投稿日 : 2023.02.24
【東京・新宿御苑/MAKANI】ゆっくり楽しめる 音楽セレクターのいるワインバー
取材・文/富山英三郎 撮影/高瀬竜弥
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「音楽」に深いこだわりを持つ飲食店を紹介するこのコーナー。今回は新宿御苑(東京都新宿区)にあるMUSIC & WINE『MAKANI(マカニ)』を訪問。会話も楽しめるよう音量はそこまで大きくないものの、いい音響で美味しいワインと軽食が味わえる隠れ家。帰り道にあってほしい、カジュアルで上品な大人のお店でした。
新宿御苑の裏路地に佇む音楽とワインのお店
江戸時代は高遠藩 内藤家(信濃国)の藩邸、明治時代は皇室の管理する庭園、そして戦後になり一般開放された「新宿御苑」。広大な自然を内包するだけあり、新宿駅の喧騒からわずか徒歩10~15分圏内にも関わらず、のんびりと上品な空気が流れる。そんなオフィス街と住宅街が同居した場所に、2021年5月にオープンしたのが「MAKANI(マカニ)」。「ミュージック&ワイン」を謳う同店は、オーナー、シェフ兼ソムリエ、ミュージックセレクターが三位一体となって毎夜新しい風を吹かせている。
「聴く専門ではありますが、昔から音楽が好きで、週3回くらい今でもミュージックバーを巡っているんです。このエリアは生まれ育った場所でもあるのですが、いろいろな偶然が重なってお店を出すことになりました」
そう語るのはオーナーのYuichiさん。昼間の仕事をしているYuichiさんは1961年生まれ。音楽やサーフィン、バイクを趣味とする遊び慣れた紳士だ。
「一般的なミュージックバーはハードリカーが中心ですが、自分はワインが好きなんです。ゆっくりワインを1本開けながら、いろんな音楽をアナログ盤で味わってほしい。ワイン好きはあまりミュージックバーに行かないので、そこのマリアージュを目指したというのもあります。探究心が強いという意味では、本来は相性がいいと思うんですよ」
JBL C36スピーカーを起点に生まれたモダンな内装
地下鉄丸の内線「新宿御苑駅」から徒歩約6分、道に面した店舗はガラス張りで、カウンター6席・テーブル6席のコンパクトなつくりとなっている。ブラウンカラーが基調の店内は、カウンターに美しい一枚板(パープルハート)が備えられ、シックで落ち着いた雰囲気となっている。
「ミュージックバーというと大きなJBLにマッキントッシュというイメージがありますが、うちはお店の大きさ的にそうではない。ワインは抜栓してから穏やかに開くまで時間がかかるので、まずは長く聴いていても疲れないものという視点でスピーカーを選びました。最終的に自分と同年代のJBL C36にたどり着いて、そこから内装を決めたんです。だから全体的に店内が茶色い(笑)」
当初はJBL SA660をアンプとして使用していたが1ヶ月で壊れてしまい、いまは現行モデルのJBL-SA750を導入している。ターンテーブルはガラードの301が2台、ミキサーはウーレイ。ガラス張りということもあり、店内のデッドニング(余計な振動の排除)は徹底的におこなったという。
90年代のネオソウルを中心としたオールジャンルな選曲
「音楽的には1990年代のネオソウルを中心に、AOR、ジャズ、そしてヒップホップも少し入れながら、オールジャンルでかけています。ネオソウルを軸にしたのは、あらゆる音楽の形態が、ひとまず90年代にほぼできあがったのでは? という思いが個人的にあるからです」
音楽のヘビーリスナーでもあるYuichiさんは、店内に写真を飾るSinkaneなど新世代アーティストも愛聴している。ネオソウルを軸に据えたのは、新しい音楽を否定しているのではなく、90年代をハブとして未来を含む全方位にアクセスしようとした結果でもある。
「店名のMAKANIは、ハワイ語で“風”という意味です。波は風がないと生まれないですから、固定概念にとらわれず、この場所から音楽でもワインでも新しい風が吹いたらいいなという思いがあるんです。そのためにも自分はあくまでも裏方で、お店はワインソムリエである店長やセレクターに任せています」
ゲストを招く日もあるが、MAKANIのミュージックセレクター3名が日替わりで回している。ミュージシャンでもあるKenjiさんは、ソウル、ディスコ、そして2010年代以降のサウンドを中心としたセレクト。同じくミュージシャンのYuthkeさんは、ジャズやブラジリアンをベースに構築していく。弱冠22歳のYusakuさんはその膨大な知識量を生かし、ブラックミュージックを軸に流れをつくっていく。セレクターによって雰囲気が変わるのもMAKANIの特徴だ。
「ルールを決めているわけではないですが、3人が共通しているのは、世代・ジャンル・国を超えていくような流れを意識しています。また、ワインバーでもあるので、その雰囲気に合うような落ち着いた楽曲を基本としています。そこに、スパイスとして意外性のある楽曲を入れていくようにしています」(ミュージックセレクターのKenjiさん)
厳選された各種ワインと合う美味しい軽食も楽しめる
その他、月に4回ほどワインソムリエをゲストに迎える日があるとか。お客さんは20代から50~60代までと幅広く、近くのオフィスで働く人や、近隣住人が多いという。外から見えるレコードに釣られてくる音楽好きはもちろん、ワインバーで検索して来る人も多い。
ワインは常時30種類程度が用意されており、グラスは赤白併せて約8種類を楽しむことができる。また、鴨のローストや鰹のたたきサラダ、本日のパスタなど、ワインに会う美味しい軽食が用意されているのも嬉しい。
「ワインは国にこだわらず、国産も含めてさまざまな種類を用意しています。きれいめの自然派ワインもあり、来店されるたびに新しい発見があると思います」(シェフ兼ワインソムリエの店長 Yaoさん)
ひとりでゆっくりと過ごしたい夜はもちろん、新宿三丁目などで食事をして「もう1軒行こうか」というときにも便利な、音楽が楽しめるワインバー。足を伸ばして出向く価値アリです。
取材・文/富山英三郎
撮影/高瀬竜弥
・店舗名 マカニ
・住所 東京都新宿区新宿1-29-13 ハレマカニ御苑1F
・電話 03-6273-2663
・営業時間 火曜~土曜 19:00~26:00(フードL.0.25:00、ドリンクL.O.25:30)、日曜 19:00~24:00(フードL.0.23:00、ドリンクL.O.23:30)
・定休日 月曜
MAKANI(マカニ)
・HP https://www.makani.jp/
・Instagram @makani_gyoen