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「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、都会のど真ん中でスマートにまったりできる空間『The Room COFFEE & BAR(ザ ルーム コーヒー&バー)』を訪問。気取りすぎない雰囲気で、誰もが気軽に足を運べるお店でした。
最高の立地「渋谷ストリーム」の路面店
渋谷ヒカリエのオープン(2012年)を皮切りに、大規模な再開発が続いている渋谷駅周辺。次々と生まれる高層ビルもさることながら、渋谷という「谷」を埋めるかごとく四方八方に広がる空中の遊歩道は、久しぶりに訪れる者を浦島太郎にさせてしまうほどだ。
そんな渋谷駅の南エリアにて2018年にオープンしたのが「渋谷ストリーム」。低層階はカフェ&レストラン、高層階はホテルやオフィスが入る大規模複合施設だ。その1Fに2020年12月末にオープンしたのが『The Room COFFEE & BAR(ザ ルーム コーヒー&バー)』。店名からもわかる通り、渋谷の老舗クラブ「The Room」のカフェ業態であり、同店がクリエイティブ・ディレクションをおこなっている。
「最初にこの話をいただいたのが2020年9月で、コロナ禍で新店舗? 嘘でしょ? という気持ちでした(笑)。でも、実際に見てみたら川沿いの路面店で、隣に広場があって、入り口を全開にしてオープンテラスも作れる、しかも渋谷駅から直結。これは最高のロケーションだなと思ったんです」と語るのは、クリエイティブ・ディレクターを務めるDJの沖野修也さん。
『The Room COFFEE & BAR』は、渋谷ストリームエクセルホテル東急と、プロデュース会社のスターマーク、そしてThe Roomの3社が共同で運営をおこなっている。
「コロナ禍になって、The Room PROJECTというものを立ち上げたんです。以前は東京に住んでいて地元に戻った人や、年齢的に深夜のクラブがキツくなった人、さらにはまだThe Roomに足を運んだことがない人たちに発信していこうと。このお店もそうですし、今後はオンラインショップもスタートします。昨年、山中胡で開催したThe Room Campもその一環。東京以外の国や地域で、ブランド展開をしていきたいと考えているんです」
ベルリンやバルセロナのカフェを彷彿とさせる
店内の壁はライトグレーに統一され、DJブースや棚などにはダークブラウンが使われた無機質な空間。その一方で観葉植物も多く置かれており、自然体でスマートにくつろげる空間となっている。春からの季節は開放的なオープンテラスで過ごせ、川沿いの都会的な風景が楽しめる新名所だ。
「なんとなく意識したのは、ベルリンやバルセロナのカフェ。オープンテラスとはいえ車道沿いではないので、ゆっくりと過ごせるんです」
物件を見てすぐに思いついたのは、BARとコーヒーと本屋という組み合わせだったという。沖野さんは6年前より『JAZZY BOOKS』というポップアップ・ショップをやっていることもあり、お店でも本を売りたいと思ったとか。現在は販売していないが、店内にはジャズ関連の本が充実していて自由に閲覧することができる。それらすべてが馴染んでいるように感じるのは、店内にある22席すべてに置かれたヴィンテージ・チェアが一役買っているようだ。
「これはオランダの工業デザインメーカー、ガルファニタスのヴィンテージチェアです。椅子選びに悩んだとき、郊外によくあるウェアハウスみたいなところへ探しに行って。京都の南区でしたけど、ふらっと行ったらコレが大量にあったんです。即決したのですが送料が高かったので、自分でレンタカーを借りて運転して運んだんです(笑)」
3社共同企画というと大規模なプロジェクトのように感じるが、実はひとつひとつ手作りでコンパクトに運営されている。
「スピーカーも、上階にあるエクセルホテル東急のバーで使われているものを持ってきています。ヴィンテージスピーカーを設置したいとも思いましたが、DJでブッキングした人すべてがアナログオンリーではないので、今は汎用性の高いセットにしています。機材を簡単に動かせるようにしているので、広場でイベントがあれば持ち出すこともできます」
週末は沖野修也セレクトのDJたちがプレイ
