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「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は京王新線の初台駅北口から徒歩約8分、不動通り商店街から路地を入ってすぐの場所にある『G☆P Coffee Roaster(G☆P コーヒー ロースター)』を訪問。隠れ家のような雑然とした雰囲気がありつつも、気づけば長居してしまう空間。そこには、ロースター業界ではすでに知られた存在である店主の人柄が反映されていました。
サードウェーブへの興味もあったが、好きなのは深煎りだった
2017年7月に焙煎所兼テイクアウト専門のカフェとしてスタートした『G☆P Coffee Roaster』。場所はそのままに、焙煎機を移して2020年7月に喫茶店がオープンした。
「リニューアルしたのは、昔から喫茶店をやりたかったというのが一番です。あとは焙煎量が増えてきたから。お客さんには音楽を聴きながらゆっくりしてもらいたいですし、紙コップではなくカップで提供したかったんです」
そう語るのは、オーナーであり焙煎士の実 豪介さん。
神戸出身、1991年生まれの実さんは、祖母などに連れられて昔ながらの喫茶店によく通っていた。また、無意識ながらもその独特な空間が好きだったという。そして19歳になると「かっこいい」という理由もありカフェで働き始め、エスプレッソを触るようになったことで珈琲への関心が高まったという。その後、サイフォンやネルドリップのある喫茶店で働きながら勉強し、23歳で上京した。
「当時はブルーボトルコーヒーが清澄白河にできたり、東京にコーヒースタンドが続々と登場した頃。これは行かないとまずいなって。当初はサードウェーブ的なものにも関心がありましたが、すぐに自分は深煎りの苦い珈琲しか興味がないとわかったんです。暗い店内で怖そうなマスターがいるようなところがやっぱり好きだった(笑)」
焙煎機を買う前に卸先が決まりスタート
上京後はカフェレストランで働きながら、喫茶店巡りをするようになる。そんななか、友人が見つけてきた青葉台(横浜)にある『Blue DOOR Coffee(ブルードアコーヒー)』の佇まいに一目惚れ。「給料はいらないから働かせて欲しい」と頼み、手伝いから始め、焙煎を教えてもらいながら、早い時間帯に焙煎機を借りて試行錯誤をするようになる。その間もカフェレストランで働いていたというからすごい。
「焙煎が楽しくなって、いろいろと焼いてはお店に持って行ったり、人にあげたり、家でドリップバッグを大量に作って配ったり、のめり込みました。次第にイベントにも誘われるようになって出店するうちに、焙煎機もないのに卸先が決まっちゃって。それならばと焙煎所を作ったんです」
実さんは豆と会話しながら仕上げていくタイプ。温度の上がり方がその日の湿度や風の強さに影響されるアナログな焙煎機を使っており、火加減の調整もコックでおこなう。
「五感を高めながら感覚でやっているので、人に教えられないんですよ」
もちろん深煎り一本筋。実さんの珈琲豆は「深みがあるのに甘い」と評判だ。昨年復活した『Jazz喫茶マサコ』ではホットやアイスのブレンド、さらにはシングルオリジンを提供。『月光茶房』にもシングルオリジンを卸している。
『G☆P Coffee Roaster』ではネルドリップとペーパーフィルターから選べ、豆はブレンドが3種類とシングルオリジンの計約10種類が常時置かれている。通販も可能だ。
音楽とマッチングしない珈琲は焼きたくない
「焙煎で目指しているところは、好きな音楽に合うかどうかが大きい。音楽マニアではないですが、自分が好きな音楽を聴きながら飲むコーヒーが好きなんです。なので、これは夕方のソウルミュージックに合うとか、夜のジャズだなとか、そういうものに当てはまらないものはやらないです」
それらを珈琲豆の説明に書いて欲しいところだが、一般的にはわかりづらくなるのでやらないという。
「でも、音楽が好きなお客さんには、”これ、結構ニーナ・シモンっぽいんだよね”とか言いますよ。そういうと理解してくれるんで」
店内ではソウルやR&B、ジャズを中心に幅広い音楽がレコードで流れている。高校時代にはアリシア・キーズやビヨンセ、エミネムやショーン・ポールといった当時のヒット曲を聴くなかで、徐々に自分の好みがスローなR&Bだと気づくようになったという。その後、カフェで働くようになってからは、ジャック・ジョンソンやジェイソン・ムラーズといったオーガニックなSSWも聴くようになり、カフェに合う音楽を探すようになった。ルーツ・レゲエも好み。また、アリゾナを旅したことがきっかけで、カントリーやブルーグラスも聴くようになる。
「周囲にDJをやっている友達が多かったので、自然と20歳くらいからレコードを買うようになったんです。レコードをかけながら何かをしているのが好きなんですよ、そういう時間とか空間が…。昔から周りに面白い仲間が多くて、YOGEE NEW WAVESやMONO NO AWARE、あとはSuchmosのメンバーも友達で、僕が好きそうな曲を彼らが教えてくれるんです。それらがどれもドンピシャ。そんな感じで音楽の情報を仕入れています」
いつか雰囲気のあるジャズ喫茶をやってみたい
音響は基本的にデザインで選んだというが、スピーカーはJBLの4312B、アンプは80年代のサンスイ、ターンテーブルは70年代のパイオニアを揃えた。
「いつか雰囲気のあるジャズ喫茶をいつかやりたいと思っています。美味しいコーヒーが飲めるところって少ないじゃないですか。飲食店にも興味ありますけど、いまは海外旅行がしたいかな。最近は釣りばかりしています」
店内はカウンター3席とコンパクトだが、ラフで雰囲気のいい空間。『月光茶房』も認めた新世代の深煎りともいえる、美味しいコーヒーを是非味わってほしい。なお、毎週水曜は古着好きのスタッフによる古着の販売も行われている。
・店名 G☆P コーヒー ロースター
・住所 東京都渋谷区本町2-28-4
・営業時間 11:00〜20:00(L.O.)
※緊急事態宣言の発令に伴い、2021年3月7日まで19:30(L.O.)
・定休日 無休
・Online Shop https://gpcoffee.base.shop/
・Facebook https://www.facebook.com/GP-Coffee-Roaster-722941324475390/
・Instagram https://www.instagram.com/gp_coffee_roaster/
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