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青野賢一(ライター/選曲家/DJ)が選ぶ「2022年のベスト」3作品

青野賢一
青野賢一
文筆家、選曲家、DJ
1968年東京生まれ。株式会社ビームスにてプレス、クリエイティブディレクターや音楽部門〈BEAMS RECORDS〉のディレクターなどを務め、2021年10月に退社、独立。フリーランスとして執筆、DJ、選曲をはじめさまざまな活動を行なっている。音楽、ファッション、映画、文学などのポピュラー・カルチャーをアクチュアルな問題意識を持って論じた書籍『音楽とファッション 6つの現代的視点』(リットーミュージック)を2022年7月に上梓。また、USENの店舗向けBGM配信アプリ「OTORAKU」にキュレーターとして参画し、プレイリストを定期的に公開中。

Oliver Sim
『Hideous Bastard』

The xxのベーシスト、ボーカリスト、ソングライターのオリヴァー・シムのソロ・デビュー・アルバムは、恥の感情や恐怖、かりそめの姿といった事柄について極めてパーソナルな視点で綴った歌詞を抑制の効いた深みのあるサウンドにのせた“静かなるエモーション”とでも呼びたい美しい作品。ミュージック・ビデオや歌詞のところどころに顔を覗かせる彼のホラー映画へのシンパシーもいい。


Brian Eno
『FOREVERANDEVERNOMORE』

ブライアン・イーノの17年ぶりとなるボーカル作品。静謐なサウンド・アプローチと、社会や地球環境、生活などを改めて省みることを促す歌詞が渾然一体となり、聴くものの心に響く。アルバム全篇、とりわけ後半の楽曲にどこか教会音楽を思わせるところがあるのは偶然ではないだろう。サウンド面だけを捉えて「アンビエントの傑作」などと軽々しく括ってはいけない作品である。


Original Motion Picture Soundtrack
『Licorice Pizza』

ポール・トーマス・アンダーソンの『リコリス・ピザ』は、今年観た映画のなかでも印象深かった作品。1973年のカリフォルニア州サンフェルナンドバレーが舞台ということで、この時代──アメリカの夕暮れ時とでもいうような暗い影が忍び寄る頃──の曲が目白押しだ。デヴィッド・ボウイ「Life On Mars?」の絶妙な使い方に唸ってしまった。ジョニー・グリーンウッドによるテーマも沁みる。

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