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【東京・渋谷/THE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-】BARとレコードとFOODがつむぐ新たなストーリー

THE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-の写真9

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は、代々木から渋谷へ移転し約1.5倍広くなった『THE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-(ミュージックバー -ケイヴ シブヤ-)を訪問。クリエイター向け複合施設「LAIDOUT SHIBUYA」の地下に広がる別世界に、新しい遊び方を見つけたような気がしました。

コロナ休業からついにグラウンドオープン

期間限定としてスタートし、2020年12月末に終了した代々木VILLAGE。「都会のオアシス-GREAT ESCAPE-」をコンセプトに、レストランを中心とした小規模ショッピングモールのような業態で愛されてきた。オープン当初は、音楽家の小林武史さん総合プロデュースということでも話題になったのでご存知の方も多いだろう。そんな代々木VILLAGEの夜を盛り上げてきたのが、最高の音響設備、最高の選曲、そして最高のお酒を提供してきた『Yoyogi village MUSIC BAR』である。

前置きが長くなってしまったが、代々木の地で約9年間愛されてきたレコードバーが、『THE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-』という店名でリニューアルオープンした。場所は明治通り、宮益坂、美竹通りに囲まれた渋谷1丁目である。

「オープンは2021年4月20日ですが、コロナの影響で1日営業しただけで休業となってしまったんです。そして10月20日にやっと再開というか、本当の意味でのオープンを迎えることになりました」。そう語るのは、マネージャーでありバーテンダーの水口拓也さん。

店内はカウンター10席・テーブル50席と、レコードバーのみならずカクテルバーとしても日本最大級といえるほど広い。壁面はレンガやウッドを多用しつつダークトーンでまとめられており、ブルックリンの倉庫街を彷彿とさせるインダストリアルな空間となっている。カジュアルさと高級感を併せ持つ雰囲気は、海外のBARに来たような気分になれる。

「インテリアは建具も家具もほとんど代々木から持ってきました。カウンターもそのままなので、代々木VILLAGEに来られていたお客様にとってはまったく違和感がないと思います」(マネージャー水口さん)

お酒を飲むシーンにサントラをつける感覚で選曲

中央のバーカウンターに目をやると、タンノイのウェストミンスター・ロイヤル(スピーカー)が圧倒的な存在感で鎮座している。アンプはマッキントッシュのMC302(パワーアンプ)とC52(プリアンプ)。そしてターンテーブルはリンのソンデックLP12、ミキサーはボザックのAR-6という豪華な組み合わせだ。

「タンノイは基本的にクラシック好きに愛されているスピーカーで、長時間聴いていても疲れず優しい音を鳴らしてくれます。うちはオールジャンルなので新譜のエレクトロもかかりますし、そういう音楽をタンノイのヴィンテージで流す面白さがあります」。そう語るのはミュージックセレクターの北川 毅さん。

『THE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-』では、50年代のジャズから60~80年代のロック・ソウル、そして新譜まで幅広くレコードで流れる。ジャンルを横断しながらも統一感のある独自のグルーヴ感を作り上げるのはセレクターの腕の見せどころだ。

「お客様のお酒を飲むシーンにサントラをつけている感覚で選曲しています。また、お客様が知らない曲だとしてもムードとしてつながっているというか、知識をひけらかすという意味ではなく、音楽の歴史や文化の裏付けみたいなことも踏まえています」(ミュージックセレクター北川さん)

セレクターとしての醍醐味を聞いてみると。

「店内が混んでざわめき始めると、BPMも曲の温度感も上がり、お酒のオーダーも増え始めます。次々とシェーカーの音が響くなか、音楽、お客さんの声、それらが渾然一体となったときが “空間”としての醍醐味ですね。家でひとりで聴くのとはまったく違うので、そこを感じに来て欲しいです」(ミュージックセレクター北川さん)

海外で人気のタップカクテルも楽しめる

ミュージックセレクターたちがストーリー性を大事にしているのと同じく、お酒のメニューも物語を大事にしている。

「HIP HOP HIGHBALLは、ヒップホップをテーマに作られているモンキーショルダーというウイスキーに、長野県産のホップとアメリカのIPAホップを漬け込んだものを使っているんです。また、閉店時の最後の曲はいつも〈LAST WALTZ〉なのですが、それにちなんで ”ラストワード”という古いカクテルをツイスト(アレンジ)したものをご用意しています」(マネージャー水口さん)

そしてもうひとつ、渋谷移転後の目玉となるのがタップカクテルだ。あらかじめケグ(ビール樽)にカクテルを充填したもので、味のばらつきがなくスピーディに提供できるということもあり、海外のBARでは大きなトレンドとなっている。しかし、日本では法律の問題もあり提供しているところはほぼ皆無。本来は店内仕込みでやりたいところだが、『THE MUSIC BAR -CAVE SHIBUYA-』では酒造メーカーに協力してもらい、先駆けとなるオリジナルのタップカクテルを完成させた。

「現在は3種類を用意していて、ひとつはラムベースの“FRENCH KIWI JUICE”というカクテルです。これは音楽家のFKJ(フレンチ・キウイ・ジュース)をイメージして作っているんですよ(笑)」(マネージャー水口さん)

木更津のできたて水牛モッツァレラチーズが味わえる

フードに関しては、総合プロデューサーである小林武史さんが木更津で展開している農場『KURKKUFIELDS(クルックフィールズ)』と連携。採れたての無農薬野菜を使ったメニューも充実しているが、注目は同農場で飼育されている水牛を使ったモッツアレラチーズ。フレッシュチーズに分類されるモッツァレラは鮮度が命であり、日本ではほとんど味わうことのできなかったできたてのチーズが堪能できる。

「代々木時代は併設のレストランからフードを提供していましたが、ここでは専用のキッチンを設けてこだわりの料理をお出ししています。メニューも充実しているので、一軒目からお使いいただくこともできます」(マネージャー水口さん)

日本でのBARのイメージは、静かでしっとりとしたオーセンティックな空間だったりするが、海外ではわいわいガヤガヤできるカジュアルなスタイルが主流。『THE MUSIC BAR-CAVE SHIBUYA』は、そんな海外的軽快さがありつつも、バックヤードではお酒も食事も音楽も手を抜かない日本的な生真面目さが同居している。ひとりやカップルで楽しむのはもちろん、仲間と集まっても行ける。そんな選択肢が生まれたのは多いに歓迎すべきことであり、この空間をぜひ一度味わってみて欲しい。

取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥


・店舗名 ミュージックバー -ケイヴ シブヤ-
・住所 東京都渋谷区渋谷1-15‐12
・営業時間 18:00~27:00、18:00~23:00(日曜、祝日)
※コロナ禍で営業時間が変動する可能性がありますので来店時は下記HPやSNSをご確認ください
・定休日 不定休
・HP https://the-musicbar.jp/
・Instagram https://www.instagram.com/the_music_bar/
・Facebook https://www.facebook.com/themusicbarcaveshibuya

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