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ふたりのピアニストが創る鮮烈空間─「山下洋輔 vs 鈴木優人」「塩谷哲 vs 大林武司」東京芸術劇場で開催

東京芸術劇場VS

ふたりのピアニストが対峙する、ユニークな演奏会シリーズが好評を博している。東京芸術劇場(東京都豊島区)が企画するこの『芸劇リサイタル・シリーズ「VS」(ヴァーサス)』は、その名のとおりピアノ・デュオ(2台のピアノ)演奏によって構成される。いわばジョイント・リサイタルともいえるステージングだ。

昨年12月に “Vol.1(反田恭平と小林愛実が出演)” が実施され、続く Vol.2Vol.3 の開催もこのたび発表となった。いずれも興趣に富んだマッチングで、観る者にとてつもない音楽体験をもたらす。そんな予感に満ちたプログラムだ。

異色の“同窓生”コラボ

Vol.2 が開催されるのは2022年3月4日。このステージに立つのは山下洋輔鈴木優人だ。山下は日本のジャズ界を代表する最重要ピアニストの一人。これまで国際的な舞台でも数々の名演を繰り広げてきた偉人である。一方の鈴木もまた、鍵盤楽器奏者、指揮者、作曲家としてクラシック音楽のフィールドで国際的に活躍する俊英だ。

山下洋輔|やました ようすけ
1969年、山下洋輔トリオを結成、フリー・フォームのエネルギッシュな演奏でジャズ界に大きな衝撃を与える。国内外の一流ジャズ・アーティストとはもとより、和太鼓やシンフォニー・オーケストラとの共演など活動の幅を広げる。88年、山下洋輔ニューヨーク・トリオを結成。国内のみならず世界各国で演奏活動を展開する。2016年、ウィーンで佐渡裕指揮のトーンキュンストラー管弦楽団と共演。2019年、山下洋輔トリオ結成50周年を祝う。2020年、最新ソロピアノ・アルバム『クワイエット ・メモリーズ』をリリース。99年芸術選奨文部大臣賞、03年紫綬褒章、12年旭日小綬章受章。国立音楽大学招聘教授。演奏活動のかたわら、多数の著書を持つエッセイストとしても知られる。
©️ Akihiko Sonoda

両者は世代も違うし互いの主戦場も異なる。いわば異色の組み合わせだが、意外な接点もある。ともに麻布学園(麻布中学校・麻布高等学校)の卒業生で、同校のOBオーケストラで二人は毎年のように顔を合わせているという。山下は言う。「(麻布学園OBオーケストラで)なぜか毎回ぼくがガーシュウィンの〈ラプソディ・イン・ブルー〉を弾くのが恒例になっている」。さらに今回のステージに期待を込めてこう続ける。

今回は、オーケストラではなく、ピアノ二台で何かやろうというお申し出だ。考えてみれば、彼とちゃんとした形でピアノ・デュオをするのは初めてだ。ぼくが出演する以上、即興演奏の場面がふんだんに出てくるだろう。どんなコンサートになるか、ぼく自身もとても楽しみにしている」(山下洋輔)

鈴木優人|すずき まさと
東京藝術大学及び同大学院修了。オランダ・ハーグ王立音楽院修了。令和2年度(第71回)芸術選奨文部科学大臣新人賞、第18回齋藤秀雄メモリアル基金賞、第18回ホテルオークラ音楽賞受賞。第29回(2021年度)渡邉曉雄音楽基金 音楽賞受賞。バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)首席指揮者、読売日本交響楽団指揮者/クリエイティヴ・パートナー、アンサンブル・ジェネシス音楽監督。NHK交響楽団、読売日本交響楽団等と共演するほか、バロックオペラの制作、上演にも取り組む。NHK-FM「古楽の楽しみ」レギュラー出演。調布国際音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー。九州大学客員教授。
© Marco Borggreve

対する鈴木優人も即興の巧手。“憧れの大先輩”である山下を「既成概念にとらわれず、ジャズという音楽を通して壁を壊してきたレジェンド」と讃える。さらに「バッハやモーツァルトなど、クラシックの大作曲家たちもまた、それぞれの世界において、新しいスタンダードを創ってきた」と語り、こんな言葉でコメントを結ぶ。

今回の舞台でもきっといろいろなものが壊れ、そして新しい音楽が生まれていくと予感します」(鈴木優人)