DJブース内は、ターンテーブルにPLX-1000 ×2台、CDJ-2000NXS2 ×2台、ミキサーはDJM-900NXS2と、すべてパイオニアで揃えたクラブ仕様。現在は毎週土曜の14:00~のみDJが入るが、コロナ騒動が落ち着いたら木・金・土または金・土・日などで入れていきたいという。
「DJが入ると、グラス片手に川沿いで過ごす人もいて、DJブースから見て縦長の店内が横長に人が溢れていい感じなんです。都心でこの開放感はなかなか味わえないですよ。盛り上がったらそのままThe Roomにお越しいただければと。コロナが終わったらそういう流れにしていきたいですね」
店内と野外の境界線が消え、ふらふらと動き回れる感じはオシャレな海の家のような雰囲気。もちろん、通常営業のときはまったりと過ごせるカフェとして機能し、打ち合わせにも最適なスペースとなる。そんな店内でひときわ目を引くのは、壁に並べられたアナログ・レコードのジャケット群。とくに右側半分はマニアック&レア盤ばかりでニヤリとさせられてしまう。
「右半分は、The RoomのGMでもある冨永陽介のコレクション。高額のレア盤ばかりで、美術館でいえばパーマネントコレクションみたいなものですね。左半分は僕が担当していて、毎月コンセプトを変えながら選んでいます。デザイナーやレーベル縛りで選んだり、500円以下で買ったものを並べたりなど企画展みたいな感じです」
カウンターの上部や、ブックコーナーにあるアートはすべて沖野さんが描いたものだ。
「昔、バーニーズ ニューヨーク新宿店で個展をやったときの作品を使っています」
試飲を重ねて選び抜いた4種類のオリジナルブレンド
同店は、飲食のメニュー開発にホテルのシェフが参加していることもあり美味なものが揃う。名物は、器を含めアナログレコードをイメージしたブラックシーフードカレー。たまごといぶりがっこのサンドイッチも人気だ。アルコール類もバーテンダーが作るので、しっかりと美味しいものが飲める。
「コーヒーは僕だけでなく、DJ KAWASAKI、彩菜(ボーカリスト)、冨永陽介が、トリバコーヒーさん監修のもとで試飲を重ねてブレンドを作りました。僕のブレンドは、以前にトリババコーヒーさんとイベントをやったときのプロトタイプを元に作っています。松田優作さんの『探偵物語』で工藤ちゃんが飲んでいたブレンドを、ほぼ忠実に再現した昔ながらの深煎りです」
すべてのコーヒーはハンドドリップで丁寧に淹れられ、ぞれぞれの個性が生かされた味わいを楽しめる。また、現在は期間限定で一杯飲むと2杯目が100円になるレシートが発行される。
The Room COFFEE & BARのプレイリストも公開中
通常営業時の店内BGMは、沖野さんが季節ごとに選曲したものが流れる。また、Spotifyでは毎月『The Room COFFEE & BAR』をイメージしたプレイリストも公開中。これを流せば、どこにいても店内気分が味わえる。
「ここでは今の音楽トレンドを視野に入れながら、踊るというよりコーヒーを飲みながらゆっくり聴ける選曲をしています。感覚的には、カフェ・デル・マー(チル・アウトな音楽を広めたイビザ島のカフェ)の自分版ができたらいいかなって。和モノも適度に入れつつ、あくまでもThe Roomのテイストでという感じです」
イメージに反してカフェが少ないと言われる渋谷。都会的なムードはそのままに、開放的な気分のなかでグッドミュージックを聴きたいときには、ぜひ足を運ぶことをおすすめしたい。
取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥
・店名 ザ ルーム コーヒー&バー
・住所 東京都渋谷区渋谷3-21-3 渋谷ストリーム1F
・営業時間 11:00~22:00
※コロナ禍は営業時間が変わりやすいため下記HPやSNSでご確認ください。
・定休日 不定休
・HP https://the-room-coffee-bar.business.site/
・Facebook https://www.facebook.com/The-Room-Coffee-BAR-100943465230177/
・Instagram https://www.instagram.com/theroomcoffeeandbar/