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「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、2006年より渋谷で続くブラジル音楽のかかるお店『Bar Blen blen blen(バー ブレン ブレン ブレン)』を訪問。コロナ禍が収まったらすぐにでも行って楽しく飲みたい。そう思わせてくれるハッピーな空間でした。
フレンドリーなブラジル酒場
渋谷駅から徒歩約5分、渋谷マークシティ裏側の坂を登りきったあたりにある『Bar Blen blen blen(バー ブレン ブレン ブレン)』。ブラジル好きの人には知られたフードの充実したバーで、お店にはフレンドリーな雰囲気が漂う。また、サトウキビを原料とする、ブラジル版のラム酒「カシャーサ」が豊富に揃う店としても知られている。
「ブラジル好きになったきっかけは、ブラジルのクラブミュージックを集めたコンピCDを2002年頃に聴いてからなんです。そこから現在進行形のブラジル音楽を掘り始めたらハマってしまって。地元が群馬県の太田市なんですけど、ブラジル人街のある隣町の大泉町にも行くようになって。実際にブラジルへ旅行したら完全に魅了されました」と語るのは、店主の宿口 豪さん。
宿口さんはそれまでレア・グルーヴやヒップホップを愛聴し、大学時代は渋谷のレコード屋でも働いていた。
「高校まで本気でバレーボールをやっていたので、その頃は全然遊んでないんです。でも、同じクラスの親友がフリッパーズ・ギターとかオリジナル・ラブとかを聴いていて、レコードも買ってるようなオシャレな奴だったんですよ。その影響で、卒業したら東京でオシャレな生活をしようと心に決めていました(笑)」
大学時代はレコ屋で働きDJとしても活動
上京後、その親友がフリーソウルのイベントに誘ってくれたことでクラブに通うようになり、レコードも買い始める。そのまま渋谷のレコード屋で働き始め、先日惜しくも亡くなったRYUHEI THE MANなどと共にDJパーティをするなど、90年代後半~00年代初頭の渋谷スタイルを地で行くこととなる。
さらに、音楽業界人やミュージシャンの多く集まる渋谷のバー『MILLIBAR(ミリバール)』でも働くようになり、最終的に大学へ6年間も通うことに。
「橋本徹さんが僕の働いていたレコード屋の常連だったことで知り合いになれて。その後、Café Apres-midi(カフェ・アプレミディ)の立ち上げに誘われ、そこからはバイトの掛け持ちが3店になりました」
そんな生活を続けるなかで、宿口さんを魅了したのが冒頭のブラジル音楽だった。
「初めてブラジルに行ったときは衝撃を受けました。人懐っこくて、みんな優しくて、犯罪が多い国というのが信じられないくらい。あと、遊ぶときは全力で楽しむんですよ。人間らしく生きているなって」
そんなブラジル人の魅力が、本来お祭り好きな宿口さんのキャラクターとフィットしたのだろう。長い大学生活が終わろうとしたとき、ブラジル音楽のかかるバーを開くことが目標となった。
コミュニティよりも交差点のような店にしたかった
「2006年のオープンですが、当初から渋谷でやろうと決めていました。遊び慣れた場所ということもありますが、ターミナルシティでやりたいという思いも強かったんです。コミュニティを作るというよりも、初めて来た人と仲良くなって盛り上がったのに一期一会で終わるようなノリも好きで。そういう交差点みたいな場所にしたかったんです」
当初は内装に回す予算もなく、インテリアにはあまりお金がかけられなかったという。その後、2007年にお店を3週間休んでブラジルへ旅行。そのときにヴィジョンが見えて、現在の内装となった。
「料理に関しても、そこから頑張るようになりました。お客さんが美味しいと言ってくれると、嬉しくていろいろ試したくなるんです」
フードメニューも豊富で、「コシーニャ」というブラジルのチキンコロッケはブラジル人みんなが大絶賛するという。コロナ禍よりランチもスタートし、ムケッカやミナス・ランチなどブラジルで親しまれているプレートを楽しむこともできる。こちらも在日ブラジル人たちから評判となっている。
「コロナで時間ができて、以前買っていた肉をくるくる自動で回しながら焼く器具をセットしたり、炭火を導入したりしたんです。そうしたら格段に美味しさがアップしました」
その日のお客さんの7割が喜びそうな選曲を心がけている
店内で流れるのはブラジル音楽だが、新譜からオーセンティックなものまで幅広い。
「お店のコンセプトがラウドなブラジル音楽なので、静かなボサノヴァしか聴かないタイプの方はあまり来られないんですけど。でも、ブラジルといってもジャンルが幅広いので、来ているお客様の7割が喜びそうなものを選んでいます」
最近のおすすめは、ブラジリアン・フュージョン界の大御所であるアジムスが、Jazz Is Deadレーベルより発表したアルバム(写真右)。「相変わらずいい演奏をしていて、早めの時間帯から賑やかな時間帯までかけられる一枚です」。
そして、サンバ・ソウル界の最重要人物であるヴァルミール・ボルジェスが 2018 年に発売したアルバム『MELHOR MOMENTO』(写真中央)。「発売から時間が経っていますが、いまだによくかけています。かけると必ず、これ誰? って聞かれます(笑)」。
最後は、ヴァネッサ・モレーノの『SENTIDO』(写真左)。「才能豊かな女性シンガーで、ゆったりと静かに楽しめるアルバム。ランチどきや深夜帯にかけています」。
初めての人でも気軽に楽しめる雰囲気づくり
音楽プロデューサーであり、ラジオ番組制作者としても知られる中原仁さんもハイペースに来店するという『Bar Blen blen blen』。客層は20~40代が中心で、男女比はほぼ同じ。最近の若い子はあまりお酒を飲まないというが、ここに来る若者はそんな雰囲気が一切ないという。
「常連のお客さんはみんなバー民度が高いので、初めての方でも気軽に楽しめると思います。僕が内輪ノリというか閉鎖的な雰囲気が好きではないんで。とにかく1回目を楽しんで欲しい。過剰な接客はしないですが、様子を見ながらお声がけしつつ完全放置はしないようにしています」
渋谷にいながらブラジルのヴァイブスを楽しめるお店。まずはランチからでも足を運んでみてはいかがだろう。
取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥
・店舗名 バー ブレン ブレン ブレン
・住所 東京都渋谷区道玄坂1-17-12 野々ビル2F
・営業時間 11:45~14:00(月曜~金曜)、18:00~24:00(火曜~土曜)
※コロナ禍は営業時間が変わりやすいため下記HPやSNSでご確認ください。
・定休日 日曜、祝日
・電話番号 03-3461-6533
・HP http://www.blenblenblen.jp/
・Facebook https://www.facebook.com/BarBlenBlenBlen/?ref=page_internal
・Instagram https://www.instagram.com/barblenblenblen/?hl=ja