当の本人たちですら、何が起きるかわからない。“型や枠が壊れ、新しい何かが生まれる” その瞬間を、演奏者とともに共有できる刺激的なステージになりそうだ。

公演の詳細はこちら
https://www.geigeki.jp/performance/concert241/c241-2/

夢を叶えるステージ

さらにその3週間後(3月25日)、シリーズ Vol.3 が開催される。この舞台で顔を合わせるのは塩谷哲大林武司。初共演となる両者だが、じつは深い縁と絆がある。

大林武司|おおばやし たけし
1987年広島県出身。東京音楽大学作曲科在学中にジャズに傾倒し、米バークリー音楽院に入学。卒業後はニューヨークを拠点に活動。自己のバンドを率いつつ、Takuya Kuroda, Jose James, Terri Lyne Carrington, Nate Smithなどの世界的ミュージシャンのバンドの中核を担い、これまでに世界30ヵ国以上のジャズクラブやフェスティバルに出演。2016年にはJacksonville Jazz Piano Competitionで、日本人として初の優勝を飾る。東京JAZZ、フジロック、サマーソニックなど日本国内の音楽フェス ティバルに数多く出演。テレビ朝日「報道ステーション」へJ-Squadの一員として楽曲提供のほか、2021年にはMISIAのバンドマスターを担うなどその活動は多岐にわたる。

大林はニューヨークを拠点に活躍する、ジャズ界の若き旗手。彼は今回のステージで「ひとつ夢が叶った」と言う。じつは彼が青年時代、渡米する決意を与えてくれたのが塩谷だった。塩谷哲の演奏を見て感銘を受け、アメリカで研鑽を積む覚悟を固めたのである。その日のことを、塩谷自身もよく覚えているという。

15年以上前でしょうか、一人の聡明そうな学生が、広島での小曽根真さんと僕とのデュオコンサートの終演後に挨拶しに来たのを鮮明に憶えています。『ジャズピアノやりたいんです』と目を輝かせて話すその青年を次に見たのはその数年後、デビュー前の寺久保エレナさんのバンドで弾いている彼でした。天性のリズム感、フレーズやハーモニーの抜群のセンス。とんでもない才能を見て驚いたものです」(塩谷哲)

塩谷 哲|しおのや さとる
ピアニスト/作・編曲家/プロデューサー。東京藝術大学作曲科出身。在学中より10年に渡りオルケスタ・デ・ラ・ルスのピアニストとして活動(93年国連平和賞受賞、95年米グラミー賞ノミネート)。自身のグループでの活動の他、小曽根真(p)との共演、佐藤竹善(vo)との”SALT & SUGAR”、上妻宏光(三味線)との”AGA-SHIO”など様々なプロジェクトを展開。大阪交響楽団やNHK交響楽団との共演、『コレナンデ商会』(2016年~)等テレビ番組への楽曲提供、絢香のサウンドプロデュースなど活動のジャンル・形態は多岐にわたる。国立音楽大学ジャズ専修准教授。

そう語る塩谷自身も、若くして “とんでもない才能” を発揮し続けてきたピアニストだ。しかも、ジャズをはじめ多様なフォームの音楽で腕を鳴らしてきた傑物。また前述のとおり、大林にとって塩谷哲というピアニストは、その背中を追い続けた “目標の人”であり、かつて自分の背中を押してくれた恩人でもある。

そんな二人が初めてステージで相まみえる。しかも若き日の大林が見た、あのとき同じ “ピアノデュオ”という設定で。大林は「塩谷さんと一緒に音の世界に冒険に出かけられる」ことを心待ちにしているという。

このドラマに立ち会える。しかも彼らの “冒険”を体感できる。まさにライブならではの醍醐味だ。両者がどんなプレイを繰り広げ、どんな世界を構築するのか、興味は尽きない。

公演の詳細はこちら
https://www.geigeki.jp/performance/concert241/c241-3/


【公演情報】

東京芸術劇場 リサイタルシリーズ「VS」Vol.2
山下洋輔×鈴木優人

◆公演日時:2022年3月4日(金)19:00開演
◆会場:東京芸術劇場 コンサートホール
演目、チケット、問合せ先、ほか詳細はこちら
https://www.geigeki.jp/performance/concert241/c241-2/


【公演情報】

東京芸術劇場 リサイタル・シリーズ「VS」Vol.3
塩谷哲×大林武司

◆公演日時:2022年3月25日(金)19:00開演
◆会場:東京芸術劇場コンサートホール
※ライブ配信も実施
演目、チケット、問合せ先、ほか詳細はこちら
https://www.geigeki.jp/performance/concert241/c241-3/

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