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【東京・南青山/BAROOM】円形ホールを備えた大人のカルチャー発信基地へ

BAROOMの写真10

「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は南青山(高樹町)にあるsong & supper『BAROOM(バルーム)』(東京都港区)を訪問。圧巻の円形ホールを擁し、レストランやミュージックバーも併設された新たな遊び場は、不思議な混沌があり、何かが生まれそうな雰囲気がありました。

時間や場所の感覚が消える非日常の円形ホール

2022年5月にオープンした『BAROOM』は、表参道駅から徒歩約12分、渋谷駅から徒歩約15分、東京メトロ日比谷線の広尾駅から徒歩約16分の南青山7丁目交差点(六本木通り)に位置している。富士フイルムの本社(西麻布本社)近くと言えばイメージしやすいだろうか。駅からのアクセスはかなり距離を感じるが、高樹町と呼ばれるこのエリアは高級イタリアンなどが点在する遊び慣れた大人たちの生息地でもある。

『BAROOM』のシックで高級感のある扉を開けて直進すると非日常的な円形ホール、左手は開放感がありながらも洞窟のようなレストラン、その奥にはミュージックバーが隠れている。それぞれ趣が違うこともあり、どう楽しむかによって訪れる者のイメージは異なるかもしれない。

しかし、最大の特徴といえるのは着席で100人収容できる円形ホールだろう。一歩足を踏み入れた瞬間、ベルベットの赤いシートに圧倒され、時間や時代、場所がよくわからなくなる非日常へと迷い込む。

「演者と聞き手の距離が近いことが特徴です。アーティストの方々も”いい意味で緊張感があり、同時にリラックスできる”と仰ってくださります」。そう語るのは、イベントソリューション事業部の担当者。

これまでに、閑喜弦介が井上銘をゲスト迎えたギター2本だけのクロスオーバー的セッション、バレエダンサー西島数博と三味線の吉田健一とのコラボレーション、音楽をお題にした各種トークセッションなど、さまざまなライブイベントがおこなわれてきている。

「音楽やカルチャー好きな方々にとって、新しい音楽や表現との出会いの場になれればと考えています」

最先端の音響機器による没入感のある音空間

BAROOMの円形ホールは、空間としての独自性だけでなく音響的にも優れていることが魅力。そのため、公演が始まるやいなや圧倒的な没入感と一体感が得られる。

「観客席へ均一に音を提供すること、反射音をコントロールすること。この2点が円形ホールの課題でした。そこで、音源とリスナーの距離が近いことを考慮し、音質と精度に秀でたd&b audiotechnikの小型同軸スピーカーと、指向性のある同社のサブウーハーを採用しました。
また、反射音のコントロールはとても難しい課題でした。演者さんが奏でる音の響きはとても大事なのですが、残り過ぎると再びステージに戻ってしまいます。その問題を解決するため、響きの足りない部分は電気的に加えるという割り切った手法に振り切ったんです。それが功を奏し、当ホールの音響特性が生まれたと思っています」

中南米をキーワードに無国籍な料理が楽しめる

円形ホールはライブイベントでしか使用されないため、日常的に使うならレストランの利用となる。そこは地中海の洞窟のような空間で、六本木通りに面した窓ガラスにはMOZYSKEYによるグラフィティが描かれている。この不思議なMIX感覚もまた、BAROOMらしさを形成している。

「ライブ前後に軽食を気軽にとっていただけるよう、中南米のスペイスを加えた無国籍でオンリーワンなメニューを取り揃えています。基本はアラカルトですが、コースメニューもご用意しております」

オープン時にメニューの監修をおこなった、恵比寿の人気店『coyacoya』のスパイシー焼きそば、タイ風シュウマイ、半熟卵のスモークポテトサラダが食べられるというのも魅力だ。

日本コロムビアの貴重なアーカイブスを揃える

レストランを通り抜けると、日本コロムビアから過去に発売されたレコードコレクションがお目見え。さらに、美空ひばりなど過去のレコード大賞受賞の盾など、貴重なアーカイブスも展示されている。というのも、このお店は日本コロムビアの親会社であるフェイスが運営する文化発信スペースでもあるのだ。フェイスは着メロの仕組みを世界初で作ったことで知られ、現在はエンターテイメントを中心としたプラットフォーム事業やコンテンツ事業を手がける会社だ。

「日本コロムビアのアーカイブを倉庫に眠らせておくのはもったいないということで、店内の至るところで展示しています」

アルテックが鳴らすジャズを中心としたミュージックバー

一枚板のバーカウンターが鎮座するミュージックバーエリアには、アルテックの620Bとオリジナルのホーンスピーカーが置かれている。アンプはアキュフェイズで、2台のターンテーブルはデノンのDP-1300MKⅡ、ミキサーはE&SのDJR400FX、カートリッジはデノンのDL-103という組み合わせだ。

「ターンテーブルは、膨大な日本コロムビアのコレクションを再生するため、同じく日本の音楽エンターテイメントの系譜にあるデノンを採用しました。ホールではデジタルで最先端の音を、それに対しバーやレストランでは、ヴィンテージサウンドによる温かくてホッとする音をお届けしています」

日本コロムビアのストックをベースに、ジャズ、フュージョン、ソウル、ラテン、歌謡曲などをお客さんの雰囲気に合わせて選曲している。また、日によってはさまざまなジャンルのDJやセレクターがプレイすることも。

世界各国の文化を掛け合わせたシグネチャー・カクテル

ドリンクに関してはシグネチャー・カクテルが充実しており、こちらも中南米のカクテルをベースに、焼酎など日本のスピリッツをMIXして海外と日本の融合を目指しているとか。写真の「フィーリングッド マンハッタン」は、日野皓正のアルバム『フィーリン・グッド』が元ネタ。

「カクテルの女王と呼ばれる“マンハッタン”のアレンジです。ピートが効いたウイスキーや、黒人文化でもあるラムを加えているのが特徴です」とは、チーフバーテンダーの中村純さん。

こちらのバーでもレストランのメニューが楽しめ、その逆もしかり。また、奥に和の個室を用意している点もユニークだ。

「BAROOMでは、コンサートを楽しんだお客様同士がレストランやバーで交流したり、偶然出会ったアーティストが新しい企画を相談したりと、サロン的な場所になれればと考えています」(前出のイベントソリューション事業部 担当者)

ここを使ってこんなことをしたら楽しいかも! と、いろいろ想像が膨らむ大人の遊び場。まずは一度足を運んで、その空気を感じてみてほしい。

取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥


・店舗名 バルーム
・住所 東京都港区南青山6-10-12
・電話 03-6892-1577
・営業時間 18:00~24:00(フードL.0.22:30、ドリンクL.O.23:30)
・定休日 月曜・日曜

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