投稿日 : 2022.12.29

【2022年ベスト】ジャズ アルバム BEST 50

JAZZトランペット
2022年「ジャズ」アルバム BEST50

グレッグ・スピーロ|Greg Spero
『Chicago Experiment』

Greg Speroグレッグ・スピーロ

シカゴのピアニスト、グレッグ・スピーロを中心とし、マカヤ・マクレイヴン、ジョエル・ロス、マーキス・ヒル、ジェフ・パーカーといった精鋭が参加した話題作。ジャズを筆頭に音楽の街として知られるシカゴの、豊潤で豊穣な音楽遺産を注ぎ込んだ、“全部入り” なサウンドに胸躍る。ビート・ミュージックとジャズとファンクとヒップホップをフラットに享受してきたであろうスピーロのリベラルな音楽観が全面に出ているアルバムである。


イマニュエル・ウィルキンス|Immanuel Wilkins
『The 7th Hand』

Immanuel Wilkinsイマニュエル・ウィルキンス

ブルーノートから一昨年に出たアルバムが、ニューヨーク・タイムズ紙で2020年のジャズ・アルバム第1位に選ばれたアルト奏者、イマニュエル・ウィルキンス。本作は7楽章からなるオリジナル曲が収められており、ウィルキンスの作曲家としての力量が十全に発揮されている。緊密なアンサンブルに基く演奏だが、特に、緩急自在のプレイを聴かせるピアニスト、ミカ・トーマスがふるっている。彼女が影の主役では、という感もあり。


ジョン・スコフィールド|John Scofield
『John Scofield』

John Scofieldジョン・スコフィールド

ジョン・スコフィールドは、マイルス・デイヴィスの作品にも参加した大御所ギタリスト。ジャム・バンド興隆期から、メデスキ、マーティン&ウッドらと組んで話題を呼んだこともあった。本作は意外にも初となるギター・ソロ作で、バッギングとソロが重ねて録音されている。キース・ジャレット、ハンク・ウィリアムズ、バディ・ホリーらのカヴァーも堂に入ったもの。前作に続いてECMからのリリースで、レーベル・カラーが作風に影響している感も。


ジュリアス・ロドリゲス|Julius Rodriguez
『Let Sound Tell All』

Julius Rodriguezジュリアス・ロドリゲス

ピアニスト、ドラマー、プロデューサーなど多彩な顔を持つジュリアス・ロドリゲスの、ヴァーヴからのデビュー作。ゴスペル、ジャズ、クラシック、R&B、ヒップホップなどを包含するサウンドは、雑多で乱脈。膨大な量の具材を投げ込んだ、闇鍋的なアルバムとなっている。後続に絶大な影響を及ぼし続けるロイ・ハーグローブと相似形を成す部分もあり。「Gift Of The Moon」はトランペットが多層を成すサイケデリックなナンバーだ。


松丸契|Kei Matsumaru
『The Moon, Its Recollections Abstracted』

kei Matsumaru

パプアニューギニアの山奥の村で育ち、楽器をほぼ独学で習得。その後2018年にバークリー音楽大学を主席で卒業したサックス奏者が松丸契だ。石橋英子、ジム・オルーク、山本達久、大友良英、Dos Monosらと共演してきた彼が、石若駿(ds)らを迎えて制作したのが本作。〈即興と作曲の対比と融合〉〈具体化と抽象化〉がコンセプトだったそうで、複数のジャンルを横断する野心的なサウンド・メイクに脱帽。サックス奏者としても優れた才能の持ち主だ。


カーク・クヌフク|Kirk Knuffke
『Gravity Without Airs』

Kirk Knuffkeカーク・クヌフク

カーク・クヌフクは、オーネット・コールマン、ウィントン・マルサリスという、音楽性が対照的なふたりに師事していたコルネット奏者。アルバムや曲によって音楽的な方向性が変わるのはそのルーツのせいだろうか。本作は、マシュー・シップ(p)とマイケル・ビシオ(ds)という俊英を迎えたトリオでの録音。主役のコルネットはドン・チェリーを連想させもするが、全体のアンサンブルはもう少しストイックで静謐だ。


キット・ダウンズ|Kit Downes
『Vermillion』

Kit Downesキット・ダウンズ

キット・ダウンズは、スクエアプッシャーのライヴに参加したり、ジャンゴ・ベイツとも共演してきたUKのピアニスト。本作はECMからの3作目だ。ダウンズのプレイはチック・コリアからの影響が仄見えるが、コリアよりも叙情的な旋律を奏でていると思う。ピアノ・ソロは音数は少なく、あえて抑制を効かせたようなタッチが続く。ベースとドラムも必要最低限の音から成り立っており、演奏の展開もスロー。じっくり向き合いたい一枚だ。


ココロコ|Kokoroco
『Could We Be More』

Kokorocoココロコ

ロンドンを拠点とする8人組のデビュー作で、ジャイルス・ピーターソンが立ち上げたレーベル、ブラウンズウッドからリリースされた。その音楽性はアフロビートを主軸としながらも、UKジャズ、ファンクなどを吞み込んだもの。昨今のブリット・ファンクに通じるグルーヴ感が爽快で、クリアでファットな音色のベースが特にいい。中盤以降に歌ものが配置されているのもバランスが良く、野心作ながらポップな響を帯びているのも美点だろう。


コマ・サクソ|Koma Saxo
『Koma West』

Koma Saxoコマ・サクソ

スウェーデン出身のプロデューサー/ベーシスト/ドラマーであるペッター・エルデ。その彼が率いるカルテットがコマ・サクソで、本作は音色もフレーズもアレンジも斬新極まりない。アコースティックなジャズの肌合いから、かつてフリー・ジャズが放っていた妖気や熱気、音響派以降のセンスなどが混在。唐突にドラムンベースに雪崩れ込んでゆく展開も、ストリングスの大々的な導入も違和感がない。ジャズの自由さと雑駁が同時に体現されたマスターピース。


KYOTO JAZZ SEXTET feat.森山威男
『SUCCESSION』

KYOTO JAZZ SEXTET

沖野修也率いるセクステットの新作は、なんと日本のジャズの黎明期から活躍してきたドラマー、森山威男をフィーチャーした作品。数々の名演を遺してきた森山の参加により、クラブ・ジャズ的な色合いはこれまでより控えめで、そのぶんマッシヴなフリー・ジャズの要素が前景化している。トランペットの類家心平、サックスの栗原健、ピアノの平戸祐介らも森山に負けじと奮起。長きにわたる森山のキャリアの中でも、特別な一枚になったのではないか。


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