投稿日 : 2021.09.24
【東京・田園調布/STILLPARK】カフェとレコードと植物が調和する空間
取材・文/富山英三郎 撮影/高瀬竜弥
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「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、時間がゆっくりと流れるガーデンのようなカフェとレコードと植物のお店『STILLPARK(スティルパーク)』を訪問。美味しいコーヒーを飲みながら、ただぼーっとしているだけでセンスのいい人になれるような素敵なスポットでした。
わざわざ行かないといけないお店
東京都世田谷区にある田園調布駅または自由が丘駅(東急東横線)、奥沢駅(東急目黒線)、九品仏駅(東急大井町線)と、4つの駅からそれぞれ徒歩約10分。周囲は一軒家が並ぶ高級住宅地という立地にて、2021年5月に誕生した『STILLPARK』。
おしゃれな低層マンションの1Fが店舗になっており、外部である道路との間には絶妙なバランスで緑が生い茂っていてガーデンの中にあるような雰囲気となっている。
「最初は渋谷、下北沢、代々木上原とかをいろいろ巡ったんです。でも、この物件を見て、建物や庭の雰囲気、店内のサイズ感が気に入って決めました」。そう語るのは、店主の山崎真央さん。
『STILLPARK』はカフェでありながら、レコードや観葉植物も売っている。そのすべてが調和しており、自然とリラックスすることができる。また、テラスに座っていると店内から心地よい音楽が聞こえ、庭の木々越しに見える人や車の往来は映像のようで、ゆるやかな時間が流れていく。
「どの場所でお店をやるにしても、駅近は考えていなかったです。わざわざ行かないといけないお店にしたかった。今ではどこも便利な場所が人気ですが、僕が若い頃はあまりお店のない代官山にわざわざ行って、散歩のように歩きながらお気に入りの場所に通っていた。そういう体験をして欲しいと思ったんです。ここは3台ぶんの駐車スペースもあるので車でも来れます」
音楽ディレクターが選ぶ、コーヒーに合うレコード
山崎さんの本業は音楽ディレクター。90年代初頭にジャズやソウルを中心とするDJを始め、その後にレコードショップのMR BONGOで働き始める。99年からは表参道のスパイラル内にあったスパイラルレコーズのプロデューサーとなり、独立後は音楽ディレクターやバイヤーとして活躍。さらに、青山のCAYで音楽ディレクター兼プロデューサーを務めるなど、多岐に渡って活躍してきた。もちろん現在も音楽の仕事が中心となっている。
店内で販売されているレコードは、国内のものも含め、80年代のアンビエントが中心。現時点では、ほぼ山崎さんの個人コレクションから抜粋したものを置いているとか。ラック内では、土岐英史やファラオ・サンダースなどのジャズも見つけることができた。お店でかけているレコードもまた、ここから選ばれている。
「コーヒーに合う静かな曲を選んでいます。名盤からマニアックなものまでありますが、そのアーティストが”知られている・知られていない”は、音楽の良し悪しにはまったく関係ないじゃないですか。レコードバイヤー時代もそうでしたが、マニアックなものをそうじゃない人に売りたいというか、純粋に気に入ったものを手に取って欲しいんです」
ちなみに店名の『STILLPARK』は、80年代に活躍した日本の作曲家・芦川聡の楽曲「Still Park」からきており単語の間のスペースを取ったものだ。
「STILLには静かな・始まる前という意味があるので、公園に人がいない開園前の雰囲気を出せたらと思ったんです」
家の中で育てやすい観葉植物をセレクト
植物を販売しているのもまた、それが山崎さんの趣味のひとつだからである。自宅には温室を構えるほどの愛好者なのだ。
「植物に関しては、難しいものをたくさん置くより、手ごろな値段で家の中で育てやすいものをセレクトしています」
プライスの書かれた下げ札には、植物の特徴や水やりの頻度などが書かれており、事前に育て方がわかるのが嬉しい。これならちょっと育ててみようかなという気分にさせられてしまう。
「植物もレコードも自宅で楽しむもの。そういうものを選びながらゆっくりコーヒーを飲むのは贅沢な時間になるかなと思ったんです。気になるレコードがあれば自由に視聴いただけますし、頼まれればこちらでおかけします」
飽きのこないコロンビアのシティロースト
メインはあくまでもカフェというだけあり、コーヒーも美味。コロンビアはナリーリョ県産の豆を使ったシティロースト(中深煎り)は飽きのこない一杯だ。数量限定の水出しコーヒーも同じ豆を使っているが、焙煎を少し変えている。
「珈琲についてあまり語りたくないんです。なんでもいい派ですけど、なんでもよくなくて(笑)。珈琲と音楽は似ていて極めようと思っても極められない。最後はセンスや感性が重要だと思うんです」
確かに、このところの珈琲に関する情報はうんちくが多すぎる傾向にある。山崎さんにとって、こだわりを語りすぎるのは野暮だということだろう。フードに関しては、キャロットケーキやカカオインゴット(濃厚なガトーショコラ)、2種類のマフィンが揃う。現在は、新メニューのホットサンドを開発中だ。
デザインも音質もいい音響で心地よい空間を提供
音響に関しては、ターンテーブルがオーストリアのトーン・ファクトリー。これは高級オーディオブランドであるプロジェクトとのコラボによって生まれたもので、ミニマムなデザインが美しい。アームとカートリッジが一体型になっており、オルトフォンのコンコルド系の針しか使えないというのもユニークだ。
スピーカーはドイツのムジークによる、アンプ一体型の小型モニタースピーカー。そして、ミキサーは日本のアルファ・レコーディング・システムのロータリーミキサーを使用している。
「トーンはミニマムな正方形の上にターンテーブルが乗っているだけのデザインが気に入ったのですが、使ってみたら音もいい感じでした。また、ムジークはあのサイズのスピーカーではダントツに音がいい。音量に左右されず深みのある音が出るんです」
古くからの友人だという家具屋さんのスタンダードトレードによる内装は、ウッディでシンプルで上品。すべてが調和していて嫌味がない。
「コロナが落ち着いたら、限定10~20人のライブや食事会はしていきたいですね。皆さんにとっての憩いの場として使ってくれたらいいなと思います」
取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥
・店舗名 スティルパーク
・住所 東京都世田谷区玉川田園調布2-8-1
・営業時間 11:00-19:00、11:00~20:00(金曜・土曜)/ L.O.は30分前
※変動する可能性があるので来店時はInstagramをご確認ください
・定休日 月曜、火曜(ただし祝日は営業)
・Instagram https://www.instagram.com/stillpark_coffee/
・Facebook https://www.facebook.com/stillpark.coffee/?ref=page_internal