投稿日 : 2022.02.25
【東京・両国/CHILL OUT COFFEE &…RECORDS】のんびり過ごせる珈琲とレコードのお店
取材・文/富山英三郎 撮影/高瀬竜弥
「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は両国(東京都墨田区)にある珈琲と中古レコードのお店『CHILL OUT COFFEE &…RECORDS(チルアウトコーヒー&…レコーズ)』を訪問。90年代ヒップホップやR&Bをベースとした、今の感覚でいえばローファイヒップホップ調の居心地の良いお店でした。
静かな街にある小さいお店を目指して
JR両国駅から徒歩約10分、都営大江戸線の同駅からは徒歩約4分。国道14号(京葉道路)沿いにある『CHILL OUT COFFEE &…RECORDS(チルアウトコーヒー&…レコーズ)』。両国といえば国技館や江戸東京博物館が有名だが、同店は線路の反対側に位置した住宅街にある。
「静かな街にある小さいお店にしたかったので、本当は地元の清澄白河でやりたかったんです。でも、僕が子どもの頃はデニーズくらいしかなかったのが、今や大ブレイクしてしまって(笑)。家賃も高くなりお店も増えたので、2駅離れたこの場所になりました」。そう語るのは店主の村田俊介さん。
1992年生まれの村田さんは、受験勉強にスターバックスを利用していたことからカフェという空間に興味を持ったという。その後、大学生になるとカフェ巡りが趣味となり、最終的にはサードウェーブ系のお店に行くようになった。
「高校生の頃は珈琲一杯でダラダラできる空間というイメージでした。その後、居心地の良さが魅力になり、サードウェーブ系のお店を巡るようになってからは、コンパクトなのに人がコミュニケーションしている感じがいいなと。その頃には珈琲の味の違いを楽しむようになったんです」
特徴がありつつも落ち着く、何度も飲みたくなる珈琲
当時は浅煎りや中煎りのフルーティなテイストが好みだったが、『CHILL OUT COFFEE &…RECORDS』をオープンするにあたり、住宅街という立地も考え、毎日来たくなる珈琲を目指したという。そこで、中煎りから中深煎りで、特徴がありつつも落ち着く豆を森下にある『The Northwave Coffee』から仕入れるようになった。実際、ここの珈琲は飲みやすく、それでいて家では出せない味わいがありつい通いたくなってしまう。
「珈琲豆は常時3~4種類、あとはカフェインレスを1種類用意しています。ブラジル(中深煎り)とエチオピア(中煎り)が定番的な人気です。エスプレッソはオリジナルブレンドで、ビター系なチョコレートのような味わいになっています」
大学卒業後はコーヒースタンドやカフェで働き、バリスタとして修行。約5年後の2017年4月にお店をオープンした。
『CHILL OUT COFFEE &…RECORDS』の特徴のひとつは、美味しい珈琲だけでなく、90年代ヒップホップを主軸としたチルアウトなサウンドが流れる点にある。さらに、店内ではレコードも販売されている。
「20歳の頃に働いていたレストランの先輩が、ヒップホップのトラックメイカーだったんです。それまではミッシェルガン・エレファントやザ・バースデイのようなロックが好きだったのですが、その人の影響で90年代ヒップホップを聴くようになって。世代的には高校生のときにエミネムが流行ったんですが、ああいうゴリゴリな感じはハマらなかった。でも、90’sヒップホップのゆるい感じにハマって、のめり込みました」
先輩の影響でヒップホップを聴くようになると同時に、レコード収集もスタート。そこから派生して、70年代ソウルなども聴くようになっていった。その後はチルアウトな軸はそのままに、ジャズも含めたブラックミュージックを幅広く網羅。週末にはブラジル音楽などで非日常を演出することもあるとか。
音楽と珈琲、そこにフェスの空気感をプラス
「ヒップホップを聴くようになって以来、音楽と珈琲をテーマにしたカフェをやりたいと思うようになったんです。そこに音楽フェスの要素を加えたのが、このお店のコンセプト。フェス空間って、知らないアーティストでもいい音楽だったらふらっとステージに観に行くじゃないですか。そういう出会いがこのコンパクトな空間で生まれたらいいなって」
珈琲と同じくらい音楽にも真摯に向き合っている村田さん。その証拠に、お店では新しく買ってきたものをすぐにかけることはせず、聴き込んだアルバムしか流さないという。そうすることで、曲の流れを意識した選曲・選盤ができるからだ。ゆえに、時間がスムーズに流れ、居心地の良さが生まれてくる。わずか約5坪のスペースながら、お客さんの約4割は店内で珈琲を飲んでいくという点でも、いかに雰囲気がいいかはわかるだろう。
「もともとはレコードを売ろうとは思っていなかったんです。当初はフリーマーケットの感覚でした。その後、DJの人とかも買いに来てくれるようになって、徐々に中古レコード屋を兼ねるようになったんです」
店内には70~80年代のソウルやディスコ、AOR、ジャズ、そして90年代のヒップホップやR&Bが置かれている。定番的なアルバムがしっかりと揃うので、買い逃していた名盤が気軽に見つかるという魅力もある。
珈琲目当ての常連さんがレコード派になることも
「コロナの影響でおうち時間が増えてから、レコードを買いにくる人が増えました。この辺はレコード屋さんもないですしね。あと、若い子が最近プレーヤーを買ったので何かおすすめありますか? と買いにきてくれたり。年配の方も、昼間ビールを飲みながら聴ける感じとか抽象的な注文が多いです(笑)。でも、皆さん最初は珈琲を目当てに通ってくれて、その後にレコード生活を始めますという感じなんで。うちの音楽が好きという前提があるぶんおすすめもしやすいです」
常に心地よい音楽が流れるお店だからこそ、お客さんも村田さんにお任せできる。それは素敵な関係性だといえる。また、お店に置かれた新譜のカセットテープは、常連さんがリリースしたもの。その中の1曲は、このお店で出会ったバイオリニストと作った曲だとか。小さいお店ながら、お客さん同士のコミュニケーションも生まれているのも微笑ましい。
「音楽が主役でも珈琲が主役でもない、微妙な塩梅を出したいんです。フェスやキャンプでお酒を飲みながらダラダラするような楽しさというか。このお店は小さくてイベントができないので、いつかはキッチンカーとかで地方を周りながら、各地でレコードを仕入れながらイベント出店できればいいなと思っています。あとはディスコみたいな空間も作ってみたいですね」
取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥
・店舗名 チルアウトコーヒー&…レコーズ
・住所 東京都墨田区緑2-17-8
・営業時間 10:00~18:00
※コロナ禍で営業時間が変動する可能性がありますので来店時は下記SNSをご確認ください
・定休日 不定休
・Facebook facebook.com/Chillout-CoffeeRecords-/
・Instagram @chill_out_coffeeandrecords