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昨今、ヒップホップやR&Bに慣れ親しんだ新世代のジャズ・ミュージシャンが注目されている。彼らは自分たちの音楽に“ヒップホップ以降”の多彩なエッセンスや手法を取り込み“新たなジャズ表現”を拓いているようだ。
そんな彼らに対し、他ジャンルのミュージシャンたちも興味津々。いわゆる「メジャーなポップス」にジャズミュージシャンが起用されることも少なくない。もちろん、こうした現象は今に始まったことではなく、有名なところだとビリー・ジョエルのヒット曲「Just the Way You Are」(1977年)。同作のサックスソロをフィル・ウッズが担当し、ウッズの名を広く知らしめた。
また、スティーリー・ダンの最高セールスを記録したアルバム『Aja』(1977年)のタイトル曲では、ウェイン・ショーターがソロを披露。その2年後、ウェイン・ショーターはジョニ・ミッチェルのアルバム『Mingus』(1979年)にも起用されており、同作にはジャコ・パストリアスやハービー・ハンコックなども参加。両者は、のちに発表されたジョニ・ミッチェルのライブ盤『Shadows and Light』(1980年)でも、パット・メセニーらとともに力演を披露している。
The Dry Cleaner from Des Moines/ジョニ・ミッチェル *ジャコ・パストリアス(b)、マイケル・ブレッカー(sax)、ドン・アライアス(ds)
また、80年代以降も、スティングのツアーバンドにブランフォード・マルサリスが参加したり、プリンスとマイルス・デイヴィス、ルー・リードとオーネット・コールマンなど、さまざまなコラボレーションが話題を呼んだ。
では、ごく最近の「ジャズマンの“異ジャンル”コラボ作品」はどうなっているのか? 続けて紹介したい。
ロバート・グラスパー
ケンドリック・ラマーの作品『To Pimp A Butterfly』(2015年)の数曲にピアニスト/キーボーディストとして参加。グラスパーは他にもノラ・ジョーンズやカニエ・ウエストなど多くのビッグ・ネームともコラボレーションを重ねている。
These Walls/ケンドリック・ラマー
グレゴリー・ポーター
2010年のデビュー作でグラミー賞にノミネート以降、数々の受賞とヒット作を連発。母国アメリカだけでなくイギリスでも高い人気を博す、ジャズシンガー。彼の知名度を一気に押し上げたのが、英エレクトロニック・ダンス・デュオ、ディスクロージャーの楽曲「Holding On」(2015年)への参加だった。
Holding On/ディスクロージャー
Holding On Live/ディスクロージャー(ライブ版)
カマシ・ワシントン
「次世代ジャズ・ジャイアント」の呼び声高い、LAジャズ・シーンにおける最重要サックス・プレーヤー。90年代ヒップホップ黄金期のスターMCにして現在もシーンの頂点に君臨するスヌープ・ドッグの楽曲「Press Play」(2008年)にテナー・サックスで参加。カマシは、そのほかクインシー・ジョーンズ作品やローリン・ヒルなどのライブにもゲストで参加している。
Press Play/スヌープ・ドッグ
キーヨン・ハロルド
マイルス・デイヴィスの映画『MILES AHEAD /マイルス・デイヴィス 空白の5年間』でマイルス役の演奏部の吹き替えを担当したことで注目を集めたトランペッター。米音楽シーンのトップ・アーティスト、ジェイ・Zの「Roc Boys (And The Winner Is)…」(2007年)にホーン・セクションで参加。そのほかビヨンセやエミネム、ディアンジェロといった大物との共演を果たしている。
Roc Boys (And The Winner Is)…/ジェイ・Z
クリスチャン・スコット
17歳で名門ブルーノートに誘いを受け、2006年のメジャー・デビュー作がグラミー賞にノミネートしたことで一躍スターダムへと駆け上がったトランペッター。プリンス『プラネット・アース』(2007年)に参加。「Somewhere Here on Earth」では全編にわたってリード部の演奏を披露している。
Somewhere Here on Earth/プリンス
マリア・シュナイダーほか
ジャズとクラシック両方でグラミー賞を受賞し、“現代NYジャズの英知”と賞される現代ビッグバンドをリードする作編曲家。デヴィッド・ボウイの遺作『★(ブラックスター)』(2016年)収録曲「Sue」に作編曲家として全面的に参加。また、同曲の演奏にはマーク・ジュリアナ(Dr)、ダニー・マッキャスリン(Sax)、ジェイソン・リンドナー(P)、ティム・ルフェーヴル(B)、ベン・モンダー(G)が参加。
Sue/デヴィッド・ボウイ