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秦野邦彦(ライター)が選ぶ「2021年のベスト」3作品

秦野邦彦
ライター
1968年生まれ。テレビブロス、映画秘宝、フィギュア王、音楽ナタリー、OPENERSなどで音楽、映画、テレビ、フィギュア関連記事を寄稿。構成担当書籍にPerfume『Fan Service[TV Bros.]』(東京ニュース通信社)など。

わがつま
『第1集』

1996年生まれの女性宅録シンガーソングライターのデビュー作。キーボードのシンプルなサウンド、稚気を残した歌声、そして時折ハッとさせる言葉のバランスが素晴らしく、今年一番愛聴したアルバムです。本人は無意識かもしれませんが、全9曲ある歌詞の中に「雨」「夜」が多いのも昨今のムードと相まって中毒性抜群でした。カセットテープでのリリース(のちにレコードでも発売)なのも手作り感あってぴったりでした。先日は猪爪東風(ayU tokiO)さんをバンマスに迎えての初ライブを終えたばかり。今後のさらなる活躍が楽しみです。


Molly Burch
『Romantic Images』

ビリー・ホリデイ、ニーナ・シモンといったジャズ・ボーカリストに影響を受けたシンガーソングライターとして2017年にデビューしたモーリー・バーチ。クリスマスアルバムを挟んでの3rdアルバムは、一転してポップな一枚に。TENNISのパトリック・ライリー&アライナ・ムーア夫妻プロデュースなので音像はまんまTENNIS(「Control」「Games」「Took A Minute」はアライナ作曲)なのですが、少しかすれたアンニュイな歌声にすっかり魅了されてしまいました。ワイルド・ナッシングことジャック・テイタムとの共作したクールなディスコ曲「Emotion」はこれからの季節にもぴったり。


KIRINJI
『crepuscular』

昨年バンド体制を終了し、堀込高樹を中心に「変動的で緩やかな繋がりの音楽集団」となったKIRINJI。ニューアルバムはこれまで通り上品かつ繊細な仕上がりですが、一人になったことでさらにリズムやビートへの探求心が先鋭化した印象を受けました。「ただの風邪」「気化猫」「ブロッコロロマネスコ」といった曲名も最高(最後の聞きなれない言葉をググるとフラクタルな野菜の映像が出てきました)。夜明けとも夕暮れともつかない今の気分にもたらされた、ささやかなユーモアと幸福感。コロナ禍の記録として一番しっくりきた作品です。

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