この12月に「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン 2024(MJFJ)」が開催される。MJFJは “世界3大ジャズフェスティバル” に数えられるスイス「モントルー・ジャズ・フェスティバル」の日本版。国内外の一流ミュージシャンたちが結集し、ぴあアリーナMM(横浜市)をメイン会場に、3日間(2024年12月6日〜8日)の祭宴が繰り広げられる。
今回のMJFJ出演者の中で特に注目度が高いのがハービー・ハンコックだ。今年84歳を迎えた“巨匠”は、いまも精力的に演奏ツアーを行い、創作の意欲も衰えない。
「私はいつも人生を表現したいと思っている! しかも類いまれなハーモニーと、ユニークな方法でね。喜びと興奮、そして思いやりの心を持って、それに挑戦したいんだよ」
そう語るハービーは今回、ワールドツアー中の最新ユニットを率いて日本のステージに立つ。メンバーは、ハービー・ハンコック(キーボード)、テレンス・ブランチャード(トランペット/キーボード)、ジェームス・ジーナス (ベース)、リオーネル・ルエケ(ギター)、ジェイレン・ペティノー(ドラムス)の5人だ。
トランペットのテレンス・ブランチャードと、ベースのジェームス・ジーナスは実績も豊富なベテラン奏者。ジャズファンにはよく知られた存在である。そのひとつ下の世代にあたるリオーネル・ルエケも実力ある中堅奏者だ。彼は西アフリカのベナン出身のギタリストで、1999年に渡米。教育機関「セロニアス・モンク・ジャズ協会」のオーディションを経て、世界的なミュージシャンとして羽ばたいていった。
ちなみに、そのオーディションの審査員席にいたのがハービー・ハンコックとテレンス・ブランチャードである。彼らはルエケに対し、バンドの一員としてどんなプレイを望んでいるのか? この問いにハービーは「彼は自分らしくいるだけでいい。それで十分だ」と答える。そしてこう続けた。
「彼はいつも新しいアイディアで私を驚かせてくれる。まるで彼の中に3、4人のギタリストがいるような、そんな感覚だよ。本当に信じられないプレイヤーだね」
そして残る一人は、最年少メンバーのジェイレン・ペティノー。日本のジャズファンの多くが「誰?」という反応だろう。まだ20代半ばの彼は、近年、ドラマーとして頭角をあらわし急速に活躍の場を広げている。このバンドへの起用もさることながら、ケニー・ギャレット、キーヨン・ハロルド、ロバート・グラスパーらとの共演も頻繁。さらにヒップホップやR&Bの領域でも盛んなコラボレーションを行い、ブロードウェイのミュージカル「ヘルズ・キッチン」への参加でも注目された。そんなジェイレンの “すごさ” を端的に説明すると? と問うと、ハービーはこう答える。
「彼はいつでも完璧な “気配り” ができている。音楽で何が起ころうと即座に対処できる気配りだ。しかも情熱的でエネルギーにあふれ、素晴らしい才能を持ったドラマーなんだ」
そんな最先端の “旬な若手” をいち早くチェックできるのも、MJFJの魅力だ。バンドリーダーのハービー・ハンコックはこれまで幾度もスイスのモントルー・ジャズ・フェスティバルに参加しており、フェスへの思い入れも強い。
「モントルーは芸術表現の場として非常に刺激的な雰囲気を持っている。観客は、それがどんなに異質なものであっても、何が起こっても、受け入れる準備ができている。素晴らしい舞台だ」
もちろん日本のオーディエンスも受け入れる準備はできている。このスペシャルなバンドでどんなパフォーマンスが展開されるのか─ 答えはもうすぐだ。