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この10月に発売された電子楽譜専用端末「GVIDO(グイド)」。一般的な楽譜のサイズである「A4縦」を、丸ごと見開き(A3)で表示できて、書き込みも可能。もちろん、大量の譜面も保存できる。演奏家だけでなく、作曲家のクリエイティブにも影響を与えそうな、話題のデバイスだ。
今回はその全貌を明らかにすべく、開発・販売元のテラダ・ミュージック・スコア株式会社の親会社である寺田倉庫の妻鳥陽子さんに話を伺った。
譜面台の上でも安心して操作可能
——これが噂の電子楽譜! 完全に楽譜と同じサイズなんですね。しかも見た目以上に軽いっ。これは持ち運びがラクですね。
「そうなんですよ。iPadの一番大きいサイズは670gですが、グイドは660gと10g軽いんです。ちなみにサイズはふたまわりくらい大きい」
——表面は落ち着いたマットな質感。デザインもシンプルですね。2面にしているのは何故ですか?
「アレもコレもできる端末ではなく、楽譜専用機であることにこだわったんです。なので、紙の質感に近づけるために電子ペーパー(注1)にしています」
——たしかに電子書籍と同じ見え方ですね。これなら舞台のライトや陽射しの反射を抑えられるし、長時間見ていても疲れない。
「タブレットPCのような端末は静電気に反応するガラス素材なので、どうしても反射してしまいますからね。やはり、電子ペーパーが適していると思います」
——そうなると、スタイラスペンでの操作が必要になりますよね。
「ページめくりなどはセンサー式なので、軽く指で触れる程度で反応します。もちろん、楽譜に書き込みをする際はスタイラスペンが必要ですが、圧力をかけずに軽いタッチで書けるというメリットがあるんです。というのも、譜面台は脆弱なので筆圧をかけると倒れてしまう心配もありますから」
——あぁ~、たしかに。譜面台ってグラグラしてますもんね。
「もちろん、開発の際には落下テストも行っていますので、ある程度の強度は備えていますよ」
●落下実験映像
——それにしても、電子ペーパーって軽いタッチで書けるんですね。
「書き込みも100レイヤーまで保存できます。さらに、このスタイラスペンは後ろが消しゴム機能になっていて、これも軽いタッチで反応するよう開発しました。特許技術です」
——他に特許技術はありますか?
「わかりやすいところでは、中央(折りたたみ部分)のフラットヒンジですかね。6ミリという薄さをキープしながら、フラットにするのは難しいんですよ」
いかにして“演奏家の苦労”を減らすか
——う~む、この薄さはかなり魅力的です。分厚い楽譜をクリップで固定する必要もなくなりますね。でも、やっぱり「使い勝手」がどうなのかが気になるところ。読み込めるデータはPDFですか?
「そうです。PDFであれば楽譜でなくても読み込めます。グイドはPDF1ファイルを1MBと換算すると4000曲入る容量です」
——クラシックの方たちは助かりますね。みんな1曲のために分厚い全集を持ち歩いていたりしますから。使うページだけを切り取ることもできず、ちょっとかわいそうになるほどの量になってますから。
「海外で演奏される方は、そのせいで重量オーバーになって超過料金を払うこともあるみたいですよ」
——そこまで! これなら機内にも持ち込めて、予習することもできますね。
「グイドが生まれるきっかけは『演奏家の方々の苦労をいかに減らすか』ということだったんです。楽譜の進め方も、ページの繰り返しやスキップなども自由に設定できます。また、先読み設定ができるので、次の楽譜を左ページに配置することもできたり。あとは、セットリストを組んで保存することもできます」
——セットリストを作れるのはいいですね。それはメンバーで共有できるんですか?
「オンライン上に、My Libraryという管理画面を持てるのですが、メンバーの方がアカウントをお持ちであれば、楽譜やセットリスト、書き込み内容を共有することができます」
今後はオンラインで楽譜購入も
——現段階では、自分でスキャンした楽譜を取り込む感じですよね? オンライン上で楽譜を買えるような動きはあるのでしょうか?
「国内外の大手楽譜メーカーさんの協力を得て、先日グイド専用楽譜のストアがオープンしました。1曲単位で楽譜を購入できるので、経済的にもかなりラクになると思います」
——そこはぜひ充実させて欲しい!
「ちなみに、楽譜を取り込む方法は3種類あります。ひとつはUSBでパソコンと直接つなげる方法。もうひとつは、前述のMy Libraryというクラウド上の管理画面に楽譜を追加して転送するやり方。あとは、マイクロSDカードから追加する方法です」
——あ! マイクロSDを使えば、本体容量以上の楽譜も持ち運べますね。失礼ながら、海外とのやりとりがあるようで安心しました。こういう製品はワールドワイドに展開しないと、結局はガラパゴス化してしまうじゃないですか。
日本以上に絶賛だった“欧米の反応”
「じつは欧米のほうが反応がいいんです。2016年に音楽産業見本市のMIDEM(ミデム)に出品した際も評判が良くて、開発を急いだという経緯があります。グイドはすでに日本だけでなく欧米でも販売されています。端末で選択できる言語も、イギリス英語、アメリカ英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、日本語が入っています」
——イギリス英語とアメリカ英語を分けてるんですね(笑)
「他にも面白い点では、初期設定で利き手を選択できるだけでなく、ペンの握り方を選ぶメニューも出てきます。海外の方は巻き込むようにペンを持つ方が多いんですよ。また、重点的に練習したいページにすぐアクセスできるようブックマーク機能も装備しています」
——楽譜に求められる「こんなことができたらいいな」というのはすべて入ってますね。ただ、18万円+税は、私にとってはかなり勇気のいる値段です…。
「日本ではそういう反応もありますが、欧米では『いいね!』『安いね!』って感じなんですよ」
——ありゃっ、クラシック界では安いんですね…。そりゃ、何百万円もする楽器を使う人たちですからね。もちろん、この利便性を考慮すると「安いもんだ」ってことでしょうけど。ちなみに、音楽業界以外の反応は何かありますか?
「アニメの制作会社の方が、アフレコのときに使ってみたいと仰っていました。というのも、高感度マイクで録っているので、紙をめくる音が入ってNGになることもあるらしいんです」
——なるほど! ペーパーノイズが発生しないという点で、アフレコやラジオ放送でも重宝されそうです。そういう感じで広がっていくと面白いですね。
「そうですね、でも、まずは“新時代の楽譜”として定着できればと思います!」
GVIDO(グイド)
本体(DMS-W1) ¥180,000
・ディスプレイ:13.3型低反射フレキシブル電子ペーパー(150dpi、1600×1200pixel)
・重量:約660g
・外装:カーボンファイバー
・ペン入力(2画面):電磁誘導方式(株式会社ワコム)
・タッチスイッチ:赤外線タッチスイッチ
・内蔵メモリー容量:8GB
・インターフェース:microSDカード、マイクロUSB端子
・無線LAN:802.11a/b/g/n (2.4GHz/5GHz)
・Bluetooth内蔵
・バッテリー:3時間充電で3日間使用可(※1日、1分間ごとに100ページをめくった場合)、マイクロUSB端子充電
フットスイッチ(DMS-FS1) ¥30,000
牛革カバー(DMS-L1) ¥30,000
問い合わせ:GVIDOサポートセンター cs-jp@gvidojapan.com
https://www.gvido.tokyo/ja/