」と思って帰ったんです。それは最近の自分のモードとしてもあったんだけど、ひとりで歌うには重すぎて…。でも友達と一緒にだったら言えるし、言いたい。だから今回一緒に歌えてよかった。

ーー初対面からかなり深い話をしたんですね。

ましのみ＆むとう：けっっっこうしたよね！

ーー「chocolate」は、女性をもれなく憂鬱にさせる生理のお話です。「毎月私お疲れ様です」や「解放日まであと３日」といったフレーズは、みんなの憂鬱の種をキャッチーなメロディーに乗せて吐き出してくれているようで爽快でした。

むとう：生理のせいでイライラしたり、辛くなるのって日常的で別に変なことじゃないし、みんなが言えないことを代弁してるような感じ。それとうまく付き合っていくというか「受け流すくらいの体制でいた方が楽じゃない？」って。

ましのみ：「毎月私お疲れ様です、女性の皆さんお疲れ様です／今月もしんどい、我慢はナンセンス、負けないハート／でも むり」ってところ、めっちゃ良いと思った！ 自分では絶対書けないけど、すごいスッと落ちた。

むとう：絶対ましのみちゃんに合うと思いながら書いたよ。

リスペクトし合える関係をこれからも

ー今回コラボをしてみた率直な感想は？

むとう：超楽しかったし、混ざり方がちょうど良かった。好き同士でも合わないことってあるけど、そんなことなかったのが一番うれしい！

ましのみ：同じ価値観を持った仲の良い人とやってるから、作業全部を通して「やんなきゃ！」がないというか、ずっと楽しんでできたな。最近ね、遊びみたいにできる音楽を届けた方が、お客さんも絶対ハッピーになれるだろうから「楽しんで音楽をしよう」と思ってて。今回はそれがちゃんとできてすごい嬉しかった。

ー楽しさは楽曲からも十二分に伝わります。改めて、お互いのことをどんなアーティストだと思いますか？

ましのみ：むとうさんはまず声が良い！ 声の聞き心地が良いってやっぱり一番大事なんだよね。声が良い人って、その良さを生かすためにシンプルで伸びやかな曲を作ることも多いけど、むとうさんは曲のメロもキャッチーだし言葉選びも面白い。私が良いなって思うポイントが声にも曲にも入ってるから「すごい人だな」って。あと考え方がアーティスティックで不思議で、魅力的な人だなって思う。

むとう：え～、ベタ褒めじゃん（照）。でも思春期の頃は「声が気持ち悪い」って言われたこともあって、むしろコンプレックスだったんだよ。でも、良いって言ってくれる人もいたし、歌ってる時間は楽しかったから、今は「自分の声、超好き！」って言えるけど。

ましのみ：なるほどね。実は私、今ソロが怖いなって思っていて…。自分の声が嫌いってわけじゃないんだけど、“届けるための楽器”として「マス（大衆向け）に行きにくいかも」って感じちゃったのね。でもやっぱり声って、音楽的な表現の中ですごく重要だから、「ソロで作るのを辞めるのも違うな」と。今はフィルターをかけたり、めちゃめちゃコーラスを重ねたり、ウィスパーめにしてみたり、自分が「本当にこれだったら良い！」って思える声の使い方を見つけようとしてるんだ。

むとう：それレコーディングでめっちゃ伝わったよ！ましのみちゃんって作家さんみたいなイメージが強かったけど、レコーディングで滑舌やピッチを細かくディレクションしてるのを見て、「やっぱりちゃんと自分の歌を持ってらっしゃるんだな」ってすごく思った。

ーー歌い手同士だからこそ深く分かり合える。そういう話を共有できる相手ができたのも、この出会いの大きな収穫ですね。

ましのみ：そうだね。私、こういうこと話せる人あんまりいないや。

むとう：新しい曲出したらお互い聴いて、普通に感想を言い合いたい。

ましのみ：そうだね！ そう思う。

むとう：そういうの、ずっと続けていきたいね。

【リリース情報】

パンのみみ feat.ましのみ
「chocolate」
2021年２月10日（水）発売

ましのみ feat.パンのみみ
「Girls Party」
2021年２月12日（金）発売